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インタビュー

【インタビュー】ディーン・フジオカの素顔を紐解く

教育のことを考えて決断した
〝離れて暮らす〞という選択

現在の生活になる前に、日本に移り住み、家族みんなで一緒に暮らすという選択肢も考えたという。

「日本ではなくインドネシアで子育てをしようと考えた大きな理由の1つは、祖父母や親戚、ベビーシッターやお手伝いさんなど、社会全体で子供を育てる風土や環境が整っていることです。

一方で、日本には、夫婦の中で子育てを完結しなきゃっていう空気がありますよね。でも僕はそれ、本当に大変な事だと思います。だって2人じゃ難しい時もあるじゃないですか。それを知っているから、日本のお母さんは大変だろうなって思っちゃうんですよね」。

また、現在3人目を妊娠中の奥様のことも考慮すると、今の生活の方が合っているのだという。

「いま妻は妊娠中だから、重い物を持つのも一苦労。どこかに行くときは、子供だけじゃなくて、妻自身助けてくれる存在が不可欠です。うちの場合はナニーに来てもらっています。

日本だとそういうサービスを、すごく頑張って探さないと見つからない。費用もかかるし、周りへの理解も深めないといけない。一方、インドネシアの場合は、比較的リーズナブルに利用できます」。

ディーンさんの目に映るのは、目の前の子育てよりも、10年、20年後の子供の将来のことだ。「インドネシアは多民族国家。人種も宗教も違う子供たちが同じ授業を受けている。子供たちが今後歩んでいく人生においても、多様性のある環境に身を置いた方がいいと思うんですよね。

もしかすると日本でもインドネシアでもなく、もっと違う国で暮らすかもしれない。子供たちには僕のライフスタイルを超えて、自分たちの生き方をみつけてほしい。そのためにも、英語と日本語と中国語の3つは話せるような環境で育てたいと思っています。僕が子供たちに残せるものは、そういう教育くらいですから」。



夢を売る仕事だからこそ
リアルなことを子供に伝えたい

ディーンさんはかつてシアトルの大学でITを学んでいた。そんなルーツを思い出させるような言葉選びで、自身の教育観を語る。

「子供には、自分の価値観の押し付けにならないように気をつけながら、ダンスや楽器の演奏、格闘技などに挑戦させたいですね。幼児期にトレーニングを通じて、自分の身体が自分の意思とシンクロさせることがすごく大事だと思います。リズム感や音感を養いながら、意識と体を馴染ませるというか。

あと、聴覚や表情筋をトレーニングすれば、言語に関してもネイティブに近いレベルに持っていけると思う。僕はそんなふうにして、知識や能力の土台になるOS(オペレーティングシステム)を構築する手助けをしたい。頭と身体の準備ができた状態で、人生を切り拓いて欲しいです」。

子供たちがボーダレスに生きるための基礎を養いたい――子供の教育に関して強い信念で取り組むディーンさん。最後に〝どんな父親でありたいか〞と質問をした。

「理想の父親像ですか? なんだろうな……(真剣に考えこむ)。僕は父親という枠を超えて、1人の人間として、子供たちに伝えたいことがあります。それは、今の恵まれた環境の裏側には、それを支えている人たちがいること。

目に見えない、遠いところにいるかもしれないけれど、それを現実として受け止めてほしい。『僕たちは恵まれている。だからこそ、やらないといけないことがあるだろう』って。例えば困っている人を見つけたら助けてあげるとかね」。

人々に夢を売る俳優という仕事をしているが、中身はリアリスト。ディーンさんは自身をそう分析する。

「厳しい現実に蓋をするよりは、見た方がいいと思っています。僕ら家族は離れて暮らしている。さみしい気持ちはあるけれど、『命があって健康だからこそ、今僕に何ができるんだろう』といつも自分へ問いかけている。世界のためにも、自分の子供たちの父親という役割だけで、満足したらダメだと思うんです」。

ディーンさんは、常に物事を俯瞰して捉え、そして一歩先を見て歩いている。今の人気や俳優としての地位も、こうして積み上げて掴み取った努力の証なのだろう。父親として、仕事人として、これからも彼は歩き続ける。

PROFILE

ディーン・フジオカ

1980年、福島県生まれ。アメリカ、シアトルの大学を卒業後、香港へ渡りモデルとして活躍。2005年に『八月の物語』の主演に抜擢され俳優デビュー。その後は台湾を拠点にドラマ、映画などで活躍。2015年には連続テレビ小説『あさが来た』に出演。ミュージシャンや映画監督としても幅広い才能で活躍。2歳の双子の娘と息子がおり、2017年第3子も出産予定。


Photo » TAKUMA SUDA
Text » TAKESHI TOYAMA
Styling » ISON KAWADA (impannatore)
Hair&Make » RYO

ニット¥20,520、デニムパンツ¥27,000/ともにJACK SPADE(kate spade japan 050-5578-9152)、ブレスレット¥17,280/SOMÈS SADDLE × HT LABEL(SOMÈS SADDLE AOYAMA 03-5464-2555)
※金額はすべて税込価格


FQ JAPAN DIGEST VOL.39(2016-17年冬号)より転載

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