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インタビュー

松重豊「子供がどんなに小さくても、1人の人間としてぶつかる」

10月4日公開の映画『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』で、アラフィフの作家・ヒキタクニオを演じた松重豊さん。ご自身は20代の頃に子供を授かり、今や2人の成長した子を持つ大先輩パパだ。妊活に奔走するヒキタさんをどう演じようとしたのか、松重さんにインタビュー。

あなたの子供に会いたい――
この一言で始まった妊活

みなさんは、誰かのため何かのため、現実に目を背けず困難と対峙して、必死に努力したり自己を規制したりした経験はあるだろうか。本作品は、作家・ヒキタクニオ自らの“男の妊活”体験を描いた奮闘記の映画化だ。「まさかこの歳で、駄目金玉を持つ男を演じることになるとは!」と松重さんは笑う。

主人公はヒキタクニオ、49歳。職業は作家。ジム通いが趣味で、サウナとビールが大好き。ふたまわり近く年下の妻・サチと仲良く暮らしているなか、ある日突然、妻の一言で全てが変わる。

『あなたの子供に会いたい――』

この言葉で始まった妊活だが、結果がなかなか出ず、検査すると不妊の原因はヒキタ自身にあったのだ。

「私は20代の頃になんの苦労もなしに2人の子供を授かったし、当時は子供ができないのは女性側にすべての責任があると片付けられていました。この映画は、ひたすらダンナの金玉が駄目だったというストーリー。妊活というゴールが見えないマラソンを真っ向から捉えながらユーモアもあって、単純に『ヒキタ、頑張れよ!』と応援したくなります」。

ヒキタさんは、精子に勢いがなく、数も少なく、成績表のように毎回数字で見せられ、モニター画面で映像まで映されて、駄目金玉ぶりに打ちのめされる。しかし、駄目金玉=駄目男ではなかった。

「そういうのって、むしろ夫婦の絆を深める要因にもなるのかな」。松重さんはポツリと呟いた。そして、すこしニヤリとしながら、「それにしても北川景子さん演じるサチは、強い。強い年下女性に甘えるっていうのもいいな、と心の底から思いました(笑)」。

夫婦であり、同志でもあり
親子でもあるのが夫婦

クランクイン初日、北川さんと顔を合わせることに、恐怖を感じたという。理由は、「あり得ない」と拒絶されるのが怖かったからだ。

「彼女はナチュラルに受け止めてくれて、現場で朝、コーヒーを飲みながらどうでもいい会話をしたり、ケータリングの弁当を一緒につまんだり、居心地のいい夫婦でいられました。サチとは、夫婦であり、共に戦う同志でもあり、親子のようでもある。この関係を築けたのは北川さんに依るところが大きいですね。サチも北川さんの素顔も、どちらも非常に男前でカッコいい女性です」。

松重さんご自身は、学生の頃から付き合っていた奥様と結婚。出会って30年以上経っても、全く飽きたり、会話がなくなったりすることもなく、変わらない関係が続いているという。

「僕には友達がいないもので、おしゃべりするのはいつでも家族です。かつてドラマのロケで家を空けがちだった時期、当時小学校6年生だった息子が少しグレてしまったことがあって。胸ぐらを掴み合ってお互いの気持ちをぶつけ合ったことがあります。仕事にかこつけて、私は息子と向き合っていなかったんです」。

その後、息子さんと2人きりで屋久島の山を登った。「何も語らず山を登っているうち、お互い分かり合えたんです」。

今では、オススメの音楽や映画の情報を共有し合う仲だそう。
「子供を育てるのにメソッドはありません。一人ひとりみな違いますから。ただ言えるのは、子供も親も一人の人間です。どんなに幼い子供が相手でも、一人の人間としてちゃんと向き合い、魂と魂をぶつけ合うこと。きっとただそれだけです」。

DATA

映画『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』10月4日(金)全国ロードショー

主人公のヒキタクニオ、49歳。職業は人気作家。ふたまわり近く年が離れたサチと結婚し、仲良く暮らしている。年の差婚の2人は子供は作らず、共に白髪になるまで2人の生活を楽しむつもりでいたが、サチがある日突然、「ヒキタさんの子供に会いたい」と言い放つ。まだまだ若いと思っていた自分の肉体や外見と相反して、精子が老化現象を起こしていることを知り、サチの熱い想いに応えるべく、男の妊活へと踏み出す!

出演:松重 豊 北川景子/山中 崇 濱田 岳 伊東四朗
配給:東急レクリエーション
HP:映画『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』公式サイト

©2019 「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」製作委員会

 

PROFILE

松重 豊
YUTAKA MATSUSHIGE

1963年、福岡県生まれ。蜷川スタジオを経て、92年映画『地獄の警備員』で注目される。主な出演作は、ドラマ「孤独のグルメ」「アンナチュラル」「悪党 ~加害者追跡調査~」、映画『ディア・ドクター』『アウトレイジ』シリーズなど。


Photo » NATSUKI MATSUO (NAOTO OHKAWA Photography, inc.)
Text » MIKAKO WAKIYA
Styling » YOSHIE MASUI
Hair&Make » YUUKA SAEKI

黒ニットジャケット¥50,000、黒シルク柄ニット¥48,000/ランバン コレクション(ジョイックスコーポレーション TEL:03-5213-2510)

FQ JAPAN VOL.52 より転載

 

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