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「男性の育休」は子育てしやすい社会への変質のカギ

企業が男性の育休取得率100%や必須化を掲げる意味はあるか。
本来本人の意思で取るものであり、トップダウンなのはいかがなものか?

 意思表示として、目標を掲げることに効果がないわけではないと思う。

 しかし、育休は幸せな家族を築いていく上での手段であり、目的ではないことを忘れてはいけない。数値目標が一人歩きすると、偏差値のために勉強をするような本末転倒が起こることが懸念される。

 実際に育休取得率100%を掲げたいために、通常の年末年始の休みを、無理矢理1日だけ「育休」扱いにする企業もある。そういう会社が本当に男性の育児を後押しする企業かと言えば必ずしもそうではない。

 「育休取得率100%」などが、実を伴わないホワイト企業アピールとして利用される可能性もある。意思表示として悪いことではないが、形の上で「それをやっている」ことで本質的な改善に目を向けさせないという負の効果をもたらすことも考慮しなければいけない。このようなことが「宣伝」に使われるようになると、上で指摘した本末転倒が起こりやすい。

 トップが「口だけ」だと中間管理職は追いつめられる。そのことは拙著『ルポ父親たちの葛藤』(PHPビジネス新書)で描いたとおり。中間管理職のマネジメントスキルに依存するキャンペーンではダメ。



 代替要員がいる大企業であれば育休は推進しやすいが、中小零細企業では難しいのが現実。そもそも日本の企業の99%が中小零細企業であることが、男性の育休取得率の上昇を妨げていると考えることはできる。

 「育休」というのも1つの働き方、1つのライフスタイルにすぎない。特に中小零細企業においては、「大企業型の育休」にこだわらず、それぞれの企業形態、雇用形態、ライフステージに合わせた多様なライフスタイルが認められるような「柔軟な制度」が、一律の「育休強制制度」よりも必要。

 制度としての「育休」にこだわると、本質的な社会の変質を遅らせる可能性がある。もっと柔軟な発想が求められている。

※長時間労働是正も重要だが、現在議論されているような36協定の見直し、すなわち月間残業時間を80時間以内にするという程度の規制では、過労死防止の効果はあっても、女性の企業進出や男性の家庭回帰を後押しする効果はほとんどないと考えられる。月間80時間残業していいということは、1日12時間労働を認めるということだから。毎日9時から21時まで仕事をしていたら、リフレッシュする時間どころか睡眠時間を削るなどしないかぎり、家事や育児に十分な時間を費やせない。36協定の見直しはぜひすべきだが、それが少子化対策になるというのは煽りすぎだと感じる。

0407_01育児・教育ジャーナリスト
おおたとしまさ(TOSHIMASA OTA)
株式会社リクルートを経て独立。男性の育児・教育、子育て夫婦のパートナーシップ、無駄に叱らないしつけ方、中学受験をいい経験にする方法などについて、執筆・講演を行う傍ら、新聞・雑誌へのコメント掲載、ラジオ出演も多数。
» おおたとしまさの著書一覧

●おおたとしまさ氏の記事 一覧
https://fqmagazine.jp/tag/fathers-eye/

 

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