父親の立ち会い出産体験記:妻もドン引きする行為とは?
2018/07/06
分娩第3期 〜胎盤娩出〜
とうとう出産終了! 上着を着て、みんなに赤ちゃん誕生のニュースを伝えに行こうと思っていると、その横で彼女がさらにいきむように言われているのに気付くだろう。君は「えっなんで?」と思って、助産婦さんたちに「もう一生分いきんだりうめいたりしたんだから、もういいでしょ!」と言いに行きたくなるかもしれない。
でも残念ながら、(というか当然なんだけど)またしても助産婦さんが正解。分娩の最終段階〜胎盤(プラセンタ)の娩出、いわゆる“後産”を終了しなければ、分娩は完了といかないんだ。これが上手くいかないと、娩出を助けるための注射を打たないといけないことだってある。また、それでも難しい場合は、最終手段として胎盤を手で取り出すことだってあるんだ。これは君にとっても彼女にとっても、見るに忍びない光景だよね。胎盤は真っ赤で一部が紫がかっていて、ところどころが緑色の何ともいえない物体だ。
映画の『エイリアン』にでも出てくる“何か”みたいで、それがスルッと出てきたときには正直ビビる。娩出された胎盤は、助産婦さんが集めて、ベットの上の彼女の足の間のへまとめられる。これは胎盤がちゃんと排出されたか、異常ないかのチェックをするため。実はこの胎盤、食べることが出来るらしい。しかも栄養満点なんだって。おそらくギネスビール1〜2杯分なんかよりも、もっと言えば魚12匹分よりも高タンパクかもしれない。
でも、実際にそれを見たことのある人なら、口に入れようなんて思わないと思うけどね。もし持って帰りたければ手配してくれるみたいだけど、僕は病院に処理してもらったほうがいいと思うな。じゃなければ、パルスガンで武装した『エイリアン』のリプリー中尉に依頼するかだね。
「ついでにあと2〜3針…」の
KY ジョークですべてが台無し
出産の血しぶきが飛び散るようなスプラッタな世界に魅了された後は、次には縫合のプロセスが待っている。局部が裂けてしまったり、会陰切開が行われた場合には縫合しないといけないからね。経験したあるDADは、分娩後の残虐な光景はまるで、ジャクソン・ポロックの血だか液体だか雫だかが飛び散ったような抽象画を見ているみたいだっていっていた。助産婦さんもドクターもプロフェッショナルだから、お針子さんのごとくサクサク仕事をこなしていくけど、ごくたま〜に失敗してしまうこともある。
縫合でもたもたされた時の彼女の苦しみといったら……。辛すぎて想像したくないね。ここで、君たちが大きな間違いを犯さないように、僕の経験を元に警告しておこう。縫合の時に「ついでにあと2〜3針お願いできます? だってほら、その方があれでしょう」なんてことは絶対言っちゃダメ!僕が冗談のつもりでそんなことをいった時なんか、その瞬間に3人の助産婦さんとリサから、物凄い嫌悪感のこもった視線が突き刺さったよ。
僕は赤ちゃん誕生の輝かしいパートナーから、一瞬にして人間のクズへと大降格してしまった。助産婦さんは「どこまで縫えばいいのかは、私たちが一番わかっていますから」とピシャリ。この助産婦さんからクリスマス・カードをもらうことはないだろうね。でも、リサはありがたいことに許してくれたよ。教訓「縫合に関するジョークは言うな」だね。
縫合する時は痛みを感じないように、部分麻酔の注射が打たれる。でも彼女は出産を終えたばかりで、下半身全体がとても敏感になっているんだ。だから小さな針でチクっとしただけでも、分娩のときの痛みと同じくらいの衝撃を受ける。ある女性は病院中に響きわたるくらいの大声で「今度は一体どんなヘマをやらかしてくれたっていうのよ! 訴えてやるから覚えていなさいよ!」と泣きながら叫んだそうだよ。(そう、陣痛の回の時に「いっそ殺して!」と叫んだマックスの奥さんだ)生まれた赤ちゃんを見てどれだけ気持ちが高ぶっていても、もういじられるのは勘弁ってことだね。
(つづく)
PROFILE
ジョン・スミス
世界的ベストセラーとなった「The Bloke’s Guide to Pregnancy~野郎のための妊娠ガイド~」の著者でもあり、英国版FQをはじめ多くの育児雑誌でコラム等を執筆する。
Translation: MIDORI MIURA
FQ JAPAN vol.08より転載