レスリング金メダリスト・文田健一郎「世界一強いパパから、“世界一のパパ”に」
2024/12/16
レスリング・グレコローマンスタイル60kg級、パリで金メダルを勝ち取った文田健一郎選手。1歳の娘・妻との絆でも感動を与え、第17回ペアレンティングアワード・スポーツ部門を受賞。その家族への想いとは?
1. 「メダル関係なく抱き締めてくれた娘」
2. 「子育てとスポーツの意外な共通点」
3. 「『世界一強いパパ』から『世界一のパパ』に」
メダル関係なく
抱き締めてくれた娘
東京五輪での銀メダルの悔しさをバネに、2024年パリ五輪では見事金メダルを勝ち取った文田選手。
1歳の娘さんと奥さんも現地に駆けつけ、マットのすぐそばで応援。決勝翌日には、娘さんが遠くから一生懸命走ってきて文田選手に抱きつく、微笑ましすぎる動画がSNSで話題となった。
「娘の前では負けたくないという気持ちで戦ったので、メダルも嬉しかったけど、娘はまだはっきり理解はしてないんですよね。でも、メダルとは関係なく、娘は僕を抱き締めてくれた。それがすごく嬉しくて、報われた気がしました」。
そんな娘さんは、最近テレビに自分が映ると反応してくれるようになったという。さらに、オリンピアンならではのエピソードも。
「五輪のマークを僕のマークだと思っていて、街中で見ると『パパ、パパ』って。覚えてくれたのがすごく嬉しいし、誇らしかったです」。
子育てとスポーツの
意外な共通点
今は1歳11ヶ月となってイヤイヤも出てきた娘さんに、日々いろいろな技で対応しているという文田選手。
「着替えを嫌がったら、『じゃあ○○(娘さんが好きなキャラクター)にお着替えもらってくるね』といって服を持ってくると着てくれたり(笑)。自分で考えて工夫しています」。
「怒ったり脅したりせず、大人が工夫する」という子育ての方針は、元幼児教育の先生だった奥さんから学んでいるという。
「日々反省もあるんですが、『やっぱり報酬で釣っちゃダメだね』とか、妻と一緒に振り返って話し合っていて、それが楽しいです。
二人でテレビを見てても、『うちではこうだね』『こういうやり方もあるね』って話し合ったり、とにかく話し合うのが二人とも好きなので、それが夫婦関係の秘訣かもしれません」。
そんな奥さんは、妊娠中はつわりが重かったそう。文田選手も全力でサポートした、と語る。
「スタバのメロンだけ飲める時期があったんですが、遠慮させないよう先にスタバに行ってから、『今お店だけど買っていこうか?』って電話したり。
練習と同じで、大変だけど必要なことだから、ただ耐えるもの、という風にはしたくなくて。妻がやりたいことや、食べたいもの、飲みたいものをなるべく叶えようとしていました」。
お互いに支え合う家族の絆が、文田選手の大きな力になっていると感じた。
「世界一強いパパ」から
「世界一のパパ」に
「パリ五輪では“世界一強いパパ”を目指して頑張っていましたが、次は強いだけでなく、この賞に恥じない“世界一のパパ”になりたい、という新しい目標ができました」。
ペアレンティングアワードの授賞式で、そう語った文田選手。
これからも、家族の絆を深めながらの活躍に期待したい。
PROFILE
レスリング選手/グレコローマンスタイル60kg級/2024年パリオリンピック金メダリスト/ミキハウス所属
文田健一郎
山梨県韮崎市出身。2017年の世界選手権では、グレコローマンスタイルの日本選手として34年ぶりの金メダルを獲得。19年の世界選手権で2回目の金メダルを獲得し、21年東京オリンピック代表となるが、決勝で敗れ銀メダルに。22年7月に結婚し、翌年1月に長女が誕生。初めて家族一緒に戦った2024年パリオリンピックで、念願の金メダルを獲得した。グレコローマンスタイルで日本選手がオリンピックの金メダルを獲得するのは、1984年のロサンゼルス大会以来、40年ぶりのこととなった。
文:FQ JAPAN編集部