子育て支援制度だけじゃない?住む街探しで重視するべき8つのポイント
2025/05/08

自分の好みに合わせて住む街をデザインするのは難しい。となれば、理想とする子育て環境や教育環境、ライフスタイルに合った政策を打ち出している街を探し出すことになる。8つのポイントを参考に街選びの優先順位をつくり、後悔しない街選びをしよう。
1. こども医療費の無償化
2. 給食の無償化
3. 治安の良さと安全な街づくり
4. 学童保育の充実度
5. 病院・診療所の充実度
6. 公園面積と数
7. 保育施設の充実度
8. 教育機関の充実度
こども医療費の無償化
子どもが多い、あるいは子どもが病院に行きがちな家庭に限らず、育児に要する医療費は気になる。そうした悩みを解消してくれるのが子ども医療費助成制度だが、対象年齢や内容は自治体によって異なる。実例を紹介しよう。
中野区では「中野区子どもの医療費の助成に関する条例」に基づき、0歳から18歳までの子どもが受けた保険診療費の自己負担分が助成される。助成区分は以下の通り。
・就学前「乳幼児医療証(マル乳医療証)」
・小学生と中学生「子ども医療証(マル子医療証)」
・高校生相当年齢「高校生等医療証(マル青医療証)」
医療助成の有無を確認して損はない。また、自治体が提供する支援策は子ども医療助成制度だけではないため、総合的に判断したほうがいいだろう。
給食の無償化
給食を無償化している自治体の数をご存じだろうか? 文部科学省の調査では、公立小中学校の児童生徒全員の給食費を無償化している自治体は全国の3割にあたる547(2023年9月時点)。2017年度に比べると、約7倍に増えた。また、支援要件を設けるなど一部の児童生徒を対象にして「無償化を実施中」と回答した自治体も含めればその数は722。無償化が広がっていることがうかがえる。
しかし、すべての自治体が無償化に踏み切れるかは費用面も問題もあって不透明。気になる方はぜひ調べてから引っ越しを考えたほうが良さそうだ。
治安の良さと安全な街づくり
昨今、治安悪化という言葉が紙面を騒がす機会が増えているだけに、自分だけでなく子どもも守らなければならないパパやママは安心・安全が気になるはず。道の幅、ガードレールの有無、街頭の数、人通りの数など、安心・安全を測れる指標は数えきれないほどある。なかなか把握しづらいのが実情だが、警察が発表している「人口当たり刑法犯認知件数」や「人口あたり交通事故件数」などは手掛かりになりそうだ。あるいは、役所へ足を運ぶなどして今後の開発計画をチェックしておくのも将来的な安心・安全を手にするための手助けになるだろう。
学童保育の充実度
盲点になりがちなのが学童保育(正式名称は「放課後児童健全育成事業」。地域によって呼び名は異なる)の充実度かもしれない。保育園を終えて晴れて小学生になったはいいが、小学校1年生の下校時間はおよそ13時~15時。1人で留守番させられる年齢とは言い切れず、仕事をしているパパやママにすれば帰宅までの「空白時間」が生まれる。そこを埋めてくれるのが学童保育。自治体ごとにさまざまなメニューが用意されているため、事前に調べておいたほうが無難だ。
病院・診療所の充実度
小さな子どもを育てる家庭では、予防接種や急な体調不良によって医師に頼るケースが多くなる。実際に病院に行かなくとも、近くに頼れる病院があることは不安解消につながるだろう。近所に欲しいのは大学病院や大きな病院である必要はなく、日常的なケアが受けられる病院で十分。気になる方は「人口1万人あたりの医師数」といったキーワードで検索してもいいだろう。
公園面積と数
子育てファミリーにとって公園はなくてはならない公共施設の一つ。近所に住む同年代と遊ぶことで子どもはコミュニティーを持てるし、パパやママにしても同じく子育て中のパパ友・ママ友をつくることができる。公園が遠いと忙しい時に連れて行くことができず、移動のストレスで子どもが不機嫌になるケースもあるため注意が必要だ。
ちなみに東京都江戸川区の公園面積が782万㎡(23区の1位)なのに対し、豊島区は23万㎡(23区の23 位)。公園の数で比べると練馬区が701個(23区の1位)で千代田区は51個(23区の23位)。数値が遊びやすさを約束するものではないが、地域差があることは知っておいたほうが良さそうだ。※引用:2022年度『東京都公園調書』
保育施設の充実度
こども家庭庁によると2023年度の保育所等数は3万9589カ所。2022年よりも345カ所の増となっている。未就学児はパパやママが送り迎えしなければならないだけに、転居を考えている保育施設の充実具合は調べておくべきものだろう。
『株式会社明日香』が保育園児を持つ保護者に実施した調査では、「見学前に、保育園を選ぶ際に意識したポイントを教えてください」という質問に対して保育園児を持つ保護者の6割以上が「家からの距離」と回答。なお、悪天候、次の子の妊娠、体調が悪いといった条件下でもスムーズに通園できる家と保育園の距離は0.5~1キロと言われている。言うまでもなく待機児童の状況も要チェック!
調査概要:保育園児を持つ保護者に実施した保育園を選ぶ上で重視しているポイントに関するインターネット調査(n=100、2021年1月実施)
教育機関の充実度
自治体内にある小学校や中学校の数も調べておきたいポイント。所在地もチェックしたい。小学生以上になれば、子どもだけでの通学になるだろうが、あまりにも通学距離が長いのは避けたいところ。文部科学省の「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」によると、小学校の適正な通学距離は4km以内とされているが、ちょっと遠い。個人差があるにしても、小学生の場合は距離1キロ、時間にして徒歩15分くらいを目安にしたほうがいいという意見が多いそうだ。
【まとめ】
● 自治体の子育て支援制度に加え、公園の数や学校までの距離など周辺環境の確認も忘れずに。
● 全てを満たす街を見つけるのは難しい。ライフスタイルに合わせて優先順位をつくり、条件を夫婦で話し合おう。
FQ JAPAN VOL.74(2025年春号)より転載