【眼科医監修】「目にしみない」は大丈夫!? ベビーソープやシャンプーが赤ちゃんの目に入ったら?
2024/09/11
赤ちゃんをお風呂に入れる際、ベビーソープやシャンプーが目に入ってしまったらどうすればいいのだろうか。「目にしみない」商品も増えているが、眼科医おすすめの選び方とは? 赤ちゃんの目を守る方法をまとめた。
1.もし赤ちゃんの目にベビーソープ・シャンプーが入ったら?
2.ベビーソープ・シャンプーが目に入って赤ちゃんが大泣き! 目に害はある?
3.眼科医が勧めるベビーソープ・シャンプーの選び方とは?
4.ベビーソープ・シャンプーが目に入ってしまったときの正しい対処法
5.赤ちゃんの目に入ると本当に危険な成分とは?
6.ベビーソープ・シャンプーが赤ちゃんの目に入るのを防ぐおすすめの方法3つ
7.赤ちゃんの目を守るための3つの注意点
8.まとめ:赤ちゃんの目を健やかに保つために
もし赤ちゃんの目にベビーソープ・シャンプーが入ったら?
お風呂は赤ちゃんとの大切なスキンシップの時間だが、ベビーソープやシャンプーが目に入ってしまったらどうすればいいのだろうか。
また、最近は「目にしみない」を訴求する商品も増えているが、しみないからといって、目に入っても大丈夫なのだろうか。
本記事では、目の健康に関する啓蒙活動に取り組む『いわみ眼科』院長の岩見久司先生の助言をもとに、「赤ちゃんの目を守る方法」についてまとめた。
教えてくれた人
医療法人社団久視会
いわみ眼科 院長 岩見久司先生
医学博士/眼科専門医/兵庫医科大学非常勤講師
大阪市立大学医学部卒業。1日100人を超す外来治療を行いながら、小児近視治療にも積極的に取り組む。また、若手医師の教育や医師・医療関係者向けの講演も頻繁に行っている。令和5年度より、「100歳まで見える目」をたくさんの人が持てるように啓蒙活動を展開。 高校生・小学生の3人の子どもの父親でもある。
ベビーソープ・シャンプーが目に入って赤ちゃんが大泣き! 目に害はある?
目は人間にとって重要な器官。大切に守ってあげたいものだ。目にベビーソープやベビーシャンプーが入ると、赤ちゃんや子どもは大泣きしてしまうので、ますます心配になる。
ベビーソープやベビーシャンプーが目に入ることには、どんなリスクがあるのだろうか。眼科医の岩見久司先生に聞いてみた。
「ベビー向けに関わらず、一般的なボディソープやシャンプーは、『人の身体に影響の少ない』界面活性剤でできています。これらは多少目に入ってしみても、健康面で大きなトラブルはありません」。
ベビーソープやベビーシャンプーが目に入っても、さほど健康問題にはならないという。ちょっと意外な回答だ。
「ただ、もちろん入ったままで大丈夫なわけではなく、目の刺激や痛みにはなりますし、目に傷がついていた場合は充血したり、アレルギーが出る可能性もあります。なるべく目に入らない工夫をし、入ったら洗い流す習慣をつけましょう」。
眼科医が勧めるベビーソープ・シャンプーの選び方とは?
