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「3歳から義務教育」がもたらすメリットとは? フランスの子育てレポート

世界の子育て事情を見てみると、日本にはない様々な制度があることに気付かされる。妻の海外赴任に同行し、主夫生活をしている舞台批評家で翻訳家の堀切さんに、フランスの子育てについて聞いた。

メイン画像:今夏、家族旅行で訪れたヘルシンキ。

きっかけは妻の異動
「駐夫」としてパリへ

近年、外国に女性駐在員を置く日本企業が増えている。それに伴い、妻の海外赴任に着いて行く「駐夫」も増えてきた。舞台批評家で翻訳家の堀切克洋さん(37)は、国家公務員として働く妻(35)の異動により、2019年6月末に当時2歳半の娘と家族3人でパリへ。そこでは「義務教育が3歳から」という、日本との違いがあった。主夫の目から見た、フランスの子育てについてご紹介する。

幼稚園義務化が
パパ・ママの忙しさを助ける

東京で暮らしていた頃、堀切さん夫妻は完全な共働きで、堀切さん自身は講師として大学をいくつか掛け持ちして教えていた。娘は家から電車で30分の場所にある保育所へ。妻の職場にある保育所だが、時間の関係上、妻が子供を送れないこともあったため、送迎は夫婦半々で行っていた。

お互いの時間が限られており、帰宅後も家事などの時間配分を考えなければならなかった。「以前の生活は、常に時間に追われていました」と、堀切さんは当時を振り返る。

しかしパリへ来てからは、時間に余裕を持てるようになった。なぜなら、フランスでは3歳になった年の9月から義務教育で幼稚園に入園するからだ。「パリ市内の場合、区立幼稚園はどこもだいたい家から徒歩圏内にあります。娘の送り迎えが以前よりも楽になりました」。

区立(公立)幼稚園の授業料は無料で、親の負担は給食費とクラスの備品購入のための寄付(日本円で月に1300円ほど)のみ。幼稚園が休みの間に子供を預けたい場合は、「サントル・ド・ロワジール」と呼ばれる安価な託児施設を利用することもできる。

「日本の幼稚園と違って、運動会や卒園式など学内イベントはほぼありません。そのため親の負担も少ないです。一方で、幼稚園から成績評価があり留年もあります。子供の成長速度に合わせて教育が受けられるため、私はより人間的だと感じます」。


パリのルーヴル美術館にて、娘とレオナルド・ダ・ヴィンチ『洗礼者聖ヨハネ』の前でポーズ。

家事や育児の
“こうしないと!”からの解放

幼稚園は基本的に8時半〜16時半。送り迎えは堀切さんの担当だ。子供を送り出すと、家事の時間。それが片付くと、翻訳の仕事や週1回担当している日本の大学向けのリモート授業の準備などをする堀切さん自身の時間となる。お迎え時は、図書館へ寄って子供に本を読み聞かせたり、買い物に行ったりする。そして家でご飯を用意していると、妻が帰ってくる。

週末は夫婦で休みをブロック分けしている。土曜午前は妻の1人時間で、午後は家族の時間だ。日曜午前は堀切さんが買い物や家事をし、妻は子供を外に連れ出す。午後は堀切さんの1人時間である。

「日本にいた時と比べて、夫婦お互いに時間の余裕が生まれました。またパリは国籍や人々の文化背景が多様なので、個々の考え方に大きな違いが出ます。そのため社会全体が1つの傾向になることが少なく、“育児や家事はこうしないと!”というルールや、周囲と比べて焦ることから抜け出せて、気持ちが楽になりました」。

妻の赴任期間は3年のため、パリ生活はあと1年。国の制度に助けられながら夫婦で育児に励んでいる。


パリで育児をしながら訳した小説『ベケット氏の最期の時間』(早川書房)が今年7月に日本で発売された。 ©Yukinobu Shuzui


文:守隨亨延

FQ JAPAN VOL.60(2021年秋号)より転載



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