日本初! 妊婦の通院をラクにするIoT型胎児モニターって?
2020/03/14
日本でも地域によっては産婦人科医が不在で、プレママは通院に大きな負担を強いられている。そんな負担を軽減し、少子化ストップに寄与しようと最新のテクノロジーを使った取り組みが始まった。妊娠、出産をめぐる状況を大きく変えるかもしれない動きを紹介しよう。
産婦人科医が不在の町で始動!
北海道の弟子屈町には産婦人科がなく、妊婦は70~80㎞離れた釧路赤十字病院や網走厚生病院まで1時間以上かけて通院している。これは弟子屈町に限ったことではなく、北海道全体の課題でもある。
この状況を改善しようと、北海道大学病院、釧路赤十字病院、網走厚生病院、弟子屈町内の摩周厚生病院、行政や民間事業者が連携して動き出したのが「ましゅうっこプロジェクト」だ。
プロジェクトで駆使されるのが、メロディ・インターナショナル株式会社が開発したIot型胎児モニター「分娩監視装置iCTG」とボーダレスビジョン株式会社が提供する医療用映像通信システム「キズナビジョン」。この二つを接続しインターネット回線で、摩周厚生病院から釧路赤十字病院や網走厚生病院にモニタリング情報を送信、検診を受けられるというものだ。
釧路や網走の病院に通っている弟子屈町内の疾病のない妊婦を対象とし、26週、30週、34週目の妊婦健診で運用が始まる。今後「どさんこプロジェクト」として、札幌医科大学、旭川医科大学と連携して全道へ拡大していくと共に、全国の同様の課題を抱える地域にも拡げていく予定だ。
不測の胎児死亡を回避!
分娩監視装置iCTGとは、自宅でも胎児の心拍やママのお腹の張り具合を測定できる機器。計測結果はBluetooth接続でスマートフォンやタブレットのアプリケーション内に表示され、医師が診断に活用することができる。小型で充電式のため、従来は病院内でしか計測出来なかった胎児の状態を、在宅や救急車内でも確認できるのだ。
また、周産期遠隔医療プラットフォーム「Melody i(メロディ・アイ)」によって、計測した結果をかかりつけ医師に送信でき、遠隔で医師から受診の推奨などアドバイスを得ることができる。
こうしたテクノロジーの登場はパパママの通院などの負担を減らすだけではなく、赤ちゃんにとっても大きなメリットがある。自宅で胎児の状態を把握することによって異常の早期発見につながり、胎児死亡といった不測の事態を回避することができるのだ。すでに、タイ・チェンマイでは、25ある全ての公立病院に導入され、母子死亡率の低減に貢献している。
だとすれば、こうしたシステムの有効性は産婦人科がない地域にとどまらない。近い将来、妊婦は誰でもiCTGのような機器を持ち、遠隔できめ細かい助言を受けられるようになるかもしれない。弟子屈町で始まったプロジェクトに注目していきたい。
DATA
Text:平井達也