「原点は赤ちゃん」汐見教授が語る、アクティブ・ラーニングの本質とは?
2017/04/04
挑戦したい気持ちを励ますのがパパの役割
“子供のため”という考えから離れるべき
では、生きる力を身に付けるための遊びとは一体どんなものか? セミナーの後、FQ JAPANは汐見先生に単独取材を決行。パパとして、わが子にアクティブ・ラーニングを実践するための方法・ポイントをうかがった。
Q.家庭での「アクティブ・ラーニング」における、父親の役割とは?
A.子供が挑戦したり冒険する気持ちを励まして支えるのが、父親の役割
すべてのパパがそうだとは思いませんが、子供が新しいことをやってみようとしたとき、多くのママは子供の安全を願って『あ、やめて』と言い、パパは『お、やってみな!』と言うことがあります。パパは、子供が、挑戦したり冒険したりしようとする気持ちを、励ましたり支える役割。それをパパはママ以上にしてくれる可能性がある。すると、子供はこういうことをするとママは止めるけど、パパがいるときはこういうこともしていいんだなとなります。そういう意味ではパパのほうが育児に向いているとも言えます。
Q.詰め込み型・受験型で育ってきた、マニュアル世代のパパたちが、子供の「アクティブ・ラーニング」を受け入れるためには、どのような考え方のシフトが必要でしょうか?
A.“子供のため”ではなく、“自分がやりたいこと”を改めて考えてほしい。
『子供のため』は、あまりやらないという気持ちが必要です。まずは、『自分がやりたい』をあらためて考えて欲しい。昔魚釣りやりたかったけどできなかったからやってみようとか、サイクリングをやりたいとか散歩したいとか。これを『子供と一緒にやったら自分も楽しくて、子供のためにもなるな」ということを探してみてはいかがでしょうか。
子供のためではなく、自分が子供と一緒にやったら楽しい。そういうことを探して、親も子供と一緒に楽しんでほしい。本を読むのも同じです。自分も子供も、興味を持てるものを探してみましょう。
もちろん、その考え方は、女の子に対しても同じで良いでしょう。例えば、「リカちゃん人形で遊ぼう」と言われたときに、「よし、リカちゃん人形を全部作っちゃおうか!」とか、自分もやってみたいと思えることに子供と一緒に挑戦してみましょう。
Q.すでに、アクティブ・ラーニングを実践している成功例があれば教えてください。
A.日本でもアクティブ・ラーニングへの取り組みが広がっています。
ボーネルンドのプレスセミナーでの講演では、ドイツ・ミュンヘンの小学校の事例を紹介しましたが、プロジェクト型保育、テーマ型保育をしている幼稚園・保育園が増えてきています。イタリアのレッジョ・エミリア市で町ぐるみで行っている「レッジョ・エミリア・アプローチ」は世界的に有名な幼児教育法です。
日本でプロジェクト型保育に取り組んでいるのは東京の多摩川保育園、米子の仁慈保養園、鳥取の赤崎保育園などがあります。東京・大阪などの都市部の幼稚園・保育園でも、だんだんアクティブ・ラーニングへの取り組みが進み始めています。
Q.アクティブ・ラーニング的に、“良い遊び”と“残念な遊び”とは?
A.子供が面白いと思えるか、そうでないか。意外性と発展性が重要です。
アクティブ・ラーニング的に良い遊びというのは、子供が「面白い!」と思ったことです。子供の主体性、工夫性、発展性が大事。例えばゲームは、大人の作ったプログラムで遊ぶもの。大人の作ったプラグラムで遊ばされているとも言えます。そこには意外性がない。そのため、機械を相手にする遊びはアクティブ・ラーニングには入らない。もっと面白くしようという発展性がなければアクティブ・ラーニングにはなりません。
Q.0~2歳頃、お話や感情表現が上手にできなくても「アクティブ・ラーニング」を楽しむ方法や遊び方はありますか?
A.遊びと生活の区別がない、0~2歳こそ一番大事な時期!
0〜2歳の子供には、遊びと生活の区別がなく、人生のなかで一番学びが多いのがこの時期です。子供が主体的にやりたくなったこと、手を出したこと、口に入れようとするもの、それはすべて子供の持つ好奇心から生まれています。パパやママは、危険なものはあらかじめ排除しておき、可能な限り温かい眼差しで見守って欲しいですね。アクティブ・ラーニングの原点は赤ちゃんにある、と言えるでしょう。