オモチャに性別は関係ない!? 世界のオモチャのジェンダーフリー化事情
2021/07/03
“オモチャの性別”の決めつけを撤廃する流れやジェンダーフリー化の潮流は、欧米を中心に世界中、そして日本でも目立ち始めている。実際に起こっている動きを紹介しよう。
欧米では数年前から
性差を無くす動きが加速
アメリカのスーパー「ターゲット」
オモチャ売り場は「男の子用」「女の子用」表記を撤廃
©Colleen Michaels / Shutterstock.com
©Sundry Photography / Shutterstock.com
2010年代前半頃から、欧米ではオモチャ売り場からの男女表記の撤廃やジェンダーフリーを意識したオモチャの開発が活発化してきた。さらにイギリスの最大手玩具店「トイザらス」のオモチャ売り場から男女の区別が無くなったことが話題になり、その動きに拍車がかかった。
またアメリカの大規模スーパー「ターゲット」について、CNNは2015年に「米ディスカウントストア大手のターゲットは、玩具や子供用品売り場の『女の子のおうちセット』『男の子の寝具』といった男女別表示を段階的に廃止すると発表。
玩具売り場でもピンクやブルーなどの配色を含めた男女の区別を廃止する(引用:CNN)」と報道。今では欧米全体のスーパーや百貨店で、オモチャ売り場の男女表記の撤廃が進んでいる。
「アナ雪」ファンの息子とパパが
ドレスを着て踊りまくる動画が
SNSで人気爆発!
画像提供:ØrjanBurøe
映画『アナと雪の女王』の舞台ともいわれるノルウェーに住むデクスター君は、エルサが大好きな4歳の男の子。その気持ちを汲んだ、コメディアンで父親のオルヤン氏は、エルサの衣装を息子のために購入。さらに自分の分まで揃えて、ママの留守中に部屋中を走り回って踊ったのだ。
この楽しそうで可愛らしい親子の動画がSNSで世界中に拡散され、再生回数は1.1億回を超えた。「プリンセスは女の子のもの」という固定観念にとらわれず息子の意志を尊重したオルヤン氏の姿勢が感動と共感を呼んだのだ。
米マテル社が発売した
多様性ファッションドール
「クリエイタブルワールド」が好評
©2021 Mattel.
男女の性差が当たり前だったオモチャ業界に、大きな変化が起きたのが2019年のこと。バービーを販売するアメリカのマテル社から「ジェンダーフリーな人形」が登場し話題となったのだ。
男の子でもあり、女の子でもあるビジュアルで、髪や服を何通りにもカスタマイズできる多様性を持ったこの人形は、子供達のみならず大人からも称賛を受けた。このような時代のニーズをつかんだオモチャが、これからは増えてくるに違いない。(日本未発売)
日本でも語られ始めた
“オモチャの性別”の違和感
りゅうちぇるさんが
「オモチャに性別はいらない」
と発信し話題に
©2021 Mattel.
メイクやファッションなどで自分のスタイルを確立するりゅうちぇるさんが、「オモチャと性別」についてメディアで発信したことが話題になった。
テレビ番組で自身の考えを語ったことが共感を呼びSNSでシェアされたり、「#おもちゃに性別いるのかな」というキャッチコピーで玩具ブランド『フィッシャープライス』と『サンリオベビー』がりゅうちぇるさんとコラボしたインスタライブは約2万人が視聴。
欧米に比べると「オモチャと性別」に関しての議論が少なかった日本だが、このような著名人の発信により、多くの人が関心を持ち始めている。
「男の子がプリンセス好きじゃいけないの?」
人気インスタ漫画家が感じた
大人による固定観念の植え付け
「男らしさ女らしさ 育児に必要?」と題したインスタ漫画が話題になっている。一時期プリンセスのオモチャにはまっていた息子のことを第三者から「そのうち男の子のオモチャに興味を持つから大丈夫」と言われたことに違和感を覚えた……という内容だ。
読者からは共感するコメントが殺到。作者のカコマツ(@kaco_ma_tsu)さんは『周囲からの前時代的な育児観の押し付けに悩む人は多いはずだと思い、漫画を描きました。かなりの反響があり驚きました』と話す。この“違和感”を感じている人は少なくないようだ。
自由な発想で遊べる!
日本でも”男女差なく使えるオモチャ”が
増えてきている
©Disney/Pixar
世間で「オモチャと性別」について語られ始めた一方、日本のオモチャ業界にも変化が出てきている。2019年に、バンダイから性別が男のお世話人形「ホルンおせわきほんセット」が発売され、ダイキャストカーブランド「ホットウィール」にはバービーのキャンピングカー「ドリームキャンパー」が仲間入り。
©2021 Mattel.
他にも理系玩具に女の子が好むザインが登場するなど、オモチャの内容で男女を分けることなく、誰もが手にしやすく遊びやすいものが増えている。今までのオモチャに新しい選択肢が増えることで、子供達にも枠にとらわれない自由な発想が生まれるだろう。
文:松永敦子
FQ JAPAN VOL.58(2021年春号)より転載