最近は「目にしみにくい」ことを謳い文句にしたベビーソープやベビーシャンプーも出ている。これはどのような成分になっているのだろうか。
「目へのしみやすさは、界面活性剤の種類によります。石鹸は目にしみやすい面があります。一方、最近増えている『目にしみにくい』ベビーソープやベビーシャンプーは、アミノ酸系の『両性界面活性剤』というものを使うことで、比較的目にしみにくくしているのでしょう」。
この両性界面活性剤は、脂肪酸とアミノ酸を混ぜた構造になっていて、身体に入っても刺激が起きにくい。
「ただ、先ほどもお伝えした通り、目のトラブルやアレルギーの原因になる可能性もあるので、どんな成分でも目に入れない前提で洗うのが大切です。
また、目にしみないようにすると、その分洗浄力が落ちるという面もあります。乾燥が心配という場合もあるかと思いますが、赤ちゃんの髪や肌は汗や皮脂がたくさん出るので、しっかり洗えていないと逆に肌トラブルの原因になってしまうこともあります」。
こうしたことを踏まえて、眼科医の観点からおすすめのベビーソープやベビーシャンプーの選び方を岩見先生に聞いた。
「パパ・ママが沐浴に慣れていなくて心配という場合は、『目にしみにくい』ものを選ぶのもいいでしょう。ただ、慣れてきたら、『その赤ちゃんの髪や身体のべたつき感がしっかり取れるか』を判断基準に選んでいいと思います。赤ちゃんの汗や皮脂の量は体質によっても違いますから、よく見てあげましょう」。
刺激の強さと洗浄力がトレードオフなのは納得できる。「目にしみる・しみない」ではなく、そもそも目に入らないようにする前提で洗ってあげるのはもちろん、「洗う」という本来の目的に合致したものを選ぶのが基本と考えてよさそうだ。
「最近は、少しでも赤ちゃんに良いものをと調べすぎて、情報過多になるパパ・ママもいるように思います。でも、イメージ的に身体に良さそうな成分を謳っていても、私たち医師から見ると明確なエビデンスがない商品もよく見かけます。
いろいろな成分が入ったボディソープやシャンプーを使うと、もしもアレルギーや中毒症状が出たときに、何が原因なのか分かりにくくなるというリスクも。あまり神経質にならず、なるべくシンプルなものを選ぶことがおすすめです」。
ベビーソープ・シャンプーが目に入ってしまったときの正しい対処法
では、万一目に入ってしまった時は、どう行動するのが正解なのだろうか。
岩見先生によると、「ベビーソープやベビーシャンプーなら、30秒から1分間、水で洗い流す」だそうだ。水がかかると当然赤ちゃんは目をつぶるが、そのまま洗ってタオルで拭き、その後目をしっかり開けられたら痛みが治まった証拠なので、まずは安心していい。
ただし、もしも長時間目が開けられなかったり、充血が治まらなかったら、目に傷がついている可能性もあるので眼科を受診しよう。また、慌てて洗いすぎたりこすってしまうと、まぶたや目の周囲が腫れてしまうこともあるので注意が必要だ。
赤ちゃんの目に入ると本当に危険な成分とは?
ベビーシャンプーやベビーソープは健康への害は強くないということだったが、日常のなかで、赤ちゃんの目に入らないよう本当に気をつけるべきなのはどんなものだろうか。
岩見先生によると、身体ではなく食器を洗うための洗剤や、お風呂やトイレ掃除に使う塩素系洗剤には要注意だという。
「万一こうした洗剤類が目に入ってしまった際は、すぐにお風呂で、5~10分ほどシャワーを浴びせ続けて洗い流してください。ぐずったり泣いてしまうかもしれませんが、しみこんでしまうとかなり危険なため、途中で止めてはいけません」。
もちろん、誤飲も危険。これらのものを赤ちゃんの手の届くところに置かないよう注意しよう。
また、これらは大人の目にも有害なので、特に塩素系洗剤をお風呂やトイレ掃除で使うときはゴーグルを着用することがおすすめだ。
ベビーソープ・シャンプーが赤ちゃんの目に入るのを防ぐおすすめの方法3つ
健康面で大きな影響がないとはいえ、「低刺激」なものでも「無害」ではないため、なるべく入らないよう注意するに越したことはない。
3児の父親でもある岩見先生おすすめの「目に入りにくい洗い方」を3つ紹介しよう。
①あおむけに寝かせて洗う
まずは基本的だが、赤ちゃんをあおむけに寝かせて洗うこと。しっかり首をホールドして頭を洗い、最後に両耳を抑えてゆっくり流してあげると、目にも耳にも水が入りにくい。
