「料理はプレゼントと一緒」市原隼人が語る、幼少期から続く食への想いと母の存在
2025/10/14

給食マニアの教師と生徒の熱い闘いを描く学園コメディシリーズ最新作、映画『おいしい給食 炎の修学旅行』が10月24日(金)に公開する。主人公の甘利田幸男(あまりだゆきお)を演じる市原さんに、作品の見どころから幼少期の食の思い出を伺った。
1. 主人公・甘利田の魅力は 素直に負けを認める潔さ
2. 1番の主役は子どもたち 自ら来たくなる現場を意識
3. 料理はプレゼントと一緒 喜んでくれることが嬉しい
4. 映画『おいしい給食 炎の修学旅行』詳細
5. 市原隼人さんプロフィール
主人公・甘利田の魅力は
素直に負けを認める潔さ
2019年のテレビドラマから始まり、これまでにドラマ3シーズン、劇場版3作品と、作品が公開されるたびにファンを増やし続ける『おいしい給食』。作品のコンセプトは一貫して「子どもから大人まで、誰もが楽しめるコメディー」であると同時に、80年代の古き良き日本の道徳心が詰め込まれた、地に足のついた社会派作品でもある。
今作は修学旅行編ではあるものの、甘利田と同じくらい給食を愛してやまない生徒・粒来ケン(田澤泰粋)との「どちらがおいしく食べるか」という、ライバル対決は旅先でも健在だ。
本作で印象に残ったセリフを伺った。「甘利田が粒来ケンとの対決で、自分よりも食を堪能する姿に『負けた、また負けた……』と負けを認めるセリフです。シリーズを通して甘利田を象徴する一言です。私も甘利田と同じく子どもに対して素直に負けを認められる人間でありたい。相手が子どもでも大人でも関係なく、『負けた』と言えるのは潔いですし、素晴らしいことだと思います。大人のそういった姿を見て、子どもはいろいろなことを受け止める勇気がもらえることもあると思うんです」。
1番の主役は子どもたち
自ら来たくなる現場を意識
中学校が舞台の本シリーズでは多くの生徒が登場する。生徒役を演じるのも、10代の子どもたちが中心だ。市原さんは「1番の主役は子どもたち」を信条に、みんなが楽しめる現場づくりを心がけてきた。
「『撮影現場に来なさい』『こういうふうに芝居をしなさい』と声をかけるのではなく、子どもたちが自発的に撮影現場に来たくなる、そして、自分から積極的に何かをしたくなるような環境づくりを心がけてきました。カットがかかると、みんな怪獣のように『うわーっ』て騒ぎ出すんですよ(笑)。そういう姿を見ると『ああ、現場を楽しんでくれてるんだな』と、幸せな気持ちになりました」。
そんな市原さんの思いは、子どもたちにもしっかりと伝わっているようだ。映画の舞台のひとつ、岩手県での撮影後には、子どもたちによる、わんこそば大会が繰り広げられたという。
「実際のお店で撮影させていただいたんですが、撮影が終わった後にお店の方が子どもたちに『私たちが付き添うので、いくらでもわんこそばやりましょうよ!』と言ってくださったんです。『先生! 100 杯以上食べれました!』『100 杯はいけなかったです……』など、色々な声を子どもたちからもらいました。どこまでも人道的で人間愛にあふれた現場の雰囲気は、作品にもにじみ出ていると思います」。
料理はプレゼントと一緒
喜んでくれることが嬉しい
大の給食好きだったという市原さん。おかわりを賭けたじゃんけんも毎回参加していたと話す。家庭では小さい頃からキッチンが遊び場で、母の料理を手伝っていた体験が現在にもつながっているという。
「小学校の中学年頃になると、子ども用の包丁を持って、自然と母の手伝いをするようになりました。母の後を付いて行っては『何か手伝うことある?』と聞くような子どもでした。中でも覚えているのが、天ぷらづくり。我が家はご近所づきあいが活発だったので、天ぷらを大量に揚げるんです。一生懸命母と一緒に作った天ぷらをご近所さんの家に配って回ったのはいい思い出です。料理はプレゼントに近いものと思っているのですが、当時も誰かが喜んでくれたら嬉しいなと思いながら作っていました。ご近所さんも『ありがとう』と言ってくれるので、次はもっと上手に作ろうって頑張っていました」。
市原さんは現在、11本の包丁を所有。朝から築地市場に行って食材を仕入れたり、休みの日には友人を集めてご飯をふるまったりするほどの料理好きだ。
「料理好きに育ったのは、キッチンが遊び場のような感覚だったので。母が怒らずに、自由に料理をさせてくれたからだと思います。微笑ましく見守ってくれていたことが現在に繋がっていると思うと、ちょっと嬉しくなりますね」。
最後に、子育てに奮闘する読者にエールをいただいた。
「どんなオリンピック選手でも偉人でも、最初は上手くできなくて当たり前。はじめての子育ても同じだと思います。でも、奮闘しながらも愛情を持って接すれば、自分なりの育児のやり方や子どもとの関わり方が必ず見えてくる。その日々が、すごく愛おしくて、かけがえのない思い出になっていくのではないでしょうか。今は、たくさん思い出を作って、それをタイムカプセルに埋めるみたいに日記なり写真に残しておいて、10年後、20年後、お子様と笑い話ができる日を楽しみに、大切な時間を紡いでください」。
本作には、市原さん自身も救われたという胸を打つ言葉や、メッセージがたくさん込められている。鑑賞後は、家族でお腹いっぱい美味しいご飯を食べてほしい。きっと身体も心も活力がみなぎるに違いない。
DATA
映画『おいしい給食 炎の修学旅行』
2025 年10 月24 日(金)公開
1980 年代の中学校を舞台に、給食をこよなく愛する教師・甘利田幸男(市原隼人)と、給食マニアの生徒による“給食バトル”を描く人気シリーズ最新作。舞台は90 年初夏の函館から青森・岩手への修学旅行へ。地元グルメに心躍らせる甘利田と、挑戦を仕掛ける生徒との攻防、さらにかつての同僚との再会やハプニングが加わり、旅は思わぬ波乱の展開に。笑いと食欲が止まらない給食スペクタクルコメディ。
出演:市原隼人 / 武田玲奈 田澤泰粋 栄信 田中佐季 片桐仁 いとうまい子 赤座美代子 六平直政 高畑淳子 小堺一機
監督:綾部真弥
配給:AMGエンタテインメント
PROFILE
市原隼人
HAYATO ICHIHARA
1987年生まれ、神奈川県出身。2001年に映画『リリイ・シュシュのすべて』で主演デビュー。連続テレビドラマ『ウォーターボーイズ2』(2004年)から知名度が高まり、テレビドラマ『ROOKIES』(2008 年)でブレイク。同作品の映画「ROOKIES-卒業-」は大ヒットを記録した。2019年よりスタートした『おいしい給食』シリーズでは、ドラマシリーズ全3作品、劇場版3作品にて“給食愛”あふれる熱血教師・甘利田幸男役で主演を務める。2025年放送のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』では、盲目の大富豪という難しい役どころを好演し、演技力の幅広さで注目されている。1児の父親。
シャツ 35,200円(ティントリア マッテイ/トレメッツォ TEL 03-5464-1158)、他スタイリスト私物
写真/藤岡雅樹 文/宮㟢千尋
スタイリング/小野和美 ヘアメイク/大森裕行(VANITÉS)
FQ JAPAN MAMY&KIDS VOL.73(2025年秋号)より転載