子供の運動神経・能力を伸ばす科学的アドバイス
2016/11/04
幼児期・児童期は、人間の持つすべての運動パターンを習得する時期だ。専門化された運動の段階への移行が始まるのは早くても7歳以降なので、まずは生活に必要な動きの土台を身につける必要がある。ではそのためには、どんな運動をすればよいのだろうか。
幼児に必要な運動は”遊び”
「遊びは、“人間の発達”にとって欠くことのできない重要な営み」と話すのは、MKS幼児運動能力検査の中心的な役割を果たしてきた杉原隆教授。MKSとは、幼児期の子供を対象とした全国標準をもつ日本で唯一の運動能力検査。25m走や立ち幅跳び、ボール投げなど6種目を5段階で評価する。
ここで、下図の棒グラフをご覧いただきたい。運動指導をしていない園と、体操や水泳指導などをしている園を指導頻度が高い園と低い園に分け、3群の運動能力を比較したグラフだ。
幼児の運動能力全国調査の分析結果が示しているのは、幼児期の発達にとっていかに遊びとしての運動経験が効果的であるかという客観的なデータ。
最も運動能力が低かったのが、最も運動指導頻度の高い園という結果。体操が約6割、水泳、マットや跳び箱・鉄棒などの器械運動、縄跳びなどが5割弱、サッカーやマラソンなどが3割弱の園で指導されている。
「運動能力を高めようとして指導者が技術指導をしている園ほど、運動能力が低くなるという結果でした。何か1つの運動を指導するのは、幼児期の発達的特徴に合っていないという結論です」(杉原教授)。
では、幼児期、どのような運動がふさわしいのだろうか。
「子供の自己決定を尊重した遊びです。遊びの中で一生懸命取り組んだり、動きを工夫したり、自分でやりたい動きに挑戦したりする運動経験を通して、様々な運動能力が上達していくのが幼児期にふさわしい運動です」。
一流アスリートの多くは、幼児期・児童期には専門化されたスポーツとしてではなく、遊びとして多くの運動を経験していることが明らかになっている。
「テニスの錦織圭選手がラケットを握り始めたのはわずか3歳ですが、テニス以外にもサッカーや水泳、ピアノなど、様々な習い事をしていたことが知られています。本格的にテニスだけに専念するようになったのが12歳。それからでも遅くないのです」。