溺愛されれば、子供はポジティブなオーラを放つ
そういう子がたくさんいればいじめは減る
2014/09/09
可愛い子を持つ親としては、他人事ではすまされない。明日は我が身である。親であれば誰でも、我が子にはいじめる側にもいじめられる側にもなってほしくはない。できれば傍観者にもなってほしくない。そのために、子供が小さなうちから父親にできることは何か?
人間の弱さと恐怖と心の闇を知り尽くした鈴木光司が、
我が子をいじめる側にもいじめられる側にもしない方法を伝授する!可愛い子を持つ親としては、他人事ではすまされない。明日は我が身である。親であれば誰でも、我が子にはいじめる側にもいじめられる側にもなってほしくはない。できれば傍観者にもなってほしくない。そのために、子供が小さなうちから父親にできることは何か?
「いじめを阻止しなさい」が堂々と言える父親かどうか
いじめをなくす方法とか、いじめの問題をきれいすっきり解決する方法とか、そういうのはないと思う。いじめ問題が報じられると、学校の対応に矛先が向かうことが多いけれど、学校がしっかりしていればいじめがなくなったり、いじめが解決したりする訳じゃない。だけど、いじめの少ない学校とか、いじめが過激になりにくい社会というのはみんなの心掛けで作れるんじゃないかな。
その前提でいうならば、本質的な意味で大事なのはいじめる側へのアプローチでもいじめられる側へのフォローでもない。どちらにもならない子供をいかに育てるかということ。
いじめられもしないし、いじめもしない子供は、誰とでも手を結ぶことができて、ポジティブなネットワークを作れるんだ。僕はそういう人間のことを「ハブ」と呼ぶことにしている。ハブと手を結んでいると、いじめる側にもいじめられる側にも巻き込まれるリスクが激減するんだ。
僕が高校2年生のとき、いじめられている友達がいた。僕は彼と友達になった。そうしたら、彼はいじめられなくなったんだ。僕がハブの役割を果たして、「鈴木の友達をいじめちゃいけないよな」という雰囲気になったんだ。
だから親としては、子供がハブになるように育てなきゃいけない。ハブに育てるためのコツは、一言で言えば溺愛すること。愛で満たされた子は自信があり、自信があるから精神的自立も早い。ポジティブなオーラを発する子になるんだ。溺愛というと甘やかすことだと勘違いする人も多いけど違う。溺愛とは愛情をたっぷり注ぐこと。やたらとモノを買い与えたり、わがままを聞いてやったりするのは、単なるスポイル。「君のことを24時間心から愛しているんだ」ということを親が素直に子供に伝えればいい。「可愛いね。愛しているよ」。
ベタベタ、チュッチュ。それでいい。ハブ的な人物に育ってくれたなら、さらに、いじめられている子にも手を伸ばしてあげられるようなを与えなければならない。もし子供がいじめを目撃して、自分がどう振る舞えばいいのか迷っているようなら、「困っている子に手をさしのべてあげなさい。君も辛い思いをするかもしれないけど、その勇気が君の人生を必ず切り拓く」と言って励ましてあげて欲しいと思う。
そこで子供に説得力を感じてもらえるかどうか。それまでの父親の生き様が、子供の目にどう映っていたかがわかる瞬間でもあるよね。父親は常に生身でぶつからなくちゃいけないんだ。
PROFILE
鈴木光司
1957年生まれ。作家。2人の娘を持つDAD。1990年「楽園」(新潮文庫)で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞しデビュー。その後「リング」「らせん」(ともに角川ホラー文庫)が大ヒット。元祖イクメンとしてFQ JAPAN創刊時より連載ページで自身の育児や愛妻術など父親としてのあり方を提言。
※FQ JAPAN vol.24(2012年秋号)より転載
Photo >> HAYATO IMAI Text >> TOSHIMASA OTA
(2014.9.9up)