【ヨーロッパの子育て事情6選】先進的な産休&育休制度や子連れランニングなどを紹介
2024/09/30
ヨーロッパの“子育て事情”をお届けするWORLD DAD JOURNAL in EUROPE。父親の育児を当たり前にする先進的な産休&育休制度や星付きレストランの離乳食などを紹介する。
1. オランダ「父親の育児を当たり前にする先進的な産休&育休制度」
2. フィンランド「DVや家庭崩壊を防ぐ新米パパ向けの4つのカード」
3. イタリア「美食の国は赤ちゃんもグルメ?星付きレストランの離乳食」
4. ドイツ「バギーでGO!ドイツで流行る子連れランニング」
5. デンマーク「子どものウェルビーイング向上に親子向けアクテビティを無料提供」
6. フランス「少子化に悩むフランスが育児休暇制度の改革目指す」
父親の育児を当たり前にする
先進的な産休&育休制度
オランダ
赤ちゃんが産まれてから最初の1年間、父親には9週間の有給育児休暇がある。その制度を使って、多くの父親たちは毎週、平日の1日を子どもと過ごす。母親は仕事に行き、父親が1日中赤ちゃんのお世話をしながら一緒に過ごす在り方は、オランダではごく自然なこと。
産まれた直後から赤ちゃんと一緒に過ごす時間が多いオランダの父親たちは、赤ちゃんのお世話もお手のもの。
育休の他にもパートナー産休という制度(誕生後4週間以内に5日間の有給産休&5週間の産休を取得する権利)など、夫婦で子育てをするための社会的制度と社会的意識が高い。
文:米屋香林
DVや家庭崩壊を防ぐ
新米パパ向けの4つのカード
フィンランド
左上:「父親の世界へようこそ!」カードには妊娠12~25週目に関する情報から起り得る感情や思考の混乱について書かれている。
右上:「父親の健康ー家族全員のための良い生活」カードは、父親のストレス管理、時間管理とライフスタイルの変更について考える。
左下:「話して聞いて」カードは、子供との愛着関係が重要になり、男性が父親になることに関心を持つ妊娠25~30週目に役立つ。
右下:「家族の安全カード」は妊娠30~40週目までに読まれることを想定し、 父親が子供の安全に与える影響について解説。
© Ensi- ja turvakotien liitto
フィンランドでは、緊急DVシェルター連盟(NPO)が、プレパパや新米パパに不足しがちな育児の情報や家庭におけるストレスの対処法を詳しく解説した4枚の「パパカード」を提供している。同連盟の公式Webから無償でダウンロードできるこのカードには、配偶者への暴力が胎児や子どもに与えるストレスについても詳しく書かれており、家庭崩壊の防止に役立っている。出産育児となると母子に関する情報に集中し、脇役的なポジションに陥りがちな男性の心理に寄り添ったカードは、両親が互いに理解を深めるのにも役立つ心強い4枚だ。
文:靴家さちこ
美食の国は赤ちゃんもグルメ?
星付きレストランの離乳食
イタリア
12〜36ヶ月の赤ちゃん用。7種類のベビーフードが4食ずつ入ったセット52€。
イタリアの離乳食も日本同様、野菜や果物から始めるが、7〜8ヶ月頃からは、チーズやオリーブオイルを混ぜたセモリナ粉のおじやのようなものや、ターキーや子羊などをペースト状にしたベビーフードを食べさせる。さらには、シェフ監修のベビーフードまで登場。「レ・パッペ・ステッラーテ」シリーズは、プロデュースするレストランが獲得したミシュランの星は総計12というスターシェフ、エンリコ・バルトローニが監修。元々は、シェフが自分の子どものために考案したもので、自然食材を使用した栄養価と消化の良さが特徴だ。
文:田中美貴
バギーでGO!
ドイツで流行る子連れランニング
ドイツ
ランニングには大きな三輪のバギーが適している。斜め横に立ち、片手で軽く押しながら走るのがポイント。 © Flickr, Mark Skinner
自分の時間を作りづらく運動不足になりがちな子育て期。そんななか、ドイツでは最近バギーを押しながらランニングするパパ・ママを見かける。「子どもの昼寝時間に合わせ、散歩代わりに走れば一石二鳥」という考えのもと、子どもが座れるようになる生後6ヶ月頃から始める親が多いようだ。しかし、普通のランニングとは異なるため、速度は落とし、子どもの反応を見ながら、トレーニングというよりはリフレッシュ感覚で走ることが奨励されている。
文:町田文
子どものウェルビーイング向上に
親子向けアクテビティを無料提供
デンマーク
© Educational Visits Denmark
デンマークでは、休日に子ども向けの無料アクティビティが自治体によって開催されている。社会的・経済的な背景に関わらず全ての子どもたちが、コミュニティでの関係を築いたり社会的・文化的経験をする機会を平等に得ることが目的だ。子どものウェルビーイングを促進するだけでなく、貧困世帯の社会的疎外を防ぐ役割も担っている。国や社会が子どもの成長に関心を持つことは、子育てへのポジティブな感覚や、税金の使い道への信頼、コミュニティへの所属感を持つことに繋がるはずだ。
都市部であればかなり充実したアクティビティが展開されている。 © Educational Visits Denmark
文:Ayumi Umino
少子化に悩むフランスが
育児休暇制度の改革目指す
フランス
2010年に2.01あった合計特殊出産率が2023年には1.68まで下がったフランス。政府が打ち出した対策の1つが父親の休暇制度の拡充だ。出産時の父親休暇は現在25日。出産時の3日の特別休暇を加えて計28日あり、そのうち7日間は取得が義務化されている。また、子どもが3歳になるまでに1年の育児休暇を別途取得でき(場合により2回更新可能)、一定額の手当が支給される。しかし、育児休暇時の支給額は潤沢とは言えず、取得率は依然低いため政府は改革を検討している。
文:守隨亨延
FQ JAPAN VOL.71(2024年夏号)より転載