忙しい父親たちに送る”救い”の1冊
2015/02/03
「育児と仕事の両立ができない」……そんなパパたちを勇気付ける「頑張る父親に送る"救い"の1冊」。今回紹介するのはこの2冊!
たった3分間が、
かけがえのないひとときに
『忙しいビジネスマンのための3分間育児』
●おおたとしまさ ●株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン
「仕事が忙しく、子どもと関わる時間が持てない」、「育児も結構やっているつもりなのに、なかなか妻に認めてもらえない」……一家を支えるべく、汗水垂らして働くそんなパパたちに送るは「サステナブル育児」。子どもが「パパー!」と無邪気に抱きついてくるのはせいぜい6歳くらいまで。人生の1%程度にしか満たない奇跡のような子供との時間を、いかにして過ごすべきか育児ジャーナリストのおおたとしまさが徹底指南する。
働くパパといっても十人十色。それぞれのタイプを診断するパパ分析にはじまり、子供が喜ぶ時短アイディア遊び、また単身赴任といった遠くで働くパパ向けの育児ノウハウまで、パパについてのテーマが多角的に紹介されている。忙しいビジネスマンが子供と幸せな時間を毎日3分間過ごせるようになる、まさに奇跡のような一冊。
不器用な父親が息子に与えた
精一杯の愛情
『とんび』
●重松清 ●角川文庫
もう1冊、編集部がオススメするのがこの小説。2013年にテレビドラマ化もされており、ご視聴されたパパ読者も多いのではないだろうか。この「とんび」だが、舞台は高度経済成長期真只中の1960年代。広島で運送会社に勤務する28歳のヤスさんという男が、不器用なりに男手一つで息子を育て上げていく様を描いている。不慮の事故により最愛の妻を亡くしたヤスさんの前に残されたのはまだ幼いわが子、アキラのみ。学も才能も無く、酒とタバコが大好きで豪快奔放なヤスさんは、次々発生する育児トラブルや、成長につれて自我が強まっていくアキラとの衝突に苦悩する日々を送る。しかし、それでも、ただひたすら真っ直ぐに息子に向き合おうとするヤスさんの30年間は、父子のゆるぎない関係について、時代を超えて改めて教えてくれる。「とんびが鷹を産む」とまで周囲に言わしめた優秀な息子・アキラは、やがて進学のために上京する。ヤスさんは、そんな息子の就職や結婚といった転機に翻弄されていく。
幼少期、青年期を経て、多感な時期に差し掛かっていく息子との距離感が上手く取れず、ぶっきらぼうで荒っぽい言葉でしか思いを伝えることが出来ないヤスさん。そんな2人を近くで見守っているのが、近所の住人たちだ。彼らが織り成す、どこかおかしな掛け合いもまた見どころだ。重松清ならではの繊細な描写や、幼き日々の情景を思い起こさせるような、登場人物たちのあたたかな言葉は、読む者の心にやさしく響くことだろう。この時代だからこそ読んでほしい、美しく家族愛に満ちた物語である。
Text >> KEI NAITO