子どもに友達ができないとき、親はどうするべき?精神科医・香山リカが解説
2023/05/12
人見知りの娘さんが、友達ができないと悩んでいるという相談をしてきたパパ。親としては、小学校に入ったばかりで、心配が尽きないだろう。どうしたら友達ができるのか、親としてどうサポートすればよいのか、精神科医の香山先生に聞いた。
38歳男性。娘(7歳)・妻(37歳)との3人暮らし
小学1年生の娘のことで相談させてください。昔から人見知りな性格でしたが、学校や習い事などで友達を作ることができないと悩んでいる様子です。親として、娘にどのようにアプローチしたら良いか、アドバイスをいただけませんか?
小学校低学年は
他者と未分化な状態
赤ちゃんは自己と他者とが未分化の状態ですが、未就学児くらいだと「友達が怒っているけど理由はわからない」という状態になっていきます。それが小学生になる頃には、徐々に友達が怒る理由が分かってきます。ですがまだ、明確ではありません。他者の気持ちを想像する、という配慮が不完全なのです。だから「自分はあの子と遊びたいのに、あの子はなぜ他のことをしたいのだろう?」というように、相手の気持ちや思考にまで理解が及びません。そして友達になれない、友達ができない、と傷付くのです。大人になれば、連絡先を聞くなど自分からアクションを起こします。しかし、この年頃の子供は自分が好きなら相手も同じ気持ちだ、と考えがちで、行動に至りづらいのです。
アドバイスとしては、パパ・ママの経験をお話してあげたらどうでしょうか。「パパも小学校時代は友達が少なかった。でも中学生になって部活を始めたら親友ができたんだ」など、いま友達がいなくても心配ないんだ、と安心させてあげましょう。そのうえで、特定の誰かと友達になりたいなら、「僕は(私は)あなたと友達なりたい」と伝えることが大事であることを教えてあげましょう。難しく考えず、「おはよう!」「バイバイ!」などの挨拶からでいいのです。
また、友達を作るのが苦手な子供は、自信が欠けている場合があります。「凄いことを知っているね!」「パパもやってみようかな!」など、子供が自信を持てるようにパパ・ママが話しかけて、自信を補ってあげるのも効果的です。
思春期の子供は
支配せず真摯に向き合う
小学生も高学年になると、自分と他人が違うことを理解します。すると今度は「他人と違う私って誰なの?」と、自我が子供を苦しめ始めます。そこから逃れようと、過剰なほど集団で行動をするようになることがあります。これは「自分とは何か?」への不安の表れ。集団の中に身を置くことで自分を見付けようとしているのです。
濃密な関係の集団に加わること自体は悪いことではありませんが、仲間外れやグループの分裂などの問題が起こり、それが原因で学校に行けない、自傷行為に発展するなど深刻な事態に発展することもあります。また、この年頃の子供は、あまり悩みごとを親に話さなくなります。もちろん子供の行動や人間関係を把握することなどできませんし、それは自立の妨げとなります。人間関係のトラブルは子供自身が乗り越えねばなりませんが、思春期の子供は傷付きやすく繊細です。
そこでパパ・ママが日頃から行うべきは、子供に「どんなときでも味方だよ」と、困ったときにSOSを出せるようにメッセージを送り続けることです。自分の辛かった体験談をしてあげつつ、「どんなことでもガッカリしないから話してね」と伝えましょう。
子供を監視したり支配してはいけませんし、自立を促さねばならない一方で、難しいのはそのバランス。子供を信じて一歩引きながらも、最後の最後には「そんなことをする人は友達じゃないよ。それだけは許さない!」と、味方になってあげられるのも家族です。学校の先生や影響力のある誰かの意見に左右されず、断固として「パパはこう思う。だから今回は介入する」など、親として、主体的に、真摯に、子供と向き合いましょう。そうすれば子供への思いが伝わり、難しい思春期も乗り越えていけるのではないでしょうか。
【まとめ】
●友達ができないことは悪いことじゃない。安心と自信を与える声かけを
●思春期の子供には一歩引いてSOSが出せる環境をつくる
PROFILE
香山リカ
東京医科大卒。精神科医。豊富な臨床経験を活かして、現代人の心の問題を中心に、様々なメディアで発信を続ける。『ノンママという生き方 子のない女はダメですか?』(幻冬舎)、『50オトコはなぜ劣化したのか』(小学館)など著書多数。
文:川島礼二郎
FQ JAPAN VOL.66(2023年春号)より転載