給付金上乗せの産休制度が実現したら!? 今こそ考えたい「パパが家族のためにできること」
2020/10/19
国の制度を使った男性の育休取得率は1割未満。しかし、企業独自の制度を利用している人は沢山いる。ただ休暇を取得しても仕方ない。本当に大切なのは取得した休暇に何をするかだ。NPO法人ファザーリング・ジャパン代表の安藤哲也さんが語る。
男性の育休取得率は1割未満
一喜一憂せず積み上げよう
厚生労働省が令和元年度雇用均等基本調査の結果を公表しました。この調査で注目してほしいのは育児休業取得者の男女による割合の違いです。女性83%に対して、男性は……わずか7.48%! 昨年の6.16%からは若干増えていますが1割にも達していません。
ちょっと驚くような数字ですが大丈夫。実はこれ、あくまで国の制度を使っている人が7%という話。企業独自の制度を利用している人は沢山いるのです。ここ5年ほどで大企業は独自の産休・育休制度を創設しています。一般的なのは5日間の休暇+土日を入れて一週間。その取得率は私の体感的には8割を越えています。
出産当日に休むのは当然として、退院直後にも、出生届を出したり、新しい家族を迎える準備をしたりするのもパパの仕事。なので最近は、出産後一週間は休む人が多数派で、92%のパパが傍観しているだけ、なんてことではありません。着実に時代は変わってきているのです。
男性の新たな産休制度で
より取得しやすくなる?
一方で、社会制度としては既に整っているのに、男性の育休取得率が漸増傾向でしかないのも事実です。その理由として、取得すると収入が減る、評価が下がる不安がある、などの極めて現実的なパパの悩みがあります。
そこで現在の制度を拡充して利用しやすくしよう、という考えのもと、男性の産休制度が議論されています。今年3月に話題になったように、国会議員のほか民間企業やファザーリング・ジャパン(FJ)のメンバーも議論に参加して、提言を出しました。産後4週間までを「パパ産後休業期間」と定めた新たな枠組みが提案されたのです。所得減が取得を阻む要因になっているため給付金の上乗せを求めたのが特徴。現状の給付率は休業前賃金や手当てなどの8割ですが、新制度では実質10割確保を目指しています。
大きな視点でみれば、それが少子化対策とか、第二子以降が産まれやすくなる、という社会課題の解決にも繋がります。いずれ国会でも議論されると予想していますので、皆さんも注目しておいてください。
コロナはチャンス!?
家族との時間を楽しもう
男性のために新しい産休制度を創設するのは良いことですが、本当に大切なのは取得した休暇に何をするか、です。法律用語だから「休業」という言葉は変えられませんが、ドイツで「親時間制度」と呼ばれているように、日本でも産休・育休を、「ママをケアする」「家事をする」などの「父親トレーニング期間」というイメージで広げたいと考えています。
というのも、コロナの影響で先行きが不透明になっています。無闇には外に出られない、という雰囲気はしばらく続くかもしれません。そんな今だからこそFJでは「家族と一緒にいる時間が増えた!」と捉えよう、と提案しています。家族が増えるとはどういうことなのか、自分は父親としてどうありたいのかを真剣に考えて欲しい。テレワークや在宅勤務が増えている今なら、産休・育休を取得しなくても、自分と、また家族と向き合う時間を幾らでも作れるはずです。
私自身、コロナの影響により家庭内で役割分担に変化があったので、今まで挑戦していなかった新しい料理を作ってみたり、子供の勉強をじっくり見たりと、家庭人としての成長を実感して、日々の暮らしを楽しんでいます。
コロナ禍によって、それまで目に見えていなかった家庭内の問題が露わになっています。労働環境と家庭環境が急激に変わったことが原因であることは共通していると思いますが、不安に押しつぶされてしまったり、育児・家事から逃げたりしているだけではいけません。
家にいる時間が増えるということは、考え方によっては家事や育児に挑戦するチャンスですし、夫婦関係が上手く行っていなかったなら、その修復を図っても良いでしょう(笑)。マイナスに捉えず、プラス思考で時間を活かす。その心持ちがパパには必要ではないでしょうか? どういう状況であれ、子供の前では笑っていたい。理想とする自分の姿とか、自分の軸をしっかり決める。今は「心の体幹」を鍛えるチャンスなのです。
PROFILE
安藤哲也(TETSUYA ANDO)
1962年生まれ。2男1女の父親。2006年、NPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ)を立ち上げ代表を務める。NPO法人タイガーマスク基金代表。厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進チーム顧問、内閣府・男女共同参画推進連携会議委員などその活動は多岐に渡る。新著は『「仕事も家庭も」世代の新・人生戦略「パパは大変」が「面白い!」に変わる本』(扶桑社)
Text >> REIJIRO KAWASHIMA
FQ JAPAN VOL.56(2020年秋号)より転載