貧困層と富裕層の子供に対して”平等な国”ってどこ? 大きな格差にユニセフが懸念
2020/02/03
ユニセフ(国連児童基金)は、世界の最貧困層の10代の少女の3人に1人が学校に一度も行っていないことを指摘。その原因は貧困層と富裕層の間にある「教育格差」が原因と教育予算配分に警鐘を鳴らした。
差別やインフラ未整備…子供たちが教育を受けられない壁
ロンドンの世界教育フォーラム(1月19~22日)で教育大臣が一堂に会し、ダボスの世界経済フォーラム年次総会(1月21~24日)で指導者が招集された。その中でユニセフが発表した報告書に、世界の貧困層の教育の問題についての記述があった。
それは、最も貧しい子供たちが教育機会を失い、最貧困層の10代の少女の3人に一人が学校に一度も通ったことがないことが指摘されていた。
最も貧しい子供たちが質の高い教育を受けられない原因として、ジェンダーや障がい、民族または教育言語による差別、学校までの距離、インフラの未整備などが挙げられた。教育機会を失うということは貧困の永続を招き、世界的な教育危機につながる恐れがある。
教育予算が富裕層へ…教育の公的支出に大きな格差
本報告書では、最貧困層の子供たちへの教育資金が不足しているために、教育環境が悪化していると指摘している。
『教育危機:最貧困層の子供たちのための教育資金調達の緊急の必要性』では、富裕層への偏った教育予算配分を指摘。
資金が限定的・不公平に分配されると1クラスの定員が増えてしまい、教師の研修、教材、学校のインフラ整備などが不十分になる。これは子供たちへの学習に影響を及ぼすとしている。
アフリカ10か国がワースト1
教育支出の格差を国ごとに調査した結果、最も格差が大きかったのがアフリカ10か国であり、最貧困層の4倍の資金が最富裕層に割り当てられていた。
また、ギニアや中央アフリカ共和国は学校に通えない子供たちの割合が最も多く、最富裕層と最貧困層の教育資金格差がそれぞれ9倍と6倍となっている。
調査対象国のうち、最富裕層と最貧困層への教育資金が均等に配分されているのが、バルバドス、デンマーク、アイルランド、ノルウェー、スウェーデンのみであった。
ユニセフの報告書では各国政府に指針
①国内の予算配分の範囲内で、少なくとも20%の教育資金が、最貧困層世帯の子供たちに投じられるよう資金を配分する。
②就学前教育や初等教育などより初期段階の教育のための公的資金を優先し、それらの教育がいきわたってから徐々に高等教育への配分を増やす。
③就学前教育は学校教育のあらゆる段階の土台であることから、すべての子供に少なくとも1年間の就学前教育を提供する。就学前教育を修了した子供たちは、その後の学びの質が高く、学校にとどまり大人になったときに経済や社会に貢献する可能性が高い。国の教育予算の少なくとも10%を割り当てることは教育の普遍的な提供を達成する助けとなる。
子供たちの教育に賢明かつ公平に投資を
このように、富裕層への偏った教育予算配分をなくし、多くの子供たちが教育を受けれる環境整備をすることが、世界の貧困の連鎖を止めるカギとなっている。
ユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォアはこのように述べている。
「私たちは今、重要な岐路に立っている。教育への公的支出が富裕層に偏っている限りは、最貧困層が貧困から抜け出し世界で競争するために必要となるスキルを学び、自国に貢献することはないだろう。子供たちへ教育を公平に行き渡らせれば、子供たちが自ら機会を作り出すスキルを得ることができ、貧困から救う可能性を最大限に引き出すことができるのだ。
DATA
Text:sarabaspica