ママ金融教育家の櫻井かすみさんに聞いた!小学生からはじめる「金融教育」のコツ
2025/12/20
物価高や新NISA、こどもNISAなど、お金の話題が尽きない昨今。「我が子にも金融教育が必要?」と考えるパパ・ママが増えている。今回は、ファイナンシャルプランナーで1児のママである櫻井かすみさんに、家庭でできるお金の教育について伺った。
稼ぐことより
「自分の価値観」で使う力を
――最近は子どもの金融教育への関心が高まっていますが、櫻井さんはいつ頃から教育が必要だと感じられたのでしょうか?
きっかけは、私たち親世代のお金に関するリテラシーの低さに気づいたことです。私は大人向けに株式投資のスクールを運営しているのですが、卒業生の多くが「もっと早くお金について学びたかった」と口を揃えます。私たちが子どもの頃は「お金の話は下品」と言われて育ちましたが、知識不足はそのまま「お金の失敗」に直結します。だからこそ、小さいうちから学ぶ必要があると考えたのです。
――なるほど。では、具体的にお金の「稼ぎ方」を教えるということでしょうか?
いえ、儲け方を教えたいわけではありません。伝えたいのは「幸せに生きるためには、お金の知識が必要なんだよ」ということです。
大切なのは、大金の手に入れ方ではなく、自分の価値観に見合ったお金の使い方ができること。お金の知識を通じて、自分の人生を豊かにし、自分なりの幸せを見出す能力を育てる。それこそが、本当の意味での「お金の学び」だと考えています。
小さな失敗体験が
将来の「大怪我」を防ぐ
――家庭でできる第一歩として、何から始めればよいでしょうか?
まずは、日常の場面で「お金の話」をすることから始めましょう。 例えば夕飯の時、「この野菜はA店では100円、B店では150円だったよ。なぜ違うんだろう?」といった会話をしてみてください。気軽な雑談ですが、そこから小売店、問屋、市場の存在、さらには天候や産地による原価の変動など、お金と社会のつながりが見えてきます。また、可能なら家のお金の事情を話してください。親が包み隠さず話すことで、子どもは「お金の話は悪いことじゃない」とポジティブに捉えられるようになります。家計を伝えることに抵抗がある方は、日本の平均年収を基準に話をすると良いでしょう。
――子どもの年齢的にはいつ頃が適していますか?
人それぞれですが、目安としては小学校入学のタイミングが良いかもしれません。算数の授業で数字に触れる機会が増えるので、その時期に合わせて家庭内の会話を増やしていくのがスムーズです。
――「おこづかい」のあげ方で悩む親御さんも多いです。
おこづかいは、計画性や価値観を学ぶための重要なツールです。ここでのポイントは「どんどん失敗させること」。 もらったその日に全部使ってしまったり、本当は欲しくないおもちゃを買って後悔したり。そういった経験を小さいうちに積ませてあげてください。
私自身、過去に貯金ゼロの時期が2回、投資詐欺に3回あった経験があります。大人になってからの失敗は取り返しがつかないことも多いですが、子どもの頃の失敗なら傷は浅くて済みます。小さな失敗を繰り返し、自分にとって本当に価値ある使い方は何かを学んでいくことが大切です。
「3つの貯金箱」で
お金と社会の関わりを学ぶ
――失敗を学びにつなげるための、具体的な方法はありますか?
おこづかいのあげ方としては3つを提唱しています。1つ目は月額制。2つ目は必要なたびに渡すその都度制。3つ目は月額性と都度性をミックスしたあげ方。それぞれメリット・デメリットがありますので正解はありませんが、ポイントは親子で話し合うこと。そして双方が納得することです。例えば、まずは月額制で始めてみる。親子どちらかがその制度に違和感を感じたら、親子で話し合ってその都度変える。親の都合で決めると、何かあったときに子どもは親のせいにします。おこづかいをあげる目的は、計画性や価値観を学ぶためであることを忘れず、対話の時間は大切にしてほしいです。
――対話の重要性は理解できたのですが、ちゃんと子どもに伝えられるか不安です。
「おこづかい帳」 を親子でつけてみるといいと思います。私が提案するおこづかい帳には、金額だけでなく「満足度(星マーク)」と「ひとことメモ(気持ち)」を書く欄があります。これを記録することで、「あの時これを買ってどう感じたか」を視覚化でき、自分が何に幸せを感じるのかを自覚できるようになります。ここで重要なのは、どんなお金の使い方だろうと、子どもが価値を感じていればOKということ。幸せの価値は人それぞれ。親が口出ししたくなる時もありますが、ぐっと我慢。意見を伝えるなら、お小遣い帳を見ながら振り返りのタイミングで。おこづかい帳ですが、親が代筆してもかまいません。大事なのは親子で記録をとり、振り返ることです。
――見えるようになると子どもも理解しやすいですね。では、よくないお金の使い方についてはどうお考えでしょうか?
お金は使い方次第で、トラブルの種にもなれば、誰かを助ける力にもなります。その判断をするために、私は、「自分のために使うお金」「将来のために貯めるお金」「人や社会のために使うお金」の、3つの貯金箱を用意することをオススメしています。例えば、友達とのお金の貸し借りは基本的にNGですが、どうしても助けたいときは「人や社会のため」の箱から出すならOKというルールであれば貸してあげてもいいでしょう。物理的に箱を分けることで、欲望のままに使うのではなく、将来の目標や人への思いやりといった「計画性」と「社会性」を育むことができます。
――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
お金は怖いものではなく、私たちが幸せに生きるための道具です。 おこづかい帳や貯金箱を使って自分の価値観や幸せに感じるものがわかるようになる。それこそが、お金の教育の本質だと考えます。子どもの生きる力、考える力、そして自分が幸せになるための力を親子で一緒に育んでいってください。
書籍紹介
『母が子に伝えたい大切なお金と社会の話』

「お金の話は家でしにくい…」そんな親の悩みに寄り添う一冊。著者の櫻井氏が自身の失敗談を交え、親子で学べるお金の教育法を伝授。「投資」「為替」といった社会の仕組みから、お小遣いの具体的な渡し方、詐欺から身を守る方法までを網羅。単なる節約や蓄財ではなく、お金を通じて「自分の幸せ」や「社会との関わり」を考える力を育む。すぐに実践できる特製お小遣い帳のダウンロード特典付き。
教えてくれた人
櫻井かすみさん

大阪府出身、法政大学大学院、小学校教諭免許保有、ファイナンシャルプランナー、株式会社トウシナビ代表。無職、ニート、主婦、パート、派遣社員、国内大手上場企業勤務、外資系企業勤務、個人事業主、経営者と、多様な働き方を経験。離婚、無職、貯金ゼロ2回、投資詐欺被害3回などお金に散々振り回されるも、お金の知識を構築し30代で純資産1億円を形成することに成功。初心者から上級者まで幅広く投資を教えてきており、お金の守り方&増やし方を延べ3000人以上に指導してきている。最近では、親子向けのお金の講演や教育イベント登壇も急増中。著書に『母が子に伝えたい大切なお金と社会の話』(Gakken)
文/久保木陽介





