フィンランドからの贈り物「育児パッケージ」
生まれて初めてのバースデープレゼントは自治体から?
2014/09/06
フィンランドの子育て支援システム「ネウボラ」の展示会が、9月3日から始まった。 記念すべき第1回目は世田谷区で行われ、駐日フィンランド大使館のミツコ・コイヴマー参事官や世田谷区の保坂区長らによるトークセッションが行われるなど盛り上がりを見せた。
去る9月3日、東京世田谷にある昭和女子大学学園本部館大会議室で「ネウボラ・フォーラム」が開催された。これは、「NPO法人ここよみ」や「一般財団法人こども未来財団」、「駐日フィンランド大使館」らが主催するイベントで、フィンランド特有の子育て制度を広く知ってもらうために開催されたもの。当日はフィンランド大使館のミッコ・コイヴマー参事官や、世田谷区の保坂区長らによるフィンランドの子育て支援事情に関する公演やトークセッションが行われ、来場者は熱心に耳を傾けていた。また今回、会場近くの三軒茶屋キャロットタワーでは、「ネウボラ・育児パッケージ展」も同時開催。今後は、日本の子育て事情を見直す機会をより多くの人に提供することを目的に、全国を巡回する予定とのことだ。
さて、ここで先ほどから登場している「ネウボラ(neuvola)」という言葉、一体何のことかおわかりだろうか? 実はこれ、「アドバイス(neuvo)」する「場所(la)」という意味のフィンランド語で、妊娠してから子供が小学校に入学するまで国によるサポートを受けられるという、フィンランド特有の制度のことを指す。
フィンランドでは、「ネウボラおばさん」と呼ばれるかかりつけの保健師が存在して、家族全体の健康サポート、母子に対する定期検診、家庭訪問、ワクチン注射や父親の育児参加推進などがすべて無償で行ってくれる。この制度のおかげで、フィンランドは、セーブ・ザ・チルドレンの調査による「お母さんにやさしい国ランキング」において、2年連続178カ国中1位にも輝いているのだ。
またこの「ネウボラ」は、赤ちゃんを迎える家庭に母親手当として「育児パッケージ」が支給されるのも大きな特徴。これは、赤ちゃんの衣類やケア用品など約50点のアイテムが入ったボックスで、例えば寝袋、オーバーオール、肌着、よだれかけ、バスタオルやおもちゃ……など、育児において必要な製品がぎっちり詰められたもの。しかも中身は、受け取った両親からの要望や様々なメーカーによるコンペなどによって毎年改良されており、例えば、街で遊んでいる子供達が身につけている物(つまりは、育児パッケージの内容)を見れば、どの年代かをすぐに判断できるほどで、親同士の一体感を生むのにも一役買っているのだとか。パッケージを受け取らずに、現金支給(140ユーロ)を希望することもできるのだが、ほとんどの家庭は受け取ることを選択しているという。実は日本でも、フィンランドにならってこの「ネウボラ」の導入を検討している市町村があるそうだ。
今回のイベントの主催者である「NPO法人ここよみ」と「一般財団法人こども未来財団」は、少子高齢化現象を背景に、子育て支援や充実した社会環境づくりを推進するために設立、その活動の一貫として今回の展示会を企画したとのこと。今後は、家族に対する手厚いケアを、社会を全体で取り組める世の中にできるよう、引き続きイベントを開催していくそうだ。フィンランドでは、女性が出産後子供が3歳になるまで在宅で子育てをし、その後職場に復帰できるという制度もあり、国の労働力の44%を女性が占めている。内閣も40%が女性大臣。父親についても、子育てを促進するために「父親休業」の制度が整えられており、利用者は8割を越えているという。「母親は家事・子育て、父親は仕事」といったようなステレオタイプを持たず、夫婦が協力して家事・子育てを行うことが当たり前となっているフィンランドの家庭……我々日本人も見習うべきところはたくさんあるだろう。現在、子育て支援を目的とするイベントは数多く行われているが、ちょっと視野を広
げて、今回のように子育て先進国のユニークな制度などに目を向けてみるのも、大切なことではないだろうか。
(2014.09.06up)
Text>>RISA KURODA