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育休が人材採用に影響を及ぼす!? ボルボ・カーズの新育休制度とは?

日本でも少しずつ増えている男性の育休取得。そんな中、スウェーデンに本社があるボルボ・カーズでは、性別や家族形態に関わらず平等に取得できる新しい育休制度を打ち出した。その詳細をボルボ・カー・ジャパンの人事、広報担当者に伺った。

誰もが平等に取得できる育休制度とは?

ボルボ・カーズでは、2021年4月より、全世界のすべての工場およびオフィスで働く4万人以上の従業員を対象に、新しい育休制度を導入した。新しい制度の注目すべき点は以下の通りだ。

・勤続1年以上の正社員に、基本給の80%で合計24週間の休暇が基本的に与えられる。
・育休は子供が生まれてから3年間、いつでも取得が可能である。
・養子縁組、里親、代理出産を含む法的に登録されたすべての親、および同性カップルの出産していない親も対象となる。

この「ファミリーボンド(=家族の絆)・プログラム」は、男女間の格差解消はもちろん、現状では少数派の養子や里親といった、新しい形の家族にも平等な、画期的な制度といえる。

このような制度が生まれた背景について、ボルボ・カーズ最高経営責任者のホーカン・サムエルソン氏はこう語る。

ボルボ・カーズ CEO ホーカン・サムエルソン氏

「私たちは、性別を問わず、平等な子育てを支援する文化を作りたいと考えています。親が仕事と家庭の両立を支援されることで、男女間の格差が解消され、誰もが優れたキャリアを築くことができます。当社は常に家族を大切にし、人間中心の企業であり続けてきました。家族の絆プログラムを通じて、当社の価値観を表すとともに、実践し、それが当社のブランドを強化することにつながります」

育休が優秀な人材の確保につながる

もちろん、ここ日本でも、新たな育休制度は導入されている。従業員の反応などはどのようなものだろうか?
人事総務部ヘッドの末田涼子さん、広報の赤堀淳さんにお話を伺った。


人事総務部ヘッド 末田涼子さん

末田さん「導入間もないこともあって、今のところ、実際にファミリーボンド・プログラムを取得した従業員はいません。ですが、かなり好意的に受け止められています」

導入前には、新制度についての社内の理解を深めるべく、オンラインで何度か説明会を行い、若い子育て世代の従業員から多くの質問を受けたそうだ。

赤堀さん「やはり約半年の育休を取ることで不安なのが、戻ってきた時に自分の居場所はあるのか、それまでのキャリアが無駄になるのではないかということでした。そこでボルボでは、明確に『育休取得前のポジションを保証する。もしそのポジションが無くなった場合は、同等のポジションを用意する』ということを約束しています」

育休取得前のポジションを明確に保証することで、従業員の育休に対するハードルがかなり下がったように感じるという。

末田さん「男性が育休を取りやすくすることで、女性のキャリアが開ける。多くの女性が社会で活躍の場を得られることで、企業もより優秀な人材を確保できると考えています。特にボルボ・カーズの新制度では、里親や同性カップルといった幅広い親が対象なので、非常に多様性に富んだ魅力的な働き手の方々に来ていただけるのではないかと思います。また、最近感じるのが、採用面接で応募者に問われる内容が変化してきているということです」

以前は給与、役職、キャリアアップについての質問が多かったが、最近は、残業時間やテレワークの有無といった働き方や、育休取得などの福利厚生について聞かれるようになったという。

末田さん「世の中の男性の興味が家族や育児に向いていると気づいたと同時に、働く方々が企業側に求めるものが変わってきていると感じました。企業側もマインドを変えないと、優秀な人材はどんどん離れていく、ある種の危機感のようなものを覚えましたね」

近年の電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド(PHV/PHEV)の普及により、自動車製造においてもハード面だけでなく、ソフトウェアの果たす役割が大きくなってきている。若手のソフトウェアの専門家を確保するためにも、育休制度の充実は欠かせないそうだ。

ボルボ・カーズのプラグインハイブリットモデルのエントリーグレードとして導入された「XC40 Recharge Plug-in hybrid T5 Inscription Expression」

日本人男性の育休取得率はいまだ低く、2020年の取得率は12.65%。かたや、ボルボ・カーズが本社を構えるスウェーデンの育休取得率は、2013年の時点で88.3%を超えているから驚きだ。

赤堀さん「文化の違いが大きいとはいえ、この差を埋めるには、企業が率先して取り組むことの重要性を感じています。“自動車メーカーはクルマだけつくっていればいい”、という時代ではないのかな、と思います。弊社の取り組みが、男性育休取得の機運を高める一助になればいいですね」

2019年に※EMEA地域でファミリーボンド・プログラムのパイロット版を導入したところ、応募者の46%が父親だったという成功事例も挙がっている。

性別、人種、家族形態に関係なく、働くパパやママが平等に育児ができる環境整備のために、ボルボ・カーズが打ち出した今回の育休制度が、新たなグローバルスタンダードとなるのかもしれない。

※EMEA……ヨーロッパ、中東、アフリカ



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