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時事・コラム

オフィス飲料で生産性が変わる?「仕事でも紅茶派」が増える予感

2019年4月にいよいよ「働き方改革法案」が施行された。長時間労働が規制される中、企業は限られた時間で高いパフォーマンスを発揮しなくてはならない。そんな中、労働生産性向上のためにオフィス飲料の見直しが注目されている。



日本人の労働生産性は低い

日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2018」の報告によると、日本人の生産性は先進国の中でも低く、1時間あたりに産み出す労働成果(生産性)は4,733円、アメリカの2/3であり、先進7か国(G7)の中で最下位、OECD加盟36カ国中20位との結果だ。

企業の人材育成・組織づくりに詳しい株式会社人材研究所の曽和さんによると、令和時代の生産性向上のトレンドのひとつに、「仕事の際に飲む飲料の見直し」があげられるという。

社員の健康状態を整えると
生産性が向上する

株式会社人材研究所の曽和氏によると長時間労働対策や子育て支援などの視点から、リモートワークのためのITツールの発展・拡散がめざましいが、近年先進的な働き方改革を進める企業が注目しているのが、“社員の健康状態を整えて生産性を向上する”ことだという。

生産性向上の努力には、仕事時間や組織の仕組みの改善、ITツールの導入による作業効率化など、働く人自身が自分で意識できるものがある。しかし、短時間で創造性の高い仕事をすることが生産性に直結すると考えると、もっとも顕著に影響を与えるのは社員の体調のコンディション管理だ。

先進的な企業の取り組みとして、食べ物、飲み物、休養・休憩などに関して指導する企業が出現してきているが、本年特に注目すべきは、オフィスでの常飲飲料まで見直す企業が出てきていることだという。

生産性向上トレンドの1つは
「仕事中に何を飲むか」

なんとなく眠気醒ましにコーヒーやエナジードリンクを立て続けに飲む……そんな飲料習慣を持つビジネスパーソンも多い。しかし、カフェインの過剰摂取は疲労につながる恐れがある。

精神科医で特定非営利活動法人日本ブレインヘルス協会理事長でもある古賀良彦杏林大学名誉教授の研究では、オフィスで常飲されるコーヒーや紅茶等の飲料の中では、紅茶が仕事をする際に重要なワーキングメモリー(ある仕事をこなす上で、脳にたくわえられた記憶のなかから必要なものを的確に素早く選び出し、判断や行動の遂行に役立てる能力)の能力発揮にもっとも寄与するという意外な結果も出ている。オフィスでの常飲飲料と生産性との相関関係が示唆されているのだ。

出典:特定非営利活動法人 日本ブレインヘルス協会 紅茶が作業の生産性に与える影響の精神生理学的検証試験

働き方改革の先駆、
三菱地所でも社員に紅茶を配布

このような結果を受け、社員の生産性向上に積極的に取り組む三菱地所株式会社などの大手企業では、適度なカフェインと香りでリラックス効果も期待できる“紅茶”を社員に飲用させる検証が始まっている。

これまでにも執務スペースレイアウトの改革、仮眠室の設置など、常に最先端の働き方改革施策を導入してきたが、2019年3月からの一定期間、社員への紅茶の配布を開始するとともに、社員の健康状態や生産性への影響の測定を開始した。希望する社員に一定期間、就業中に紅茶を飲用させ、飲用前後の心拍数を測定することで自律神経への影響を検証している。

「紅茶が、自律神経へ好影響を与える可能性があるという話を聞き、一定期間、紅茶を社員に配布するとともに、実際にどのような効果が現れるか社員を対象に検証。この機会に、社員が仕事中の飲み物が身体にどのような影響を及ぼすかについて意識し、仕事の作業内容や体調を鑑みて、リラックスしたり集中したりするための飲料選びという視点を持つことを期待している。(三菱地所株式会社 人事部 給与・厚生 働き方改革推進担当 根神 剛氏コメント)」

「新しい働き方」を推進する
コワーキングスペースでも注目

新進のコワーキングスペース 「COHSA(コーサ)」 では、こだわりのオフィス飲料を取りそろえ、どんな気分で仕事をしたいかによって選ぶよう推奨している。

渋谷区にあるCOHSAは、異業種のビジネスパーソンが「交差」し、新たなビジネスを創造したり、リラックスした環境でオフサイトミーティングなどを行ったりできるコワーキングスペースだ。1階フロアのコーヒーショップ「PELLS COFFEE STAND」では、本格的なコーヒーや紅茶を提供している。

COHSA代表の山崎登氏はデンマークのオフィス環境を見学した際、ビジネスマンが対話する際に常に香りのよいコーヒーや紅茶を飲んでいるのを見て、その飲料が彼らのポジティブな状態での就業態度に直結していると感じたという。COHSAでは嗜好性飲料と働き方の関係に注目し、本格的なスタンドが導入、紅茶も積極的に提供されている。

「打ち合わせをするときも、1人で集中するときも、自分の気分に合った飲み物の香りや美味しさ、美味しさを楽しみながら仕事をすることが、仕事の生産性に繋がるというCOHSAの想いに共感し、PELLSのスタンドを出している。複数時間つづけて働かれる方には、1杯目はお気に入りのコーヒーで、2杯目はスッキリ感を味わえる紅茶といった、より快く動ける飲み方なども提案。最近は紅茶を飲む方も増え、PELLSでは複数種の紅茶やソイを使ったチャイも提供している。(PELLS COFFEE STAND代表 橋本雄大氏コメント)」

このように、摂取した飲み物で仕事の効率アップ、生産性を向上することにビジネスの現場も気づき始めている。仕事を効率的に終わらせて育児に積極参加するためにも、職場での飲み物を見直してみることはおすすめだ。


PROFILE

株式会社人材研究所 代表取締役 曽和利光氏
京都大学教育学部 教育心理学科卒。リクルートで人事採用部門ゼネラルマネージャーとして活動したのち、株式会社オープンハウス、ライフネット生命保険株 式会社など多種の業界で人事を担当。「組織」や「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法が特徴。2011 年に株式会社 人材研究所を設立。企業の人事部へ の指南を行うと同時に、2 万人を越える面接を行った経験から、働く人への働き 方指南を各種メディアで展開。

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