②シャンプーハットを使う
赤ちゃんが動いてしまいがちなら、シャンプーハットを使うこともおすすめ。ただし、大きくなっても使い続けているとなかなか手放せなくなる可能性もあるため、どこかで卒業できるようにすることも必要だ。
③パパがお風呂に入れるのを担当する
女性の手は男性に比べると小さく、かなり重さもある赤ちゃんの頭を片手で支えて洗うのは至難の技だ。産後の女性は授乳などで赤ちゃんを抱っこしなければならない場面も多く、腱鞘炎にもなりやすい。しっかり首をホールドしてあげるためにも、赤ちゃんのお風呂はなるべくパパが担当してあげることもおすすめだ。
赤ちゃんの目を守るための3つの注意点
岩見先生によると、赤ちゃんの目にとって他にも注意すべきことがあるという。ここでは、パパ・ママが気をつけるべき3つの注意ポイントを紹介しよう。
1.物理的な刺激から目を守る対策を
眼科に駆け込む赤ちゃんの目の事故で多いのは、きょうだいが物を振り回して目に当たってしまうというケースだという。
「実際にあった事故として、ソフトビニール人形が当たって目を保護している膜が剥けてしまったり、小枝が当たって眼球が傷ついてしまったケースもあります」と岩見先生。
また、箸などの尖ったものや机の角なども要注意。そういった事故が起こりうると考え、角にカバーをつけたり、ベビーガードで近づけなくするなどの対策をしておこう。
2.スマホ・タブレットは控えめにし、日光を浴びる
「ベビーカーなどにスマホやタブレットを付けているパパ・ママをときどき見ますが、確実に目が悪くなるのでおすすめしません」と岩見先生。近くを長く見すぎると、目は近くにピントがあったままになり、それが近視につながってしまうという。見せても15~20分で止める習慣を。
また、1日に1度は外に連れ出し、遠くの景色を見せる機会を作るのも、近視予防になるという。「さらに最近の研究では、太陽の光を浴びることで目に良い影響があり、近視を予防したり、近視の進行を遅らせることができるとわかってきています」。
お散歩や外遊びは、遠くを見るというだけでなく、太陽の光を浴びるという点でも目に良さそうだ。
3.赤ちゃんの目のこんな症状には要注意!
●しょっちゅう目をこする
繰り返し目をこする、という症状が「チック症」ではないかと心配され、病院に連れて来られる赤ちゃんもいるという。チック症とは、ストレスなどが原因で、本人の意思に関係なくまばたきや咳払いを繰り返す症状だ。
しかし、実はその原因がアレルギー性結膜炎という場合があるという。赤ちゃんや小さい子どもは、まだ「かゆい」という感覚がよく分かっておらず、ただ「何か目を触りたい」という感覚しかない。そのため同じ動作を繰り返してしまい、チック症と勘違いされやすいのだ。
●目やにが出る
もし、白い糸を引くような目やにや絡まる目やにが出ている場合も、アレルギー性結膜炎を疑って眼科にいこう。
また、鼻風邪をひくと、高確率で細菌性結膜炎を起こして目やにが出やすくなるという。風邪の時は目の様子も観察しよう。
●ずっと涙目
生まれつきずっと涙目になっているように見える場合、鼻の奥にある、涙の通り道の出口である部分が詰まってしまう「先天性鼻涙管閉塞」という症状の可能性がある。まずは眼科の受診を。
●両目の光が当たっている場所がずれている
赤ちゃんは寄り目っぽく見えやすい傾向があるが、もし両目に光が当たっている場所がずれていると感じたら、斜視の可能性がある。斜視の症状には、稀に網膜細胞腫、悪性腫瘍などが隠れている場合もあるので、早めに眼科に相談しよう。
まとめ:赤ちゃんの目を健やかに保つために
いかがだっただろうか。
ベビーシャンプーやベビーソープが目に入っても大きな問題はないため、「目にしみる・しみない」ではなく、シンプルで、髪や身体の汚れをしっかりと洗い落とせるものを選んでよさそうだ。
また、目にしみにくい商品も使う場合でも、基本的には目に入りにくくする工夫を忘れずにおきたい。しみて涙がでる、ということは身体が異物を排除しようとする自然な現象。しみる経験があるから目をつむる、ということは、子どもが自分の身を守る力をつけるためにも大切だといえる。
近視や病気などにも気を付けながら、赤ちゃんの健やかな目を守っていこう。
文:笹間 聖子