平日は仕事で忙しいパパへ! 休日に子供と風を感じてみませんか!?
2018/08/02
風をつかめば時速50kmも!
大地のパワーが親子を1つに
茨木神栖市の波崎海岸。海を見つめる親子の背中には強い風が吹き付けていた。まさにこの日はベストコンディション。
第2回ブローカート全日本大会のライトウェイト級チャンピオン青野竜也さんは、ジープのトランクからおもむろに大きなバッグを取り出した。骨組みや車輪などを取り出し、工具も使わずにものの5分ほどで組み立てたランドヨットのようなものが、青野さんが愛用するブローカート。
「今日は最高の風なんで、気持ちよく走れますね」と、隣に次男の我威くん(3歳)を乗せ、颯爽と浜の向こうに消えていった。
砂浜を走る爽快なスピード感
聴こえるのは海風の音だけ
ブローカートとはニュージーランドで誕生したスポーツ。全高約4mのセールに風を受けて、3個のタイヤで砂浜を爽快に駆け抜ける。動力は100%風という、エコロジカルなスポーツとして注目を集めている。操縦は片手でハンドルを操作し、もう片方の手でシートロープを引っ張ってセールの角度を調節するだけ。
「実は”簡単”っていうのが最大の魅力なんです。僕みたいに小さい子供を横に乗せてもいいし、もう少し大きくなれば操縦させてあげてもいい。今、環境問題が騒がれていますけど、このスポーツは風の力しか利用しませんから実にエコロジカル。逆に風がなければ乗ることさえもできない。自然に逆らわないんですよ」。
そんな、ある意味不便なところも、このスポーツの魅力。「ブローカートを通して子供達に、自然の大切さ、波崎の自然の美しさを分かってもらえたらうれしいですね」と語る青野さん。
すべてを自然にゆだねるこのブローカートを通して、子供達に教えられることもたくさんあるという。「楽しみながら自然と人間の関係性を教えてあげられる。これはとてもいい教育になると思っています」。
風が集まると言われるここ波崎海岸付近には、数多くの風車も回り、地元の貴重なエネルギー源となっている。良質な風が吹く波崎の美しい海岸は、日本におけるブローカートの聖地になりつつあるようだ。
なんでも自ら率先して働く
キウイ・ハズバンド
日本にブローカートを紹介したニュージーランド人のジミー・バンノートさんも波崎の住民。ニュージーランドでは夏場のほとんどはバーベキュー。ここ波崎海岸近くのジミーさん宅でも、週末は数家族が集まってバーベキューパーティが開かれ、青野さん一家も度々参加する。
炭をおこし肉を焼くのは完全に男の仕事。女性にやらせたらニュージーランドではDAD失格だ。「ブローカートを始めてからいろんな家族がつながりました。ブローカートもそうだし、こうして子供達も一緒にバーベキューを楽しんだりして時間を共有できるっていうのも、何よりの教育だなと思います。ニュージーランドの父親像に学ぶことって多いですね(笑)」。
いくつもの家族が1つになって、地域の宝物である子供を育てる。ブローカートというスポーツを通じて、ここ波崎海岸では、そんな子育ての環境さえも育まれているようだ。
PHOTO/HIROSHI GUNKI
TEXT/MUNEKATASUMITO
FQ JAPAN VOL.3より転載