互いに認め合うのが大切! 子供に”家族のチームワーク”を伝える方法
2018/09/29
男が外で仕事をして、女は家を守るというのは、言ってみれば"戦時中のスタイル"である。2000年以降は共働き世帯数がそうでない世帯数を上回り、その差を年々広げている。そんな夫婦の働き方は子供にどんな影響を与えているのだろうか。育児・教育ジャーナリストおおたとしまさ氏に聞いた。
男が外で仕事をして、
女は家を守る時代は古い
昨今メディアなどでもおおいに話題となったが、男が外で仕事をして、女は家を守るというのは、言ってみれば”戦時中のスタイル”である。
戦争になればどの時代でも、どこの国でも、そういう分業体制が敷かれる。日本の場合、鎌倉時代以降ずっと軍事政権であったから、たしかにその伝統は根強い。それでも江戸時代までは、戦いは主に武士の仕事であって、農民たちは男女の分け隔てなく働いていたのだが、明治時代の富国強兵政策によって、男はみんな戦争に行くものとされた。文明開化とともにそういうライフスタイルが定着し、しかも急速に経済が発展していったためにそのスタイルから脱却できなくなった。だから戦争が終わっても久しくは、男は戦場に赴き、女が家を守るというスタイルが続いた。「兵隊さん」という呼び名が「企業戦士」という呼び名に変わっただけである。
1980年の時点では、夫がサラリーマンである世帯のうち共働き世帯は約3分の1しかなかったが、2000年以降は共働き世帯数がそうでない世帯数を上回り、その差を年々広げている。「いい」とか「悪い」とか、「自然」とか「不自然」とかいう問題ではなく、これが『実態』である。
ところで、「共働き」というと、専業主婦がまるで働いていないかのような錯覚をもたらしそうなので、「共稼ぎ」と言うほうがいいように思う。いや、それにしても、「共稼ぎ」ではない家庭を何というのかという問題にぶつかる。「片稼ぎ」? 適当な言葉が思いつかない。だからここでは「共稼ぎ」のことを「ダブルインカム」「片稼ぎ」のことを「シングルインカム」と呼ぶこととする。
というわけで、今回はこの違いが子育てに与える影響を考えてみたい。
「シングルインカム」
「ダブルインカム」
が子育てに与える影響
シングルインカムであろうがダブルインカムであろうが、子供自身が親からの愛を十分に感じ、安心できているのなら、子供の心に与える影響に差違はないだろう。気を付けてほしいのは親の意識だ。
ダブルインカムゆえに家族が揃って過ごせる時間が少なくてそれをかわいそうだと親が感じているのなら、子供は「自分はかわいそうな子」だと思ってしまう。シングルインカムでも、24時間子供と一緒にいるほうの親が常に育児ストレスを抱えているようでは、子供は「自分なんていないほうがいいんだ」と思ってしまう。
親がネガティブな気持ちでいれば子供もネガティブな気持ちの中で過ごさなければならないし、どんな状況であれ親がポジティブであれば、子供もポジティブにたくましく育つことができる。重要なのはダブルインカムかシングルインカムかではないのだ。
では、男女の役割意識についてはどうだろう。ダブルインカムの家庭で育った子供なら、「男だから一家を支えなければいけない」とか「女は家で家事や育児に専念するべき」というような旧来のジェンダー意識にとらわれにくくなるであろうことは容易に想像がつく。「女性の社会進出」という文脈で語られることが多いが、その逆だってある。
女の子が「私もお母さんみたいに働きたい」と思うだけでなく、男の子が「自分が絶対に一家の大黒柱にならなければならない」という強迫観念から解き放たれる作用も果たすだろう、ということだ。
昭和以前の父親がよく口にした「誰のおかげでメシが食えていると思っているんだ」というセリフに象徴される甚だしい勘違いも払拭されること請け合いだ。
念のために言っておくが、このセリフ、たとえシングルインカムの家庭であってもあり得ないセリフである。