かぜに抗生物質はNG!? 親が知っておくべき薬の常識と「薬剤耐性菌」リスクとは?
2021/09/21
感染症治療に欠かせない抗菌薬。だが、抗菌薬が効かない「薬剤耐性菌」が問題となっている。抗菌薬の正しい知識について国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター藤友結実子先生にお話を聞いた。
抗菌薬とは細菌に作用する薬
ウイルス性のかぜとは無関係
抗菌薬とは細菌を殺す、または増殖を抑える薬で、肺炎や腎盂腎炎など、感染症の治療に使用される。よく細菌とウイルスは混同されがちだが、実はまったく別のもの。だから、9割以上ウイルスが原因でかかるかぜに抗菌薬は効かないという。
「抗菌薬について覚えていただきたいのは、処方された期間や飲み方を誤ると、リスクを伴うということです。通常、人の口内や腸には多くの細菌が共生して体調を整える働きをしてくれます。抗菌薬はこれらにも効いて、細菌のバランスを崩してしまうのです。すると、その中に潜む抗菌薬が効かない菌、「薬剤耐性菌」が増えやすい環境が生まれてしまいます」と藤友先生は注意喚起する。
では一体、増えるとどんな問題が起きるのか。最も危険なのは、「薬剤耐性菌」による感染症にかかったときに、抗菌薬を使っても治らないこと。
さらに、手術の前に術後感染予防のための抗菌薬を飲んでも、自分が持っている「薬剤耐性菌」による感染症を予防できないため、最悪、手術自体ができなくなるケースも……。
つまり、「薬剤耐性菌」は健康にとって大きな脅威になりうるのだ。だが、下記のデータを見てもわかるように、抗菌薬に対する正しい知識を持つ人は少ない。次に薬剤耐性の対策についてまとめたので、大切な家族を守るため、ぜひ目を通しておこう。
かぜと抗菌薬の知識について
かぜで受診した時処方してほしい薬は?
→自ら抗菌薬の処方を希望する人が30%
抗菌薬に関する調査結果。かぜの際に抗菌薬・抗生物質の処方を希望する人が約30%いるなど、日本では正しい知識が広がっていない。
パパが知っておきたい
薬剤耐性対策の3ヶ条
1 かぜの時に抗菌薬を求めない
細菌とウイルスはまったく異なる生物であるため、ウイルスによるかぜやインフルエンザに抗菌薬は効かない。しかし、かぜの際に抗菌薬を求める患者が一定数おり、医師も強く求められると6割が処方してしまうというデータもある。かぜと診断されたときは、抗菌薬を求めないことが重要だ。
2 服用期間や量は医師の指示通りに!
よくなったからといって抗菌薬を自己判断で飲むのを止めたり、とっておいて次に具合が悪くなった時に飲むのはNG! これらは「薬剤耐性菌」の増加や副作用のリスクにつながる。元々、医師が処方する薬はその人に合わせているもの。家族であげたりもらったりするのも厳禁だ。
3 日頃からの予防が大切
「薬剤耐性菌」を増やさないためには、抗菌薬を飲む状態にならないことが一番。つまり、体調管理、感染予防が大切だ。まずは石鹸で手洗いをしっかりと行おう。2つめに、咳やくしゃみがでるときは必ずマスクをして人にうつさないこと。そして、予防接種を必ず受けることだ。
薬剤耐性(AMR)対策
啓発キャンペーンとは?
世界的な脅威となっている薬剤耐性(AMR)の発生を遅らせ、拡大を防ぐために、日本政府は毎年11月を「薬剤耐性(AMR)対策推進月間」と定めた。
AMR臨床リファレンスセンターでは、医療従事者向けに院内感染対策や抗菌薬の適正使用活動に関する情報やデータを提供するとともに、一般の方にも抗菌薬の正しい使い方や薬剤耐性の広報活動を行っている。今年もTVアニメ「はたらく細胞」のキャラクターを起用したキャンペーンを展開する。
©清水茜/講談社・アニプレックス・davidproduction
監修
国立国際医療研究センター病院
AMR臨床リファレンスセンター
藤友結実子医師
問い合わせ
文:笹間聖子
イラスト:SANDAR STUDIO
FQ JAPAN VOL.60(2021年秋号)より転載
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