調査データで読み解く!「男性の育児休業取得状況の公表義務化」で会社はどう変わった?
2024/01/07
育児・介護休業法の改正により、2023年4月から従業員が1000人を超える企業の事業主は、男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられた。その後、会社に変化はあったのだろうか。厚生労働省が行った調査結果から読み解いていく。
「男性の育休取得率」を
公表するメリットとは
2023年4月に改正育児・介護休業法が施行され、従業員が1000人を超える企業に対し、男性従業員の育児休業等の取得状況を年に1回公表することが義務付けられました。対象となる企業は、公表前事業年度における「育児休業等の取得割合」または「育児休業等と育児目的休暇の取得割合」のいずれかを、企業HPや厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」など、一般の方が閲覧できる方法で公表する必要があります。厚生労働省「イクメンプロジェクト」では、該当企業を対象にした対応状況や育休取得状況の公表による効果などについて調査※を行い、速報値を発表しました。
まず、「育休取得率を公表したことによる効果・変化として実感していること」について聞いたところ、①社内の男性育休取得率の増加(33.1%)、②男性の育休取得に対する職場内の雰囲気のポジティブな変化(31.5%)、③新卒・中途採用応募人材の増加(8.3%)の順で回答が多く、社内での育休取得の促進だけでなく、人材獲得の面でも効果を感じているという結果になりました。
育休等取得率の公表による効果・変化(n=1385)
「男性の育休取得率向上」で
企業はどう変わる?
また、「男性の育休取得率を向上させるための取り組みにより、どんな効果があったか。また、男性の育休取得率が向上したことによりどんな効果があったと実感しているか」について聞いたところ、①職場風土の改善(56.0%)、②従業員満足度・ワークエンゲージメントの向上(45.9%)、③コミュニケーションの活性化(22.6%)、④くるみん認定等の認定取得(15.1%)、⑤離職率の低下(12.5%)という結果となりました。男性の育休取得率向上に向けた取り組みが、育休の取得を希望している当事者だけではなく、他の従業員のワークエンゲージメントや人材確保などの面で企業全体へも好影響を及ぼしていると推測できます。
男性の育児休業取得率向上の取組または取得率向上による効果(n=1385)
男性育休取得に迷った時は
会社のメリットに目を向けて
まだまだ「育児は母親の仕事」「育児休業は女性が取得するもの」という認識が根強く、男性が育児休業を取得することに否定的な考えを持つ企業も少なくありません。しかし、男性の育休取得率の向上に取り組み、育休取得率を公表することによって、さまざまなメリットがあったと実感している企業が多いことも事実です。
厚生労働省では引き続き、育休の取りやすい職場環境づくりを進めていきますが、「育休を取ると職場に迷惑がかかるのでは……」と感じてしまう場合は、育休取得による会社へのメリットについてもぜひ目を向けてみていただければと思います。
※「令和5年度年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」(速報値)の概要
○調査手法:依頼状の郵送によるWebアンケート調査
○集計期間:2023年6月5日~7月10日
○調査対象:全国の従業員1,000人超のすべての企業・団体
○発送件数:4,409件 ○有効回答数:1,472件(回答率:33.4%)※従業員数1,000人以下と回答した企業を除く、1,385件を分析対象とした
○調査時点:2023年6月1日(※育休等取得率は前事業年度の数値)
【まとめ】
●男性の育休等取得率の公表は社員満足度や人材獲得面でも効果が出ている
●育休取得率向上は会社へもメリットあり! 今こそ前向きに育休取得の検討をしよう
PROFILE
厚生労働省 雇用環境・均等局
職業生活両立課
FQ JAPAN BABY&KIDS VOL.67(2023-24年冬号)より転載