モンテッソーリ教育のカギは、言葉を使わずゆっくり”して見せる”こと
2008/03/01
子供が自ら成長・発展していく自然な流れを助けるのが本来の大人の役目。こうした理念に基づいた「モンテッソーリ教育」の具体的な行動として、「子供に対して親がするべきこと」とは?
「自然の法則」に基づく
子供の自主性を育む教育法
モンテッソーリ教育は、およそ100年前、教育の専門家マリア・モンテッソーリが編み出した教育法。一言ではいい難いが、しいていえば「子供が自ら発展していく力を助ける教育」といえる。
人間を含むこの世のすべての生物は、感情などの精神面から脳・神経・筋肉などの肉体面まで、「自然の法則」に沿って成長する。
医師の資格も持つマリア・モンテッソーリは、こうした生理学的な面から子供の観察を続けるうち、人間の子供にも「敏感期」があることを発見する。これはもともと生物学用語で、「生物の幼少期に現れる、特定の対象への強い感受性」のこと。オランダの生物学者の実験から、ある種の蝶は幼虫の一時期に光への強い感受性から太陽めがけて木を登り、その到達点には、その時期唯一の餌となる柔らかい新芽が発見された。その後、食べられる餌の種類が増えた頃、突然この感受性は消え、別の対象への感受性が生まれたという。
この「敏感期」こそが、モンテッソーリ教育の根幹をなすキーワードとなる。「さまざまな敏感期ごとの特有の動きを妨げないこと」が子供の心身の発達を最大限に高め、自主性を育み、ひいては将来の人格形成にまで影響を与えると考えるからだ。
これを踏まえたうえで、親が具体的にすべきことを紹介していく。
「敏感期」を知っておけば
子供の仕事が見えてくる
子供への接し方の最初にして最大の一歩は、「子供を見ること」だ。「そんなことはとっくに」と思った方。それは敏感期を知ったうえで、だろうか? これついてモンテッソーリ教育の第一人者である相良敦子氏は、次のように語る。
「無意味に、あるいは、わがまま・いたずらにも見える敏感期の行動も、”自然が与えた大切な宿題“を子供が真剣にやっているだけのこと。敏感期を知って初めて、”本当に子供を見る準備“ができたといえます」。
たまたま普段と違う席に座ったら、「違う! 違う!」と泣き叫ぶ。そんな、大人にはどうでもいいことに頑固にこだわる、「秩序の敏感期」と呼ばれる時期が子供にはある。
「1〜3歳の頃、物の位置や順序が”いつもと同じであること“に固執する秩序感という感受性が生まれます。位置や順序をいつも通りに戻すだけで、それまでの大騒ぎがピタッと治まることも多いです」(相良氏)。
また「運動の敏感期」では、机の上の物を落とす、壁に貼った物をはがすなど、困ったケースも少なくないが、それを止めるのは正しくない。「こうした行動は、将来必要な動きのための筋肉の鍛錬。いわば”子供が今まさにやるべき仕事“なんです」(相良氏)。
とはいえ、放っておいたら家の中は惨憺たる状況。それ以上に包丁やハサミなどを手にした日には……。この対策ついては後述する「教具」についての項をご参照願いたい。
さらに敏感期には、同じ動きを集中して繰り返すという特徴がある。そのうえで、その終わりも唐突に来る。その行動の敏感期が終わったからだ。そうして子供は、また次の敏感期へと移っていく。