家族との時間は量より質
2015/05/11
育児・教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏による月イチ連載コラム。今回のテーマは、時間に対する意識の持ち方について。
時間の量を追い求めると悪循環にはまる
仕事が忙しくてなかなか家族との時間をとれない。育児する時間がない、家事する時間がないというお父さんは多いでしょう。そんなとき、多くの人は「仕事を効率化して家族との時間をできるだけ増やそう」と考えるのではないでしょうか。でも、ちょっと待ってください。
家族時間の量を追い求めると、どうやって仕事を早く終えるかばかりに意識がいってしまいます。仕事を早く終えること自体が自己目的化していくのです。結局頭の中は仕事のことで占領されてしまいます。それじゃ、本末転倒ですよね。この逆説になかなか気付けない人が多いんです。
これまでよほど仕事をさぼっていた人でもない限り、仕事の時間を短縮して、家族との時間を捻出しようとするのはそもそも無理筋です。絞りきったはずの雑巾からさらに一滴水を絞り出すみたいに常に限界に挑戦することになっちゃう。だから続かない。そして「子育てと仕事の両立なんて無理!やーめた!」となっちゃう。
しかも、どうしたって自分の努力じゃ超えられない壁もある。仕事の内容を整理しなおして、「効率化に成功!」なんてした矢先に、異動を命じられたりなんて……時間の量は水物ですよ。
家族との時間を大切にしたいと思っているのなら、意識を向けるべきは「仕事を早く終わらせる方法」ではなく、「家族との時間そのもの」であるべきです。それなのにまず仕事を終わらせることに意識をもって行かれること自体、無意識が仕事優先の価値観に乗っ取られている証拠なのです。
質を追い求めれば、量は後から付いてくる
だから、「仕事は忙しいけれど、もっと家族との時間を大切にしたい」というご相談をいただいた場合は、「無理しないで、今ある時間をできるだけ濃くする方法を考えましょう!」ってお返事をすることが多いです。家族と過ごす時間の量を増やすことには限界があっても、質を高めることはいくらでもできるはずなんです。家族時間は量より質なんです。
ひとまず量は後回しにして、質を追い求めるようになると、父親の意識が直接家族との時間に向けられます。すると仕事優先の価値観に乗っ取られていた無意識が、家族との時間に向けられるようになります。
人間の言動の9割以上は無意識の作用によって決められていますから、無意識が家族との時間に向かえば、言動が変化をはじめます。家族との時間を一番に考えてライフスタイルを調整しはじめるのです。無意識の作用で、ほとんど自動的にそうなります。特に強く意識しなくても、じわりじわりと家族との時間が増えていきます。つまり質を追い求めれば、量は後から付いてくるのです!
時間の量を追い求めている限りはそのような無意識の変化は起こりません。だからいつまでたっても「仕事が忙しくて家族との時間が取れない……」「仕事と育児の両立はつらい……」と嘆き続けることになるのです。
私のサイト「パパの悩み相談横丁」に「時間がない……」という内容の相談を寄せる父親たちは、大概この悪循環にはまってしまっています。そこで「家族時間は量より質ですよ」とアドバイスすると、悪循環から抜け出すことができるようになります。お試しあれ!
おおたとしまさ(TOSHIMASA OTA)
株式会社リクルートを経て独立。男性の育児・教育、子育て夫婦のパートナーシップ、無駄に叱らないしつけ方、中学受験をいい経験にする方法などについて、執筆・講演を行う傍ら、新聞・雑誌へのコメント掲載、ラジオ出演も多数。
おおたとしまさの著書一覧
●おおたとしまさ氏の記事 一覧
https://fqmagazine.jp/tag/fathers-eye/
(2015.5.12up)