「傾聴の姿勢で家族とチームを支える」横浜DeNAベイスターズ・戸柱捕手の子育て論
2025/01/10
2024年、横浜DeNAベイスターズを26年ぶりの日本一に導いた立役者、戸柱恭孝捕手。プライベートでは、3児のパパとして育児にも全力投球する戸柱選手が、第17回ペアレンティングアワード スポーツ部門を受賞！父親としての家族への想いを伺った。
限られた時間を最大限に活かす、
家族とのコミュニケーション
戸柱選手が子育てにおいて最も大切にしていることは「傾聴」だという。「子どもたちがよくしゃべるので、必ず耳を傾けることを心掛けています」と穏やかな口調で語る。グラウンドでは強気な投手陣の意見にじっくり耳を傾け、チームを勝利に導く司令塔。家庭では子どもたちの話に真剣に耳を傾ける優しいパパ。その姿勢は、まさに「日本一のパパ捕手」と呼ぶにふさわしい。
多忙なプロ野球選手と子育ての両立は容易ではない。戸柱選手も「一緒にいる時間は短い」と漏らす。ナイター試合の日は３時間睡眠の日もあるそうで、「プロは体が資本。コンディションを整えつつ、子どもと接する時間をどう確保するかが課題です」と語る。それでも、朝の保育園の送り迎えや夜の寝かしつけは積極的に行ったり、月曜日のオフは家族サービスに充てたりと、限られた時間の中で最大限家族との時間を大切にしているという。ビジター遠征の際も、移動時間を調整して少しでも長く家族と過ごせるよう工夫しているそうだ。
育児の苦労について尋ねると、「2歳と5歳は大変、と聞いていましたが、まさにその通りでした（笑）。授賞式の最中、他の方が同じようなことを話していて、共感しすぎて大笑いしそうになるのを堪えました」と、子育て中ならではの共感エピソードを交えて笑顔で話す。「お菓子の量がちょっと違うだけで泣き出したりするんですよ……」と困り顔を見せながらも、どこか嬉しそう。「どうしても父親としては甘やかしてしまいますね」と、優しいパパの顔が覗く。お菓子の量の調整や食事管理は主に妻が担当しているが、父親としてはつい甘やかしてしまうとのこと。「僕と妻で叱り方が違うのも、子どもにとっては良いのかもしれませんね。両方がいっぺんに叱ることはありません」と、夫婦でバランスを取りながら子育てをしている様子が伺える。
成長を見守る喜び、妻への感謝を胸に。
家族という最強の応援団が原動力！
子どもたちへのしつけで意識しているのは「自分のことは自分でやる」習慣を身につけること。5歳の娘が片付けをしない時は、「パパも一緒にやるから、ゲームみたいにして遊び感覚でやろう」と工夫しているという。子どもたちの成長を感じて嬉しかったエピソードも語ってくれた。「いちばん下の子も僕が野球選手だと認識していて、よく応援してくれます。バットを持って真似するんです。公園で一緒に野球をして、たとえ空振りしても楽しそうに笑ってくれるだけで嬉しいですね」と目を細める。子どもたちの成長を間近で見守れることが、戸柱選手にとって大きな喜びとなっているようだ。
戸柱選手にとって、家族の存在は大きな支え。「いい時は短く、うまくいかない時もあるのが野球。試合後、車で考え事をしながら帰っていると、迎えに来てくれた家族の姿が目に入ったんです。子どもと妻を見て、『結果で一喜一憂していてはいけない』と気付かされました」。この出来事をきっかけに、家族への感謝の気持ちをさらに強く持つようになったという。
「『ありがとう』と『ごめんなさい』をきちんと伝えること、そして妻にはいつも感謝の気持ちを言葉で伝えることを心掛けています。喧嘩もほとんどしません。子どもたちには、仲の良い夫婦の姿を見せることも大切だと思っています」。
戸柱選手は、家事にも協力的だ。「掃除が好きで、皿洗いなども率先して普段からやっています。妊娠中は特に妻を気遣い、家事の負担を軽減しようと努めましたね。『安心して任せられる』と言われた時は本当に嬉しかった」と照れくさそうに笑う。
グラウンドでは頼れるベテラン捕手、家庭では優しいパパ。まさに「公私ともに充実」という言葉がぴったりの戸柱選手。家族への深い愛情と傾聴の姿勢が、彼を「日本一のパパ捕手」へと導いたのだろう。
Profile
戸柱恭孝
鹿児島県肝属郡内之浦町出身。2015年 ドラフト4位で横浜DeNAベイスターズに入団。パンチ力のある打撃が魅力のキャッチャーとして、2024年シーズンはチームの26年ぶり日本一に大きく貢献。勝負強いバッティングで扇の要として活躍した。私生活では3児のパパとして育児にも奮闘中。保育園の送り迎えや寝かしつけも積極的に行うなど、家族との時間を大切にしている。
写真・文／竹治 昭宏
