わが子の「自分で考える力」を育む! 育児における7つのアドバイスとは?
2020/05/14
昨今必要とされている感受性や柔軟性、想像力、問題解決力など「人生を生き抜く力」は親にとって"見づらく実感しにくい"成長だ。小西行郎教授が、子供の生きようとする力をサポートする7つのアドバイスをくれた。
※この記事は、2016年10月24日に公開した記事を編集したものです。
子供をサポートする
7つのアドバイス
学習塾やスポーツ教室などで、子供の学力や運動能力の成績がメキメキのびていく姿は、目で見てわかりやすく、成長を実感しやすい。
一方で、昨今必要とされている感受性や柔軟性、想像力、問題解決力など「人生を生き抜く力」は親にとって“見づらく実感しにくい”成長だ。子供のこれからの人生を考えたとき、どちらが大切かは言うまでもないだろう。
今回は、日本赤ちゃん学会理事長・同志社大学赤ちゃん学研究センター長の小西行郎教授による7つのアドバイスをご紹介しよう。
①ありのままの子供の姿を見る
小西教授:赤ちゃんの行動は自発的! かつて発達神経学は、赤ちゃんに何らかの刺激を与え、その刺激にどんな反射的行動をとるのかを神経学的に解釈する「反射学」が一般的でした。
しかし、私が昔、留学したオランダフローニンゲン大学のプレヒテル教授の研究の基本は、赤ちゃんの自然な行動を観察するというもので、それまでの小児発達神経学を覆すものでした。その研究から見えてきたものは、育児とは「ありのままの子供の姿を見て受け入れる」。
②赤ちゃんの自発的行動を邪魔しない
小西教授:強迫観念にかられ「何かしなくては」と思わないのが重要。幸せに育っているかを判断する指標は「赤ちゃんが自ら動くことによって周囲に働きかけているかどうか」。
育児とは管理ではなく、見守るという単純作業を赤ちゃんの発達に寄り添って行うこと。かつてこれほどまでに子供が管理された時代はありません。脳科学が注目されるようになり、育脳だ、早期教育だと騒がれるようになりましたが、実際、科学的に立証されているモノはそう多くはありません。
③反抗期は成長のエネルギー源
小西教授:反抗期は一般的に、2~4歳と中学後半~高校生の2つ。どちらにも共通する子供の変化は、「それまでなかった能力を獲得し、自立への道を歩み始める」ということ。問題行動は、大人の都合で考える「あるべき姿」との不一致。
噛む、叩くという行動に対しては「ダメ!」と叱るのではなく、何が本当に訴えたいことかをよく考えてあげること。パニックも「治さなければいけない=悪い行動」ではなく、「発達の前触れ=良い行動」と受け止めましょう。
④ただ褒めるだけはNG
小西教授:褒めることにも弊害があります。些細なことを褒め続けると当たり前になり、褒められないとすねる子もいるからです。ただし、褒めるのは「悪」ではありません。
効果のある褒め方は「子供をよく観察する」「適切なタイミングで」「適切な言葉で」。そして「その考えは違う」と否定せず、子供の話によく耳を傾けて「そういう考えもあるな」と認めてあげることが大切。子供を本当に理解するのは時間のかかる作業。でも、そこにしか子供の真の姿はないのです。
⑤人格ではなく成果を褒める
小西教授:自分で考えて行動しようとしている子供の「先回り」と、失敗を回避させる「根回し」は、しない方がいいことが多いです。また、「なぜこうしなかったのか?」と根掘り葉堀り聞いたり、説教したりするより、「次はどうするか」を見ることも大事。
言葉がけは、泥だんごを作ったなら、「泥だんごを作ったお前はスゴイ」ではなく、「すごい泥だんごを作ったね」と子供を褒めるより泥だんごを褒める。すると子供は誇らしげに説明してくれて、親子のコミュニケーションも膨らんでいきます。
⑥触れたいものに触れさせる
小西教授:いちばん大切なのは「触覚」です。しかし、日本の育児は視聴覚が中心で、「触る」ことがないがしろにされています。汚い、危ない、散らかすと片付けが面倒などの理由から、なるべくものに触らないようにしています。
しかし、赤ちゃんが自分の身体を触ったり、指しゃぶりをして自分の身体を確認したり、自発的に周りにある他のものを触るのは、触りながら、見て「なんだろう?」と考えることですから、赤ちゃんの発達には不可欠なことなのです。
⑦夫婦で助け合うのが本当のイクメン
小西教授:育児書に「叱るな。もし間違って怒ってしまったら子供に謝ろう」などと書かれているのがありますね。しかし、イライラや自己都合で叱るのも人間だから当たり前のこと。叱ったり褒めたりするバランスが大切です。
それより、育児書が言うことを鵜呑みにしてそれを押し付ける父親の存在が、母親の育児不安の原因になることもあります。育児は、育児休暇の時だけ行うものではなく、一生続くもの。夫婦で助け合って育児するのが本当のイクメンです。
PROFILE
小西行郎教授
日本赤ちゃん学会理事長・同志社大学赤ちゃん学研究センター長。
1947年、香川県生まれ。主な著書に『赤ちゃんと脳科学』(集英社新書)、『はじまりは赤ちゃんから』(赤ちゃんとママ社)など多数。
文:MIKAKO HIROSE
FQ JAPAN VOL.39(2016年夏号)より転載