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子どもは年間2万本の広告を見ている?子ども向けネット動画に潜むリスクとは

様々な子ども向けの動画コンテンツが登場する中で、子どもが観る内容に注意しているパパ・ママも多いのではないだろうか。実は人気のある子ども向けメディアの多くにも、子どもたちに悪影響を及ぼす可能性があるそう。隠れたリスクについて、ロンドン大学の社会心理学者キーオン・ウェスト氏に聞いた。

男らしい、女らしい、登場人物が
固定的なジェンダー観を植え付ける

Exstreamistのデータによると、アメリカの子どもたちは、平均一日1.8時間、NetflixやYouTubeなどで動画を視聴しているそうだ。これは、屋外で遊ぶ時間の18倍にもなるという。日本でも同様に、幼児の多くが動画を視聴している。NHK放送文化研究所によると、2~6歳の幼児がテレビを見る時間は平均57分、インターネット動画は平均33分視聴しているのだそう。

もちろん、子育ての中で動画配信サービスを活用することは何も悪いことではない。ただ、子どもが観るコンテンツには親が気をつけてあげなければいけない。

海外の研究に、約200人の子どもたちの動向を1年間観察し、ディズニープリンセスが登場するコンテンツの視聴の度合いが、固定的なジェンダー観に繋がるか検証したものがある。その結果、女性らしい、男性らしいといった固定的なイメージが描写された番組を観た子どもたちは、そのイメージを吸収し、実生活の行動にも反映していたという。

メディアから受ける悪影響は
動画だけではなく広告にも潜む


特に、子ども向けメディアで女性や女の子がどのように表現されているかを考えると、子どもへの影響は心配だ。女性の登場人物は圧倒的に少ないだけでなく、強く、自立し、しっかりと自己主張する人物として描かれることが非常に少ないことを発見した海外の調査もある。

メディアから受ける影響は性別に限ったことではない。アメリカで行われた、子どもをターゲットにした広告に登場する人種についての調査では、白人の起用が圧倒的に多いだけでなく、白人が中心人物や地位の高い人、リーダーとして描かれることが多いと分かった。有色人種は基本的に存在感が薄く、マイナーで重要でない役割として描かれていたという。アメリカの子どもたちは、年間2万もの広告を見ていると言われており、その悪影響の蓄積が懸念されている。日本でも同様に、メディアから受ける影響は深刻な問題として捉える必要はある。

動画を見せることは問題ではない
大事なのは、親が確認をすること


とは言え、子どもに動画を視聴させることに罪悪感を抱く必要はない。それよりも、子どもたちにどのメディアを見せるのが最適かを、常に親が考えることが重要だと、キーオン氏は話す。女性も他の登場人物たちと同じように表現されているだろうか? 登場する女性たちはどのような立ち位置でどのように振る舞っているだろうか? 中心人物にはマイノリティの人種も登場しているだろうか? 父親が二人、母親が二人の家庭は登場するだろうか?ゲイは存在しないことにされていないだろうか?

こういったことを親がチェックし、子どもたちの観る動画を調整するのは恐らく骨の折れる仕事だろう。ただ、それが親の責任であり、知的でおおらかな人間に子どもがなるためにも必要なことである。その動画をもって子どもがまともな人間に育つかは、親の力によるところも大きいのだ。

教えてくれた人

キーオン・ウェスト

ロンドン大学ゴールドスミス校教授。社会心理学者。オックスフォード大学で博士号を取得し、65以上の学術論文を発表、1800回以上引用されている。2児の父。カリン・フランクリンとの共著『SKEWED: Decoding Media Bias』がW.F.Howesから出版され、オーディブルでもDL可能。


FQ JAPAN VOL.67(2023年夏号)より転載

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