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じいじ・ばあばの育児参加はあり?なし?社会学者・田中俊之が語る孫育ての注意点とは

仕事中心で生きてきた退職世代の男性。そんな元気な方におすすめなのが「イクジイ」になること、というのは、社会学者の田中俊之氏。祖父母の子供夫婦や孫との関わり方はどのようにするのが理想なのだろうか。

“仕事中心”という価値観で
生きてきたツケが一気に

これまで、「男は仕事だけしていればいい」という価値観で生きてきた現在の高齢者世代は、退職後、地域に知り合いがおらず、「妻との関係がうまくいかない」「趣味がない」などの悩みを抱えがちです。 “仕事中心”という会社的な価値観で生きてきたツケが一気にやってくるのです。

また残念ながら、これまでの「大企業に勤めていた」「偉い役職についていた」など、会社で溜めたポイントも地域社会では使えません。それが理解できないまま、全く経験のない世界に放り出されるのですから、苦しいのではないでしょうか。

そういった方は、まずは自治体などから同世代の集まりに参加して、自分の価値観の狭さに気づきながらだんだん地域になじみ、情報を得ていくことから始めましょう。

価値観の相違は
素晴らしい教育の機会

そしてそんな、まだまだ元気な退職世代の男性におすすめなのが「イクジイ」になることです。フルタイムの共働きが増え、パートや専業主婦であってもワンオペ育児は大変だという認識が広まったことで、塾の送り迎えや孫との留守番に、父親の手を借りる子供夫婦が増えているのです。

ただ、昭和的な価値観で生きてきた方と、子供夫婦の価値観は違うもの。「ゲームは1時間」など、ルールをあらかじめ伝えるのはいいですが、価値観まで踏み込んでお願いするのは無理がありますし、価値観が異なる人が教育に関わることは、孫にとって素晴らしい機会です。もし子供が何かダメなことをして、「だっておじちゃんがいいって言った」と言ってきたら、親はなぜそれがダメだと考えているのかを伝え、けれど人によって、多様な価値観を持っていることをぜひ教えてあげてください。

また、「イクジイ」はあくまでボランティアなので、何かいざこざが発生した時には、そういうデメリットを抱えても父親に頼むのか、お金を払ってプロに頼むかを考えてみましょう。「イクジイ」側も子供夫婦との摩擦で毎回嫌な思いをするなら、行かないほうがいい。

ただ、そもそもご近所に住み、孫を手伝えるほど子供との関係が良好な方は貴重です。もしもポジティブに、「育児にあまり参加できなかった分、孫にはやってあげよう」と考えられるなら、それはとても幸せなことだと思います。近くにいなくても、年に数回孫を預かって息子夫婦に息抜きをさせてあげるだけでも喜ばれると思いますよ。

これまでを否定せず
新しい価値を前向きに

最後にお伝えしておきたいのは、今の高齢者世代が、約40年間仕事をがんばってきた方々であるということです。「男は仕事、女は家庭」という価値観は古いと思われるかも知れませんが、当時はそれが当たり前でした。「イクジイ」自身もそれを否定するのではなく、新しい価値観を身に付けるワクワク感を持たれてはいかがでしょうか。

そして、専業主婦も実はとても大変な仕事なので、家族でお互いをねぎらい合ってください。定年後に新しい価値観を身に付けられる、そして、まだまだ長い人生の楽しみの1つに孫の成長が入ってくるなんて、最高の人生だと私は思います。

約8割のパパ・ママが祖父母の育児参加に賛成!


調査概要:株式会社ベビーカレンダーによる0歳~大学生の子供を持つパパ・ママへの「孫と祖父母の関係性」に関する意識調査(調査期間:2018年9月8日~9月10日・回答数:1,021名)

株式会社ベビーカレンダーが行った調査によると、約8割のパパ・ママが祖父母による育児参加を歓迎していることがわかった。その反面、約4割は、祖父母の考えにギャップを感じていることも判明。保育園への早期入園や育休取得期間が短かいことへの批判など、祖父母世代の子育て観を押し付けられることに戸惑ってしまっているようだ。

共働き世帯の増加に伴い、期待される「イクジイ」「イクバア」の活躍。新たな価値観を受け入れながら、孫育てを楽しんでみてはいかがだろうか。

【まとめ】
●世代間での価値観の違いは多様性を子供に教えるチャンス
●いままでの価値観を否定せず、前向きに新しい人生を楽しむ

PROFILE

田中俊之


社会学者。大妻女子大学 社会学専攻准教授。男性が男性だからこそ抱えてしまう悩みや葛藤に着目した「男性学」研究の第一人者として各メディアで活躍するほか、行政機関などにおいて、男女共同参画社会の推進に取り組む。著書に、『男子が10代のうちに考えておきたいこと』(岩波書店)など。


文:笹間聖子

FQ JAPAN VOL.66(2023年春号)より転載

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