日本はもうおしまい? 子ども減少の元凶は◯◯
2018/03/05
親が自分と同数以上の子供を生む市町村も40ヶ所ある
そういう話をすると「日本はもうおしまいだ」と感じる人がいそうだが、東京がつぶれても日本がつぶれるわけではない。前記の数字が100:100を超えている市町村、つまり親世代の数と同等以上に子供の生まれている市町村も、全国には沖縄県内を中心に40ある。これが100:90であっても当面問題は生じない水準だが、ここまで基準を下げれば110の市町村が該当する。その多くが離島や山間過疎地だ。過疎地は子供が少ない、という安易な先入観があり、事実そういう過疎地も数多いが、他方で子供や子育てをしている若い世代を大事にしている過疎地域もちゃんとある。他方で大都市の場合、最も状況がマシなのが前記の広島(100:75)で、ほとんどは100:60前後の水準に低迷している。子どもの減少の元凶が大都市であるということは、断言しても差し支えない。
同じ日本人が営む現代日本社会の中に、これだけ大きな差が生じているということは、何を示しているのか。日本人自体のDNAに何か変化が起きているというような話ではなく、問題は暮らし方、生活環境の変化にあるということだ。子どもの生まれている地域にもネットは普及し24時間営業の店も多いわけで、変化がすべて悪いわけでもない。快適な生活を保ちつつ、直すべきところだけ改めていけば、子供の育つ環境は復活できる。次回以降にきちんと見て行こう。
PROFILE
藻谷浩介 MOTANI KOUSUKE
株式会社日本総合研究所主席研究員。「平成の合併」前の3232市町村全て、海外83ヶ国を私費で訪問した経験を持つ。地域エコノミストとして地域の特性を多面的に把握し、地域振興について全国で講演や面談を実施。自治体や企業にアドバイス、コンサルティングを行っている。主な著書に、『観光立国の正体』(新潮新書)、『日本の大問題』(中央公論社)『里山資本主義』(KADOKAWA)など著書多数。お子さんが小さな頃は、「死ぬほど遊んでやった」という良き父でもある。
関連記事
FQ JAPAN VOL.43より転載