インドでも変わりつつある父親の育児参加
2014/10/19
人口12億を超すインド。インド大使館勤務のエリート外交官プニート・ガイさんにインドの子育て事情を聞いた。
人口12億を超すインド。
出生率が若干下降傾向にはあるものの、人口増加はとどまるところを知らない。少子化大国日本とは状況もだいぶ違うだろう……。
インド大使館勤務のエリート外交官プニート・ガイさんにインドの子育て事情を聞いた。
産後6ヶ月の間なら
14日間の育児休業が可能な
「パタニティ・リーブ」制度
「インドの父親が特別なんてことはありません。普遍的な真理があります。それは、インドの父親も家族が大好きだということです。子供たちがそれぞれ自分の分野でベストを尽くしてほしいし、人生を楽しんでほしいし、いい人間になってほしいと願っています」
とインド大使館勤務のプニート・ガイさん。
「子育ては夫婦で平等にシェアするものだとインドの男性は考えています」とも。
インドには父親の育児休業制度「パタニティ・リーブ」がある。産後6ヶ月間の間に14日間の育児休業を取得できる。そして多くのインド人がこれを行使するという。「父親としての責任でしょう」とガイさん。
ちなみに、母親の場合は720日間の育児休業を取得できる仕組みになっている。
少子化対策は必要ないはずだが、そういう意味ではなく、男女ともにワーク・ライフ・バランスを保つための制度として整備されているのだ。ガイさんの妻は仕事をしている。最近はインドでも共働き家庭が多いという。
ガイさんには1996年生まれの娘と2002年生まれの息子がいる。娘が生まれたときにはまだ「パタニティ・リーブ」の制度はなかった。しかしおむつ替えなどは積極的に行い、息子が生まれたときには「パタニティ・リーブ」を利用して、妻とともに育児をしていたそう。
インド式数学で知られるように、インドは教育大国でもある。モンテッソーリ教育法を取り入れた幼稚園が人気だとか。6歳から14歳は無償でハイレベルな教育が受けられる。英語教育も熱心で、多くのインド人が小学校で英語をマスターしてしまう。
「日本に来て驚いたのは英会話学校の多さです。みんな必死なんですね」とガイさんは笑う。
「日本の父親は少し前まではあまり子育てに関わらず、厳しいイメージがあった。しかし最近は男性も育児に積極的に関わるような文化が広まりつつあるし、父親のイメージもソフトなものになってきた」と説明する。
するとガイさん、「インドも同じです。昔の父親は子供が素朴な疑問を質問してもまともに答えてさえくれない人が多かった。無口で厳しいというのが父親のイメージでした。でも、今は子供の教育のため、父親も積極的に子育てに関わるようになりました。時代は変わったんです。でも、『勉強しなさい!』は今でもよく言いますね。日本も同じですよね」と笑う。
Text » TOSHIMASA OOTA
※FQ JAPAN VOL.25(2012年冬号)より転載