コロナ禍の妊娠・出産でパパができることは? 専門家に聞く環境変化と対策
2021/01/07
妻の手を握り締めながら、息を呑んで誕生の瞬間を待つ……。コロナ禍により、人生の一大イベントである立ち会い出産も、全国的に中止が余儀なくされた。妊娠・出産をとりまく最新状況とは?
医療現場も刻々と変化
コロナ禍における産婦人科の対応の変化について、太田寛先生はこう話す。
「新型コロナがどんな病気なのかはっきりわからなかった4〜5月は、母親学級、両親学級、健診時の同席、立ち会い出産、お見舞いとなにもかも中止でした。飛沫感染と接触感染の対策をしっかりすれば感染しないとわかってきた7月頃から分娩立ち会いを再開。ただし、同居中の旦那さん限定です※。両親学級と母親学級はビデオ対応、お見舞いNG、出産時の妊婦のマスク着用などは、継続しています」
新様式の出産を控えた妻のため、夫ができることは何があるだろう?
「麻疹、風疹、おたふくかぜ、水疱瘡のワクチンをすべて打ち、予防できる感染症は予防しましょう。また、近年献血の量が激減し、コロナ禍でも問題になりました。出産では大量の出血をする可能性があります。なかには輸血が必要なケースも。世のため、奥さんのために、献血していただきたいですね」
※里帰り分娩の場合は同居してないので立ち会い不可
父親の育休取得率は増加傾向
NPO法人ファザーリング・ジャパンでは、「コロナ禍前後の妊娠出産アンケート※」を実施。例えば、立ち会い出産や入院中の面会を望んでいたのにできなかったなど、コロナ禍における妊娠出産状況の変化が浮き彫りに。理事の塚越学さんはこう話す。
「コロナ禍でも病院には自分たちの希望を伝えてほしい。それでも実現が難しければ、コロナ前の平時と比較して出来ないことを数えるのではなく、現状を夫婦で前向きにとらえるよう切り替えることも大切です」。
一方、父親の育休取得率は増加。「妻を守る最後の砦は自分であると認識し、出産予定日1ヶ月前から飲み会の誘いは断るなど感染予防の徹底と勤務先に産前産後期の協力を仰ぐことが必要です」。
なお、同団体HPでは「コロナ禍における新しい妊娠出産環境を整えるためのチェックリスト」を公開している。ぜひ参考にしてみよう。
※コロナ禍における妊婦およびその配偶者、子育て中の男性女性を対象にスリール株式会社と共同実施。
パートナーや家族の立ち会い出産
立ち会い出産を希望する人は、平時では83%、コロナ禍でも83%とともに高割合だが、実現率は大幅に減少した。
パートナーや家族との
産後入院中面会
希望者そのものは平時で87%、コロナ禍で86%と同様。それに対し、実現率は71%減と顕著な結果があらわれた。
父親の育児休暇・休業取得
家族をサポートする目的で取得した有給休暇含む
希望者に対する実現率で平時を唯一上回ったデータ。病院などに頼れない環境下ではパートナーの育休取得が支えの1つに。
教えてくれた人
太田寛さん
産婦人科医。アルテミスウィメンズホスピタル勤務。京都大学工学部卒業後、日本航空に勤務。2000年東京医科歯科大学卒業。茅ヶ崎徳洲会総合病院、日本赤十字医療センターなどを経て現職。著書に、『ドクターが教える!親子で考える「子宮頸がん」と「女性のカラダ」』(日東書院本社)。
FQ JAPAN VOL.57(2020-21年冬号)より転載