『男が育児できない日本死ね』執筆者の心理とは?
2016/06/03
我々が仕事・育児の両立で、抑えきれないほどのストレスを抱えてしまったとき、一体どうすればよいのだろうか。産業医として多くのビジネスマンたちを診てきた精神科医・香山リカ先生に聞いた。
少し前、「保育園落ちた日本死ね」のブログにつづき、とある育児中の男性が書いた「男が育児できない日本死ね」という匿名ブログが話題になった。
我々がこの男性のように、仕事・育児の両立で、抑えきれないほどのストレスを抱えてしまったとき、一体どうすればよいのだろうか。産業医として多くのビジネスマンたちを診てきた精神科医・香山リカ先生にお話をうかがった。
日本の父親は過渡期にある
問題のブログを読んだとき、日本は変わったなぁと思いました。昔は、ダムの工事に従事していた父親が、子供の死に目にも会わずに仕事をやり遂げたことを「美談」として表現していた映画が、学校の推薦作品になっていましたから。今は「子供が小さいうちはできるだけ一緒にいたい」とか「育児で大変な妻を助けたい」とか、男性の価値観も変わってきていますよね。一方で、産業医の立場から会社を見ていると、まだまだ長時間労働が当たり前のところが多く、育児参加が難しいのもわかります。変わろうとしている会社も多いですけどね。
“幽体離脱”して見渡そう
このブログを読んでみると、書き手の男性も古い価値観に縛られていることがわかります。「大黒柱として稼ぐ」とか「伝統的家族観」とかいうのは本人の思い込みです。「転職して収入が下がったら困る」と決めつけて男性は口にも出さず、勝手に追い込まれている感じがします。奥さんの方は案外「育児に参加してもらえるなら、むしろ転職して郊外に住む方がいい」というケースはよくあります。この男性と同じように追い詰められている人は、幽体離脱じゃないけれど、一度自分の置かれた環境を俯瞰してみるといいです。そうして周りを見渡せば、会社や自分の身近に、良き相談相手が見つかるかもしれませんよ。
香山リカ RIKA KAYAMA
東京医科大卒。精神科医。豊富な臨床経験を活かして、現代人の心の問題を中心に、新聞や雑誌など様々なメディアで発言を続けている。
香山リカ先生連載中の「FQJAPAN」最新号とバックナンバーはコチラから!
www.fujisan.co.jp/campaign/fqjapan-web/ap-pub-web-fqj
Text » TAKESHI TOYAMA
FQ JAPAN VOL.39(2016年夏号)より転載