夫婦別姓や同性婚はなぜ認められない? 多様性のある社会に向けて必要なこと
2019/07/10
多様性の尊重が叫ばれる昨今だが、選択的夫婦別姓や同性婚が認められてはいない。こうした理想と制度の間にある矛盾は「人権」に関わる重要な問題だ。パパ議員の柚木道義氏が「多様性の実現」のために考えるべき論点を伺った。
選択的夫婦別姓と同性婚は
人権の問題
選択的夫婦別姓と同性婚。どちらも人権の問題です。
まず、選択的夫婦別姓。「日本人同士の結婚で夫婦別姓を選べない戸籍法の規定は違憲」という趣旨で、全国的に訴訟が行われました。
法律婚において改姓するのはほとんどが女性側です。「名前を変えたくない」という理由で別姓を選択できないことは女性差別と考えます。仕事を持つ女性は改姓により大きな不利益を被ります。改姓を避けて事実婚を選べば、将来的に相続権や親権などの法律上の問題も出てくるでしょう。
言葉上は安倍政権も「多様性の尊重」と言っていますが、実態が伴っていません。
1996年(平成8年)、選択的夫婦別姓を認めることが法務省の審議会で答申されましたが、国会提出には至りませんでした。さらに、国連女子差別撤廃条約委員会からも勧告も受け、日本も批准しているのに、選択的夫婦別姓が法制化されないのは深刻です。自民党内に「家族の絆を守る特命委員会」というグループがあり、いわゆる父性中心の社会でないと家族の絆が守れない、その延長で家族の絆が崩壊するため夫婦別姓を認めないという主張を行っています。
ですが、夫婦別姓を認めると家族の結束が弱まるというエビデンス(科学的根拠)は、国際的に見てもないです。思い込みで女性差別が続き、女性活躍にも逆行する社会は変えていくべきでしょう。世界的に見ても、多くの国が別姓を法的に認め、同性婚においても同様の動きがあります。日本の現状は、時代遅れもはなはだしいです。
自治体から
具体的なアクションを起こす
同性婚については渋谷区などでパートナーシップ条例制定の取り組みがはじまっています。家を借りるときや病院で家族としてサインするときだけでなく、養子をもらって子育てをするときなどに、不利益を被らないよう、こうした条例が不可欠です。
動かない国に代わり、自治体が先進的な取り組みを始めたことに期待ができるでしょう。海外でも、自治体の取り組みがきっかけで法律的にも認められる流れがあります。日本でも取り組みが進むよう、政治家として後押ししていきたいです。
同性婚についても裁判が複数起こされています。渋谷区や世田谷区などではパートナーシップ条例制度を設けていますが、「同性カップルが結婚できないのは違憲」を論点にした裁判では、「憲法上はそういう結婚は想定してない」という理由で退けられました。
ここで矛盾があるのですが、政府は「同性婚は想定していない」と言いつつ、内閣法制局は「同性婚を認めるかどうかは立法政策に委ねられている」としています。つまり、ボールは政治に投げられているのです。
1人あたりのGDPが高い国の多くが同性婚を認めています。多様性を尊重した方が経済効果が大きいエビデンスも存在するほどです。
令和時代を迎えたのですから、すべての人権を尊重する新しい時代にするべきです。
それから、性犯罪対策についても、国連から何度も勧告されるほど世界基準から遅れています。愛知県で、父親が実の娘を長年性的虐待したニュースが世間を騒がせました。これが無罪としたら、世界に向かってどんなメッセージを発することになると思いますか?暴行・脅迫要件(相手の抵抗を著しく困難にするほどの暴行や脅迫があった場合のみの処罰)を撤廃し、「同意なき性交は犯罪」とすべきです。もちろん、冤罪が起きないよう十分な配慮が必要です。
多様性を実現するため
野党が力を合わせよう
最近は、立憲民主党が人権への意識を強調し、多様な社会の実現を呼びかけています。その一環として、ハンディのある方や性的マイノリティの方などを候補者として擁立する動きがあります。マイノリティに光が当たる政策は、社会全体にとって生きやすい、暮らしやすい社会を実現するはずです。障がい者に優しいバリアフリー社会は、高齢者にも子どもにも優しいわけですよ。
こうした社会を実現するのには、安倍政権では無理です。同性婚どころか、夫婦別姓さえ認められないわけですから。今こそ野党が結集し、政策や主張を実現していく状況を作らなければなりません。
PROFILE
柚木 道義 MICHIYOSHI YUNOKI
1972年岡山県生まれ。超党派イクメン議連の共同座長。2005年衆議院議員選挙岡山県4区にて初当選。現在、無所属、衆議院法務委員会委員を務める。プライベートでは長女8歳、長男5歳のパパ。
Text >>ETSUKO KIMURA
FQ JAPAN VOL.51より転載