男性の育児・家事×イクボス=女性の活躍する社会
2015/09/08
最近、私のところにも「女性活躍推進」に関する取材申し入れが増えている。そこではいつも、「『女性活躍』と『男性の育児家事参画』『イクボス』」は3点セットだ」と答えている。
8/28に国会で可決・成立した「女性活躍推進法」は、女性管理職の割合について、企業や自治体にも目標設定などを義務づける法律で、国は2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上にまで引き上げることを目標としている。
現在、日本の女性管理職はおよそ11万人だが、2020年に30%に到達すれば、その数はおよそ4倍の40万人となる。
また、都内などの百貨店ではすでに女性服売り場を大幅に改装し、女性管理職をターゲットにした高価なビジネススーツなどが売れているという。女性管理職が生み出す経済効果は、新たな市場への広がりも期待できそうだ。
最近、私のところにも「女性活躍推進」に関する取材申し入れが増えている。そこで聞かれる、“子供のいる女性のキャリア”という質問には毎回、「『女性活躍』と『男性の育児家事参画』『イクボス』」は3点セットだ」と答えるようにしている。
私がこれまで出会った、育児と両立しながらも、仕事で満足のいく成果を出して輝いている女性のパートナーは、たいてい「イクメン」だし、職場には育児に対する理解と配慮がある上司=「イクボス」がいるからだ。やはり女性活躍には、そういった「環境要因」が重要であり、そちらサイドへの法制度の整備や支援も忘れてはならないのではないか。
メディアなどで「どうすれば女性活躍は進むか?」という題材を取り上げるなら、前向きに仕事をしている女性管理職の方の「夫」や「上司」を取材し、女性の活躍のために彼らがどう機能しているかを紹介することで、個人・行政・企業は、より具体的に「どうすればいいか」「何をすべきか」が分かると思う。
また、企業組織で正社員として働くことだけが女性活躍ではない。仕事は適度にこなし、NPOなど社会事業で輝く「パラレルキャリア」の人をたくさん知っているし、料理や整理術など家事で有名人になったり、コミュニティビジネスで起業している女性もたくさんいる。
私たちは、とかく国の成長戦略として経済成長を軸に「育休」や「マミートラック」などの文脈で女性活躍を語りがちだが、そうではない生き方を選ぶ女性の多様性も認め、広い視野で女性活躍を捉えていくべきではないだろうか。それは裏を返せば、男性もコーポレート・ラダー(出世への階段)を登るだけでない、多様な生き方・働き方ができる時代になったということでもあるのだ。
NPO法人ファザーリング・ジャパン 代表
安藤 哲也(TETSUYA ANDO)
1962年生まれ。2男1女の父親。出版企業やIT系企業を経て、2006年、NPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ)を立ち上げ、5年間代表を務める。一時期は副代表であったが、2014年に再度代表に就任。NPO法人タイガーマスク基金代表。「パパ’s絵本プロジェクト」メンバー、厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進チーム顧問、内閣府・男女共同参画推進連携会議委員、子育て応援とうきょう会議実行委員、にっぽん子育て応援団団長、ラジオパーソナリティなどその活動は多岐に渡る。最新著書に『父親を嫌っていた僕が「笑顔のパパ」になれた理由』(廣済堂新書)がある。
●「FJ代表・安藤哲也の男の育児“ファザーリング”最前線」記事一覧
https://fqmagazine.jp/tag/fathering/
●「イクボス集中講座」記事一覧
https://fqmagazine.jp/tag/ikuboss/
(2015.9.8up)