[発達障害]栗原類さんの親心にグッとくる子育ての話
2016/12/13
「漢字は書けなくても、アルファベットは書けます」
いつも味方でいてくれる母の姿勢に救われた
―― 類さんが診断されたとき、母・泉さんも発達障害と診断されたそうですね。教育方針はどんなものでしたか?
「母は、僕とは違うタイプの障害です。母は頭の回転が速く何の苦労もなくいろんな知識を吸収するタイプ。僕は、記憶障害もあって物事をなかなか覚えられないタイプ。だから、なぜ僕ができないのか不思議でしょうがなかったみたいです。靴ひもなんて、普通なら小学校の高学年にもなれば結べますよね。でも、がんばってもできない子もいる。母はそれを知り、辛抱強く、あきらめずに、へこたれずに僕を見守り続けました。『自分と子供は別々の個性を持った人間であり、自分にはできないことを彼はたくさんやっている』という目で僕をみてくれました」。
―― いま、お母さんのどんなところに感謝したいですか?
「母はいつでも僕の味方でいてくれました。あるとき、小学6年生の頃、先生が母に『類くんはまだ自分の名前を漢字で書けません。他の子はみんな書けているのに』と言ったことがありました。そのとき、母は先生にこう言ったんです。『でも、類は自分の名前をアルファベットで書くことができますよ』と。母は強い人で、こうして、いつも立ち向かってくれました。僕のマイペースで穏やかな部分をリスペクトしてくれているのを感じます。でも、もっともっと厳しくしてくれてもよかったんですけど。いつか僕が親になったら、母とは反対にかなり口うるさい親になることは想像つきます(笑)」。
「悩みを自分だけで解決しようと思わないで」
“味方”は家族や友人以外にもきっといる
―― いま、発達障害の当事者と保護者の方たちへ、伝えたいことはありますか?
「どうぞ自分一人で抱え込まないでください。そして、自分自身を大切にしてください。僕の場合、高橋先生という何でも話せる専門家の先生と、早い時期に出会えたお陰でいまの僕があります。客観的な視点で意見を言ってくれる、信頼できる人を見つけられたらいいですね」。
―― 子育てでいっぱいいっぱいの親にとっては、何でも話せて、客観的な視点で意見を言ってくれる人といえば、もしかしたら夜、仕事から帰って来る父親かも?
「母の場合は、初めから、自分の悩みの真意を理解してくれる人を身近に求めるのはあきらめていたようです。どうせ愚痴っても理解されないだろうなあと。だから、身内ではない第三者の冷静な意見を主治医に求めたのです。お陰で母はブレずに子育てできました。母のその整合性が、僕に安心感をくれました。発達障害が専門でなくても、詳しい精神科の先生は身近にいるはずですよ、きっと」。
―― 最後に、子育てや子供の教育方針に悩んでいる、パパ・ママへメッセージをお願いします。
「“本当の英才教育とは、子供の好きなことを伸ばすこと”。これは、母が僕に教えてくれたことです。今の僕の個性を作る核になったのがアニメやお笑い、映画、博物館、旅、音楽など、とにかくいろいろです。僕のような発達障害があるお子さんは、ひとつのことにのめり込みやすい気質があります。でも、何かあれば一瞬でバランスを崩しがちです。押し付けるのではなく、可能性を増やすという意味で、広く浅くでもいいので、いろんなことに触れさせるといいと思います。僕は、今回この本を書いたことで、僕は自分自身を好きになれましたし、変わることができました。きっと、誰もが輝けるヒントがこの本でみつかると思っています」。
栗原 類(くりはら るい)
1994年東京生まれ。中学時代に「メンズノンノ」「ポパイ」などのファッション誌のモデルとして活躍。高校時代にバライティ番組でブレイクする。2012年以降、ドラマ・映画・舞台など俳優としても活動の幅を拡げる。2017年には舞台「春のめざめ」や、初主演映画「お江戸のキャンディ2~ロワゾー・ドゥ・パラディ~」などが決定している。
2016年10月6日、書籍『発達障害の僕が輝ける場所を見つけられた理由』(KADOKAWA)が発売。
栗原類オフィシャルブログ:http://ameblo.jp/louiskurihara-ege/
Photo » TAIKI FURUKAWA
Text » MIKAKO HIROSE