潜在的待機児童は40万人!?
来春、小規模保育サービスが拡充
2014/06/17
家庭の育児と国の政策は切っても切れない関係にある。待機児童解消の新たな施策である公的保育について厚生労働省に伺った。
家庭の育児と国の政策は切っても切れない関係にある。待機児童解消の新たな施策である公的保育について厚生労働省に伺った。
「女性の働きたい」をサポートし、多様なニーズに応える公的保育
保育施設の不足による待機児童問題が深刻化してから10年以上が経ちますが、現在も、都市部を中心に年間2万数千人の待機児童がいます。
さまざまな施策により、近年保育所の定員は年間3〜5万人ずつ増えているのですが、待機児童の数は減っていません。なぜかというと、定員が増えるたびに、潜在的な需要が表面化するからなのです。つまり、働きたいと思っていても、あまりの待機児童の多さに働くのを諦めていた女性が、保育所の定員が増えると、「やっぱり、子供を預けて働きたい」と思い、入所申込みを行うのです。逆に言うと、子供を預けられる環境があれば働きたいと思っている女性が社会にはまだたくさんいるということです。
現在、来年度からの「子ども・子育て支援新制度」の実施に向けて、すべての市町村で、潜在ニーズも含めた保育ニーズ等を把握し、需給計画を作っているところですが、新制度に先がけて実施している「待機児童解消加速化プラン」では、約40万人分の保育の受け皿の整備を進めています。
現在、保育所の利用者は220万人強ですが、これを260万人強に増やす計算になります。ただ、待機児童の大半は0〜2歳児で、大都市部に集中しています。そのような中、従来のように、0〜5歳の定員を持つ、大きな認可保育園増やすという選択肢しかないのでは、必ずしも地域の実情に沿った対策が講じられません。そこで、新制度では、定員20名未満の小規模な保育サービスも、国として新たに財政支援を行うこととし、0〜2歳児特化した小規模な保育サービスを拡充することになったのです。
この小規模な保育サービスは、「家庭的保育(保育ママ)」、「小規模保育」、「事業所内保育」、「居宅訪問型保育」の4つのタイプに分類できます。「家庭的保育」や「小規模保育」は、保育者の自宅や公民館などで行うもの、「事業所内保育」は、企業の事業所の保育施設などで、従業員の子供に加えて地域の子供も保育するものです。
そして、いわゆるベビーシッターに該当するのが、「居宅型訪問保育」です。新制度では、保護者が疾病や障がいを持っている場合や、夜勤や休日勤務などで保育所に預けられない場合には、公的な財政支援の対象とする予定です。
保育サービスの多様化にともない、保護者の方々が気になるのは、保育の質の問題だと思います。先日、痛ましい事件(神奈川県 ベビーシッター事件)が起きたばかりということもあり、社会全体が敏感になっています。
小規模保育サービスは自治体ごとの認可事業になりますが、保育の質や人員配置については、認可園に準じるような基準を設けることになっています。居宅訪問型保育についても、スタッフには保育士の資格こそ求めませんが、高度な研修を修了し、保育士と同等の知識や経験を有することを職員の条件にしています。
女性の「働きたい」を実現するためには、安心して子供を預けられる仕組みづくり、そして質の高い保育環境の整備が不可欠です。また、正社員なのかパートなのかなど、希望する働き方もさまざまです。新制度では、利用者の多様化するニーズに対し、多様な選択肢により応えていきます。
竹林悟司さん
厚生労働省
雇用均等・児童家庭局 総務課 少子化対策企画室長
内閣府 子ども・子育て支援制度施行準備室併任
◆厚生労働省 www.mhlw.go.jp
◆子ども・子育て支援 www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/
Text >> FUKA SASAHARA
※FQ JAPAN vol.31(2014年夏号)より転載
(2014.6.17up)