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香山リカ先生に聞く! ストレスを抱える家族のためにパパができること

コロナ禍が長期化するなかで知らずにたまっている疲れ。そうでなくてもストレスを感じやすい生活のなかで、父親として、大切な家族のために何ができるだろうか。精神科医の香山先生に聞いた。

新型コロナが与えるストレス
徐々にすり減っていく私たち

私は、精神科とは別の診療科の外来も担当しているんですが、最近は、頭痛や吐き気など身体に不調が現れているのに、検査では異常がなく原因がわからないという「不定愁しゅうそ訴」に悩まされる方が増えましたね。

患者の方々に話を聞くと、新型コロナウイルスの感染を防ぐためにいつも緊張して過ごしているという方が結構多くて、それが知らない間にストレスとなっているんです。

例えばある女性は、「職場ではマスクをしなきゃいけないし、仕事が終わったあとにストレス解消のためにスポーツジムに行こうとしても、それまで予約なしだったのが予約制に変わっていて、手指の消毒にも気をつけなきゃいけないのでストレス解消にならない。スーパーに買い物にいっても、ソーシャルディスタンスということで、他の買い物客と距離を空けてレジに並ばなければいけなくて、少しも気を抜けるところがない」と訴えていました。

知らないうちにストレスを抱える、という意味では、私の身近にもこういうエピソードがあります。

新型コロナウイルスに関わる仕事を担当する男性医師の仲間がいるのですが、普段は落ち着いていて、新型コロナについても「心配し過ぎはよくない」と客観的に言える人でした。それがある日、自分の身内に発熱症状が現れたと分かった途端、その人が「大変だ、すぐに検査を手配しなければ」とあわてふためいたので、びっくりさせられました。

今年の春以降、新型コロナ関連の仕事が急増していて、その状態が何か月も続くうちに徐々にまいってしまったんでしょう。申し訳ない思いがしましたね。

みんな、少しずつすり減っているんです。私自身、ある日電車に乗った時、最初は混んでいたので立っていましたが、ようやく席が空いたので座ると、隣に座っていた人がパッと立って隣の車両に移っていきました。感染を防ぐためとわかってはいても「私、避けられているんだ」と少しショックを受けました。

また、エレベーターに乗ると、「4人以下」と人数制限の張り紙があるにも関わらず、次々に人が乗り込んで5人以上になってしまいました。その人たちが張り紙に気づいていない可能性があるとは分かっていても、「何で乗ってくるんだろう」と少し憤ってしまいました。

ただでさえ人間関係はストレスの主原因なのに、ますますその影響が強くなっているように感じます。

疲れたらとにかく休むこと
夫婦でいたわりを忘れずに

新型コロナウイルスについてはまだ未知の部分が多く、専門家でも見解が分かれています。いつ感染が収束するのか、感染してどの程度の後遺症が残るのかもわかっていません。世界中で辛抱強く地道に耐える我慢比べを強いられている現状の中で、ストレスに耐えられない人も現れています。

こうした状況の中で必要なのは、いつもよりも心身の疲れを感じたら、とにかく休む時間を多く取ることです。例えば、就寝時間を1時間早く、起床時間を1時間遅くして寝る時間を増やすとか。たとえ眠くなくても、ただベッドでゴロゴロするだけでいいんです。予定を詰め込まず、家事も多少手を抜いてもいいから、少しでも休む時間を増やします。

SNSで、ある女性が夕食に冷凍餃子を出したところ、夫が子どもに「これは手抜き」と言ったという旨の投稿があり、論争になりましたが、そのやり取りを見ていて、やっぱりみんな疲れてきているんだろうなと感じました。

夫に余裕がある時なら「おいしいよ」と言っているかもしれませんし、妻も疲れていなければ、SNSに投稿しなくても「それならあなた作ってよ」と言い返して済んでいたかもしれません。こういう時だからこそ、夫婦でいたわりあいたいものです。

本誌を読んでいるお父さん方は、妻と家事や育児を分担して、家族をとても大切にしている方々ばかりだと思います。

それでも、妻は知らないうちにたまったストレスで疲れているかもしれません。それに気づいたら、家事を代わるなど妻が肩の荷をおろせる時間を作ってあげて下さい。

もちろん、お父さん自身が疲れを感じた時は、無理せずに休むこと。家族だけではなく、自分をいたわる心も忘れないでほしいですね。

PROFILE

香山リカ RIKA KAYAMA


東京医科大卒。精神科医。豊富な臨床経験を活かして、現代人の心の問題を中心に、新聞や雑誌など様々なメディアで発言を続けている。著書に『ノンママという生き方 子のない女はダメですか?』(幻冬舎)、『50オトコはなぜ劣化したのか』(小学館)など。


文:具志堅浩二

FQ JAPAN VOL.56(2020年秋号)より転載

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