子供の将来は父親の賢さ次第!「モンテッソーリ教育」とは
2018/08/16
子供の『敏感期』を知り
辛抱強く成長を見守る
およそ100年前、教育の専門家マリア・モンテッソーリが編み出した『モンテッソーリ教育』。一言でいえば「子供が、自ら成長・発達していく力を助ける教育法」といえる。この世のすべての生物は「自然の法則」にしたがって成長する。意識・感情などの精神面はもちろん、神経・筋肉などの肉体面においてもだ。
医師の資格を持っていたマリア・モンテッソーリは、こうした生理学的側面から子供を観察するうち、人間の子供にも『敏感期』があることに注目する。この言葉、もともとは生物学用語。「生物の幼少期に現れる、特定の対象に強い感受性を持つ時期」を意味する。
この『敏感期』こそ、モンテッソーリ教育の根幹をなすキーワード。「敏感期ごとに見られる特有の行動などを妨げないこと」が、心身の発達を最大限に高め、自主性を育み、ひいては将来の人格形成にまで影響を与える。
何気ない「いたずら」に
隠されていることも
敏感期にはさまざまなケースがある。一見「無意味」に、もしくは「わがまま・いたずら」にしか見えないものがほとんどともいえる。
しかし、子供は「『自然が与えた大切な宿題』を真剣にやっているだけ」。例えば6ヶ月~3歳前後に起きる『秩序の敏感期』では、秩序感という感受性の芽生えから、物の位置や順序が「いつもと同じ状態」にあることに固執する。また『運動の敏感期』では、「机上の物を落とす」「壁のポスターをはがす」といった「将来必要な動きのための筋肉の鍛錬」の意味がある。
さらに「同じ動きを何度も繰り返す」、そして「その終わりが唐突に来る」のも敏感期の大きな特徴。要は、「満足するまで修練し、満足したら終わり」というわけだ。こうして『1つの敏感期』で何かを達成した子供は『次の敏感期』へと移っていく。
そこで親の最大の役目は、子供の行動の1つひとつを「大切な仕事」ととらえ、辛抱強く見守ること。子供ができるようになっていく過程を愛と忍耐で見守る。それこそが将来的な子供の自主性を育んでいく。
また、親の行動を見た子供が「僕もやる!」と近づいてきた時に重要なのが「口で説明しながら教えないこと」。ある母親のケースでは何度説明しても箸を上手に持てなかった息子に、「無言で箸を持つ動作をゆっくりして見せた」ところ、完璧ではないが、断然上手に持てるようになった。
多くの情報を受け容れることに慣れていない子供には、目の前で何回も「黙って、ゆっくり、して見せる」という手段が大いに効果を発揮する。ただし、教えていいのは「子供ができなくて困っている動作」のみ。“自然の法則”を無視した親の勝手な判断の押し付けは厳禁だ。
教具を使ってリスクを回避
「高価」よりも「効果」が大切
さて、「子供の自然な発達のために、自主性を」といっても、単に放っておくわけではない。そんなことをしたら、家の中は惨憺たる状況、いや、それどころか包丁やハサミなどを手にした日には……。
そこでモンテッソーリ教育では「さまざまな独自の教具」を用いる。これは敏感期を効果的に過ごすだけでなく、家庭内の器物破損防止や子供の危険回避にも有効な手段となる。
敏感期における行動は、「単に似た動きをしたい欲求」から始まる。つまり、運動の獲得の敏感期に見られる「落とす」「はがす」などの動きに応じた教具を与えれば、子供は夢中で取り組み、必要な動きを習得する。将来、実際にハサミや包丁を使った際、怪我をするケースがほとんどないのはこのためだ。教具に求められるのは効果であり、高価なものではない。適した機能があれば父親の手作りでもまったく問題ない。
DATA
日本モンテッソーリ教育綜合研究所
モンテッソーリ教育の教師育成の通信教育と研修会を行っている。
日本モンテッソーリ教育綜合研究所HP
PROFILE
鈴木光司 Koji Suzuki
1957 年、静岡県生まれ。2人の娘を持つDAD 。90 年「楽園」で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞し小説家デビュー。その後、「リング」「らせん」「ループ」(ともに角川ホラー文庫)がベストセラーに。「家族の絆」などのエッセーも多く、「少子化への対応を推進する国民会議」「東京都青少年協議会」の委員も務める。
Text >> MUNEKATASUMITO、HIROSHI IWAI
FQ JAPAN VOL.8より転載