コロナ禍で4人に1人が発症!? 精神科医に聞く、家庭でできる“産後うつ”対策
2021/02/05
長期化するコロナ禍において、「産後うつ」は他人事ではなくなっている。ママが「産後うつ」に陥らないためにパパができることは? 精神科医の香山リカ先生に“原因”と“対策”を聞いた。
他人事ではない「産後うつ」
その原因を知る
11月中旬現在、新型コロナウイルス感染拡大の第3波が来る危険性が高まっています。感染拡大防止と経済活動を両立させる妙案を見出すのは、容易ではありません。コロナ禍の今、どうしてもこのような暗いニュースが増えてきています。
そんななか先日、『「産後うつ」はコロナ禍で4人に1人が発症、自覚なしで進む怖さ』という記事(「ダイヤモンド・オンライン」)が話題になりました。出産後の母親の「産後うつ」が、新型コロナウイルスの影響で以前の倍以上に増えている可能性があること、それに出産後1年未満の母親2132人のうち約24%の人に「産後うつ」の可能性がみられた、というのです。「産後うつ」は決して他人事ではないのです。
「産後うつ」には、2つの要因が考えられます。1つ目は、ホルモン等が原因となる身体的な問題です。平時であっても、睡眠不足によりホルモンバランスが崩れることが原因となり、うつ症状になることがあります。良い睡眠を得るためには、朝日を浴びて体内時計を働かせると良いことが知られています。
ところがコロナ禍により、外出しない、買物にすら行かない、という人も増えています。日中に充分に日光を浴びることができず、生活のリズムが崩れがちになる。そのうえに出産という大仕事が重なり「産後うつ」を患う人が増えている可能性があります。
もう1つの原因は心理的な問題です。コロナの影響により、ママに掛かるストレスやプレッシャーがこれまで以上に増えています。平時ならば、そうしたストレスは井戸端会議的な方法で発散されていました。買い物や仕事帰り、あるいは保育園の送迎などで出会った先輩ママやママ友と立ち話をすることで発散していた、というママは少なくないはずです。ママ友とランチを楽しみつつ子育ての悩みを語り合う、なんていう方もいたことでしょう。
ところがコロナ禍によって、そうした機会が激減してしまった。これはママにとって非常に辛い状態です。
また、在宅勤務の増加がママの精神的な負担となる場合もあるようです。積極的に家事・育児に参加してくれるパパなら家にいてくれて大歓迎ですが、正反対な方もいるようなのです。不機嫌なパパが長時間自宅にいるのはストレスの原因でしかありません。このようにコロナ禍で出産したママは、身体的にも心理的にも追い詰められやすいのです。
ママを守るのはパパの役割
「産後うつ」の対処法
「産後うつ」に限らず、うつ症状は人間にとって自然な反応です。その原因は、身体的か心理的、あるいはその両方のストレスであることもわかっています。それをバネにして跳ね返してしまう人もいますが、そうでない人もいるのです。そこで大切になるのは周囲の環境です。産後ママのサポート役を担えるのはパパに他なりません。
子育ては24時間営業ともいわれる重労働です。折に触れて、ママの様子に気を配りましょう。疲れが溜まっているように見えたら、それは危険なサインです。「子供は見ているから気分転換に外へ行ってきたら?」「映画でも観てきたら?」「友達とご飯食べておいでよ!」と声を掛け、ママが自分の時間を作れるよう、進んで家事・育児をしましょう。
不慣れなパパの家事・育児では上手く行かないこともあると思いますが、あえてワンオペで家事・育児を引き受けること。多くの女性が求めるのは、そのうえでの共感です。家事・育児の大変さをパパが身をもって理解しようとする。それだけでママのストレスを大きく減少させることができるはずです。
日常的には、傾聴という言葉がありますが、簡単に言えば「今日どうだった?」という声掛けが何より大事です。まずはママの話を聞いてあげましょう。長時間1人で家事・育児をするママが置かれる環境は、会社で同僚や上司に相談できるパパとはまったく違います。気の利いた言葉やアドバイスは不要。とにかく吐き出させてあげること。そして共感すること。これだけでママが「産後うつ」に陥ってしまう可能性を減らすことができます。
コロナにより私達の生活は大きく変わりましたが、この状態は今後もしばらく続くと思われます。この困難を子育てファミリーが乗り切るには、夫婦の協力が不可欠です。日頃からママの様子に気を配り、家族を支えていきましょう。
PROFILE
香山リカ(RIKA KAYAMA)
東京医科大卒。精神科医。豊富な臨床経験を活かして、現代人の心の問題を中心に、新聞や雑誌など様々なメディアで発言を続けている。著書に『ノンママという生き方 子のない女はダメですか?』(幻冬舎)、『50オトコはなぜ劣化したのか』(小学館)など。
文:川島礼二郎
FQ JAPAN VOL.57(2020-21年冬号)より転載