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インタビュー

藤木直人「多くの“武器”をもたせることが、父親としての役目」わが子に今想うこと

公開中の映画『夏への扉 -キミのいる未来へ-』に出演している藤木直人さん。私生活では、1男2女の父親で、賑やかな毎日を送っているそう。微笑ましい家族とのエピソードや親として子供に伝えたいことなどを語ってくれた。

慎重なアプローチが求められた
ロボット役

まず目に留まるのは、アンニュイな雰囲気と物腰の柔らかさ。やがて見えてくるのは思慮深さと、表現者として高みを目指そうとする実直な姿勢。藤木直人さんは、いくつもの魅力とギャップをもつ、愛すべき俳優だ。

公開中の映画『夏への扉 -キミのいる未来へ-』は、藤木さんが出演する最新の映画作品。米国の小説家、ロバート・A・ハインラインによるSF小説が原作で、現代風にアレンジされているのが特徴だ。本作で、主人公である非運の科学者を助けるため奔走するのは、なんとロボット。それも、システム上の異常をきっかけに“好奇心”をもってしまった、一風変わったロボットだ。今回、藤木さんは、このロボット役に挑戦している

「特徴的なトーンで話す必要があり、そのさじ加減が難しかったですね。終始、淡々としたセリフ回しを意識しつつも、一本調子にならないよう気をつけていました。また、ロボットっぽさを抑えたシンプルな動作をもって、一つ一つの仕草を演じました」と、藤木さん。特殊で手本も少ない役柄ゆえ、慎重なアプローチが必要だったことをうかがわせる。しかし、その反面、現場の雰囲気は和やかだったよう。共演者との楽しいエピソードも披露してくれた。

「科学者役を演じた山﨑賢人くんは、映画『キングダム』続編の撮影を控えていて。“体を鍛えておかないと!”と、現場での空き時間を使って筋トレしていましたね。しかも、彼が使っているトレーニング器具がめちゃくちゃ重たい(笑)。身体を触らせてもらったら、すでにいい感じに仕上がっているのが分かったのですが、“でもこれ、科学者の身体じゃないよね?”と心配になりました(笑)」。

工夫して楽しみを見つけた
自粛期間

どこか非日常的な雰囲気ももつ藤木さん。それゆえに、つい忘れてしまいそうだが、同氏は3児の父親でもある。

「役者はオファーがこなければ、毎日が休日。現場に入っていない日は、おのずと家族と過ごす日になります」と冗談めかして話すが、藤木さんが家族との時間を充実したものにするため、日々努力していることが言葉の端端から伝わってくる。例えば、世界中の人々がコロナ禍に直面し、「ステイホーム」が一般的になった頃のこと。

「学校が一斉休校になった期間は、家族全員で自宅で過ごしていました。日々、変わらず家にいるなかで、どう過ごすべきかと悩みましたね。考えたすえに、子供たちと一緒に料理を作ることがよくありました。おもに作っていたのはピザ、うどん、ドーナッツのような、作業内容がシンプルだけど手間のかかるメニュー。子供たちに『もう生地が発酵したかな?』『オーブンの中をちょっと見てみよう!』と声をかけて、なるべく飽きさせないようにしていました(笑)」。

また、近隣を子供と散歩している最中にヨモギを採り、それを自宅でお団子に仕立てるという一幕も。こうした何気ない楽しみを子供に与えられるのは、良き父親だからこその行動だ。

子供たちの未来を憂い、
ジレンマを感じたことも

家族との時間が増えた自粛期間は、ポジティブに捉えることもできる。しかし、藤木さんは「単純に喜ぶことはできなかった」と話す。

「学校が休みの期間、子供たちはオンラインで授業を受けたり、自宅学習をしたりしていました。でも、今回の休校が彼らの将来に影響を与えるのではないかと、心配になりましたね。『休校によって、子供たちが将来獲得できる賃金が下がる』というニュースを耳にしたこともあります。もしも子供たちの未来に歪みが生じてしまった場合、それは大人たちの責任です。正直、“子供の未来を守るうえで、もっといい方法があったのでは”とジレンマを感じました」。

父親として子供たちに求めることは、社会で真っ当な人として、自力で生きていく力を身につけること。そして、なるべく多くの“武器”をもたせることが、父親としての役目だと考えている。

学力も“武器”になり得ます。時には『きちんと課題に取り組みなさい』と頭ごなしに言うこともあります。ただ、あまり強く言い過ぎると毛嫌いしてしまうので、そのあたりのさじ加減が難しいのですが。いつか子供たちの心に響いて、自ら学ぶようになってくれたら嬉しいですね」。
 

DATA

映画『夏への扉 -キミのいる未来へ-』
公開中


将来を期待される科学者の高倉宗一郎(山﨑賢人)は、亡き養父の会社で研究に没頭していた。しかし、研究の完成を目前に控えながら、罠にはめられ、冷凍睡眠させられてしまう。目を覚ますと、そこは30年後、2025年の東京で、研究も愛猫ピートも家族のように大切な人もすべてを失っていた。愕然とする宗一郎だったが、人間そっくりなロボット(藤木直人)の力を借り、未来を変えるために動き出す。

出演:山﨑賢人 清原果耶 夏菜 眞島秀和 浜野謙太 田口トモロヲ 高梨 臨 原田泰造/藤木直人
監督:三木孝浩
原作:「夏への扉」ロバート・A・ハインライン(著)/福島正実(訳)(ハヤカワ文庫刊)
配給:東宝 アニプレックス
HP:映画『夏への扉 ―キミのいる未来へ―』オフィシャルサイト

©2021 映画「夏への扉」製作委員会

 

PROFILE

藤木直人

1972年生まれ、千葉県出身。大学在学中に俳優デビュー、1999年からは歌手としての活動も並行して開始。主な出演作は、「ナースのお仕事」シリーズ、「ラブ・レボリューション』、「ホタルノヒカリ」シリーズ、「ラスト・シンデレラ」、「グッド・ドクター」、連続テレビ小説「なつぞら」、アニメーション映画『リメンバー・ミー』(日本語吹き替え版)など。また2005年から「おしゃれイズム」のパーソナリティを務めている。7月からは、主演を務めるWOWOW連続ドラマW「黒鳥の湖」、「ボクの殺意が恋をした」が放送開始。現在3児の父。


写真:松尾夏樹
取材・文:緒方佳子
スタイリング:古田ひろひこ(チェルシーフィルムズ)
ヘアメイク:大渡八千代

衣装:オーバーコート¥46,000(KHONOROGICA)、ウィングカラーシャツ¥23,000(KICKS DOCUMENT)/ 以上すべてHEMT PR / ヘムトPR 03-6721-0882

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