パパのための食育基礎~家族の理想の食卓とは?~
2018/09/03
自分は料理ができないからといって、食卓は妻に任せっきりになっていないだろうか? たとえ自分は料理が苦手でも、父親としてできることは必ずある。我が子のため、家族のため、食育の基礎を身につけて楽しい食卓を作ろう!
朝のほんの30分間でも
家族にとっては大切な時間
「かつて、家族とは親類縁者・隣人を含めた拡大家族でした」。
家族カウンセラーである宮本まき子先生はこう続ける。
「家の中には祖父母がいて、隣には親戚のおばさんや従兄弟たちがいる。近所の人たちともよく行き来していたから、食卓に家族以外の人たちが混ざる機会も多かったでしょう」。
しかし最近では核家族化の進行や、1人っ子世帯の増加により子供を取り巻くコミュニケーションの場が減少した。宮本先生は、そんな家族構成員が少なくなった現状こそ「理想の食卓」を見直す機会だという。
「私の家でも(もう成人した)子供たちが育つころ、夫はモーレツな仕事人間でほとんど不在。私も仕事が忙しくなって夜遅くまで帰れない日もあり、必然的に家族一緒に夕食をとれないことがありました。姉弟の2人が揃うときはまだよかったのですが、1人で食べなければならないときが一番つまらなかったと後で言われてハッとしましたね」。
それ以来、宮本先生は「食事を子供1人で食べさせるな」といつも言うようになったという。しかし、家庭によってはお互い忙しく帰宅時間もバラバラ。なかなか家族全員で夜の食卓を囲めない場合も多いだろう。そこで宮本先生は朝1時間の早起きを提案している。
「疲れているので5分でも多く寝たいという父親の気持ちもわかります。私も仕事を持っている以上、そのような気持ちになることも多々ありました。しかし、子供と向かい合ってご飯を食べられる期間なんて人生の中でほんの少しの間だけです」。
宮本先生自身も朝は家族全員で起きることを心がけ、朝食の30分間は家族で情報交換できる大切な団欒タイムとしていたそうだ。
「家庭は第2の仕事場と考えてください。職場があってもう1つ職場がある。父親をやるには、それくらいの責任感・気力が必要なのです。父親になったのだから、家の中で“長男”になってはダメですよ。」
近隣コミュニティも
食育のカギに?
一方で、近所付き合いも理想の食卓を考える上でのキーポイントだ。
「最近では都市部も地方も近所付き合いの濃密さは以前ほどではありませんが」と宮本先生は付け加えた上で、こんな話をしてくれた。
「公団住宅に住んでいたとき、うちの家族含め近所の数世帯は、お互い親しく子供も出入り自由でした。私がいないとき、子供はよその家にお邪魔してご飯を食べ、特に仲良しの子の家には、うちの息子専用のイス、マグカップ、ハシなどが揃っていました。もちろん、わが家にも他の世帯の子供たち専用の食器がありました。この環境が子供の将来に、すごく良い影響を与えたと思います」。
まさに昔の「拡大家族」をコミュニティが補完した形といえる。
「忙しくても、なるべくコミュニケーションの場を持つよう心がけ、短時間でも密度の濃いふれあいができるよう環境を整えていく。加えてワイワイと温かい会話が飛び交う環境を作ることも大切です」。
普段の何気ない交流のなかにこそ理想の食卓は存在する。
PROFILE
宮本まき子さん
家族カウンセラー。評論家。1979 年より「主婦の友社電話相談室」に勤務し、1女1男を育てるかたわら22年間に渡り子育て・家族問題などを担当。現在は家族をテーマにした執筆・講演・セミナー・評論において活躍する一方、山梨大学にて非常勤講師も務める。著書も多数。
Text >> YUKINOBU KATO
FQ JAPAN VOL.9より転載