【レビュー】極上の走り心地がドライブを楽しくする『アウディ RS 3 スポーツバック』
2023/06/07
ファミリーカーを選ぶときに重視することといえば、実用性だろう。しかし、実用性だけでなく、細部にまでこだわりたいのが本音ではないだろうか。ここでは、FQUKの編集者 ティム・バーンズ・クレイがいま気になるクルマのテスト走行を行い、その魅力をレビューする。
驚異的なパワーを発揮する
驚くほどの俊足
Audi RS 3 Sportbackは、A3のメガホットバージョンである。「Sportback」の狙いがわからない人に、簡単に説明しよう。単純にサルーンから派生した5ドアのハッチバックだと思わないでほしい。アウディの「Sportback」は、クーペの美しさにステーションワゴンの利便性を融合した粋なマルチプレイヤーである。「RS 3」は、そのフラッグシップとして送り出された高性能バージョンで、ハイパフォーマンスエンジンにquattro(クワトロ)と名付けられた最新のAWD(4輪駆動)システムを組み合わせている。ボンネットの中に隠されているのは、TFSIと名付けた2.5lの直列5気筒DOHC直噴エンジンで、これにターボチャージャーを装着している。
ターボ車はたくさんあるが400psという驚異的なパワーを発揮するスポーツモデルはあまり存在しない。 パワースペックは最高出力400ps(294kW)/5600〜7000rpm、最大トルクも500510N・m(51.0kg-m)/2250〜5600rpmを絞り出す。トランスミッションは7速デュアルクラッチ式ATで行う。停止から100km/hまでの加速タイム、それはわずかに3.8秒と、驚くほどの俊足だ。 最高速度は時速250km/h。オプションのスピードリミッター280km/hを選べば最高速度は280km/hまで引き上げられる。
速い走り以外の
多彩な魅力
速い走り以外にも多くの魅力を持っている。ベース車のA3A3は2021年にモデルチェンジして最新のMQBプラットフォームを手に入れ、新しい技術をふんだんに盛り込んだ。強靭な骨格を手に入れ、quattroにはアウディ車として初めてトルクスプリット機能が加わっている。コーナリング時に大きな負荷がかかる外側リアホイールの駆動トルクを増やし、アンダーステアを低減し、狙ったラインに無理なく載せることが可能だ。
また、ファットな19インチタイヤを履いているにもかかわらず、最高のハンドリングだけでなく良好な乗り心地を実現するなど、両方を高い次元で両立させている。これをアダプティブ可変ダンパーを採用することによって実現した。この技術のおかげで、日曜日にホットな走りを楽しむ週末の趣味グルマとしてだけではなく、日常のランナバウトとしても優れた乗り味を実現している。もちろん、サーキットを走行するのに適したモードを選べば、コンパクトクラス最速のラップタイムを叩き出す。
メルセデス・ベンツAMG A45よりもカリカリせず、クールな走りを楽しめる。それは悪いことではない。ご存知のようにメルセデスのAMG A45は攻撃性がすべてだが、RS 3はより洗練された走りを、誰にでも引き出すことができるからだ。
多くの走行モードを備えており、その1つ「Individual」は、サスペンション、トランスミッション、ステアリング、エンジン、さらにはエンジン音までもカスタマイズできる。
ドライブフィールはどうかと問われれば、直線では電光石火の速さと答えざるをえないだろう。エンジンは余裕たっぷりである。進化した4輪駆動のquattroは、コーナリングではトルクスプリッターが効果的に作動し、アンダーステアやオーバーステアを抑えた気持ちいい走りを楽しめる。フロントとリアに駆動トルクを上手に配分することによって意のままに走れ、その気になれば華麗なドリフト走行も可能である。アンダーステアとボディ のロールを上手に抑え込み、最高レベルのグリップを提供する。
洗練されたデザインの
インテリア
「RS3」 はあなたが期待するかもしれない官能的なエンジンサウンドを出さないが、これは欠点ではない。アウディの伝統的な5気筒エンジンが放つ独特の鼓動は残されている。だから問題はないだろう。
インテリアは、洗練されたデザイン。シルバーのトリム、シフトレバーの周りは光沢のあるピアノブラック、握りの太いステアリングホイール、視認性に優れた10.1インチのMMIマルチメディアインターフェイスなど、実に機能的だ。アウディバーチャルコクピットプラスは、マニュアルモードを選ぶと、回転を上げるにつれ、グリーンからイエロー、そしてレッドへと変わり、シフトタイミングを教えてくれる。ラゲッジスペースは282lと小ぶりだが、実用性を上回る魅力に溢れている一台だ。
DATA
Audi RS 3 Sportback quattro Launch Edition S tronic
最高速度:250km/h 155mph 0〜100km/h
加速:3.8秒
総合燃費:11.1km/l(WLTCモード)
エンジンレイアウト:直列5 気筒DOHC直噴ターボ(ガソリン)
最高出力:400ps(294kW)/5600〜7000rpm
最大トルク:510N・m(51.0kg-m)/2250〜5600rpm
パワー(PS):400
CO2排出量:205g/km
日本での販売価格:820万円
監修:片岡英明(モーター・ジャーナリスト)
FQ JAPAN VOL.66(2023年春号)より転載