香山リカ先生に聞く! 「実家依存」「孫疲れ」問題
2016/03/11
実家に頼らないと子育てが成り立たない家庭は要注意! 両親がいつまでも若いわけじゃないし、ちょっとした出来事がきっかけで生活が破たんしてしまうリスクもある。そこで今回は、精神科医の香山先生に「依存」をテーマに強い夫婦をつくるヒントをうかがった。
「孫疲れ」だけじゃない
実家依存のリスク
晩婚化に比例して、子供の祖父母の年齢も上がっているそうです。孫の世話が体力的にも経済的にも大変で、密かに「孫疲れ」が広がっていることがニュースにもなりました。それは確かに大変なことだと思います。でも、私のまわりを見渡す限りではむしろ、まだまだ仕事をバリバリしていて若々しく、孫と歩いていると母子と間違えられる「美魔女」のような祖母もいるんですよ。
それでは祖父母は元気ならいいかといったら、意外とそうでもないようです。なかには孫と一緒に留学したりして「理想の子育てを孫で実現する!」くらいの勢いで、家庭の中で主導権を握ってしまっている人もいます。「あなたたちは頼りないから、子育ては私たちに任せなさい!」とばかりに教育に介入している祖父母も少なくないかもしれませんね。
そうなると子供がどちらの言葉を信じたらいいのかわからなくなってしまいそうです。
実家が近いと色々とラクかもしれません。そのお陰で奥さんのストレスが軽減されているなら、実家への依存を心配している旦那さんも「まあいいか」って思いますよね。国は3世代同居を勧めているし、最初から祖父母の経済力を見込んでいる私立の学校などもあるし、実家に依存しやすい環境になっているとは思います。
でもね、今は元気な実家の両親だって、年々老いていくわけじゃないですか。実家の両親ありきで家庭を回し続けたらいつか破たんしてしまいますよ。
晩婚化が進んだことで、60代で定年退職した後に孫ができる人が増えている。そのため、孫をかわいいとは思いながらも、体力・気力の衰えから、孫の世話で疲弊してしまう祖父母世代が増加。さらに、肉体的な負担だけでなく、経済的な負担も増すことで、孫の世話に大きなストレスを感じてしまうことに。親に子供を預けるときにはぜひとも避けたい事態だ。
まずは夫婦の自立が先!
話はそれから
関係なさそうに思えるかもしれないけれど、2人目の子供をどうするか、といった問題も、根っこの部分で共通するキーワードがあります。それは「自立」です。
親戚やママ友からの「2人目の予定は?」というプレッシャーを感じて、「子供1人じゃダメなのかしら」と思うのは、ちょっとまわりの声に左右されすぎですよね。かといって、「仕事やお金の問題があるから仕方がないよね」って話していても、実は奥さんは生活水準を落としてでも子供が欲しいと考えているかもしれないですよ。
私は夫婦が「どんな家庭を作りたいと考えているのか」が大事だと考えています。自分たちがどうしたいのか、夫婦の意思をハッキリさせることが先。それが「自立する」ということです。そうすれば、よそのご家庭に2人目のお子さんができたからといって焦ることも、2人目が欲しいのに我慢をするようなことも少なくなると思います。
「実家依存」や2人目をどうするかといった問題に限らずですが、「このままでいいのかな?」と感じる問題があれば、奥さんとじっくり話して本音を聞きだしてあげてください。そうして、お互いの気持ちを十分に理解しあった上で、自立した夫婦として、「自分たちはどうありたいのか」を考えてみるといいかもしれませんね。
香山リカ RIKA KAYAMA東京医科大卒。精神科医。豊富な臨床経験を活かして、現代人の心の問題を中心に、新聞や雑誌など様々なメディアで発言を続けている。
Text » TAKESHI TOYAMA
FQ JAPAN VOL.37(2015-16年冬号)より転載