困ったときだけ手助けを 子供とフェアな関係
2016/04/15
冬は1ヶ月も学校を休んで地球の反対側へ。子供の間で流行っているビデオゲームには、パパもこぞって参戦。子供と一緒に遊びながら自発性と好奇心を伸ばすビアンキ一家の自由な子育てとは。
大らかで破天荒な教育法は
自発力を伸ばすための作戦
日本だと弁護士といえば、お堅くて真面目なイメージだが、お国柄のせいかイタリアにはまるで弁護士に見えないという人も多い。ダニエレさんもそんな1人。その自由で大らかな人柄は、「パパぶり」にも大いに表れている。
1人息子のレナート君は現在小学4年生。そろそろ勉強も難しくなってくる年頃なのだが、ビアンキ一家は子供を自然に触れさせたいという思いから、冬は休学させて1ヶ月もの長期間を南半球で夏真っ盛りのオーストラリアで過ごす。
また、普通の親なら禁止したがるビデオゲームも、子供の世界を理解するために必要であるからと一緒に遊んでしまう。
「息子との遊びは、自分の好きなことと彼の好きなことを半分ずつに分けて行っています。半分は彼のビデオゲームに付き合う代わりに、残りの半分は私の趣味のプラモデルに付き合ってもらっています。今の時代のビデオゲームについていくのはとても大変ですが、子供が興味を持っているものはすべて共有したいので」(ダニエレさん)。
一方プラモデルに関しては、自分が仲間と作っているサークルにレナート君も連れて行き、かなりマニアックなプラモデル作りを一緒にやっている。でもその実は、別に自分の趣味を共有させるのが目的ではなく、最後まで物事をやり続ける忍耐力や細かいものを組み立てていく中で、集中力を養ってもらいたいという目的があるそうだ。
優しくて人を思いやる性格のレナート君は、気を遣って自分の趣味に合わせているのではと心配したこともあったが、レナート君も、本当にプラモデル作りが大好きな様子。作る方はまだまだパパの助けが必要だが、仕上げの色付けや細部の描き込みは、もはやパパ以上の腕前だ。
タヒチに旅行した時に買った、リサイクル素材でできた魚や亀の玩具はレナート君のお気に入り。
教えるのではなく、
“知りたい”と思わせる
「勉強も教育も〝こうしなさい〞と頭から押し付けるのはよくないと思っています。まずは興味を起こさせる、そしてそれを掘り下げる方法や手段を導いてあげるのが親の仕事だと思います。何事も先回りして教えるのではなく、失敗してもいいから自分でわかるように仕向けるのです」(ダニエレさん)。
家族全員の共通の趣味である旅行は、そういう意味で大いに教育にも役立っていると言う。ミラノという大都会とは全く異なる、自然に溢れたオーストラリアは、レナート君にとって新しい世界であり、想像力や知的好奇心が大きく刺激されるのだ。
さらに旅することで自立心や責任感も生まれてくるとか。レナート君はパスポートをはじめとした荷物の管理や、普段と違う環境の中で協調して暮らしていくことを自然と覚えていったとダニエレさんは語る。
「私は息子をめったに怒りません。悪いことをした事実を責めるのが大事なのではなく、それが悪いことだと理解させ、同じ事を繰り返さないようにするのが目的だから。それに薬と同じで怒ってばかりいると効き目がなくなりますからね!」
弁護士 ダニエレ・ビアンキさん(46歳) 、PR・イベントオフィス経営 バルバラ・サニコラさん(44歳)、長男 レナート君(10歳)
ミラノの中心にあるお洒落ゾーンに住むビアンキ一家。家族の共通の趣味は旅行やモノポリーなどのテーブルゲーム。レナート君はフェンシング、バスケット、曲芸を習うスポーツ少年だ。
Photo » GIOVANNI SANTARELLI
Text » MIKI TANAKA
FQ JAPAN VOL.38(2016年春号)より転載