時事・コラム

専業主夫が多いイギリスの理想的な子育てスタイル!

専業主夫の割合が高いイギリスでは多様な子育てスタイルが増えている。“会社勤め”という働き方の常識にとらわれず、自分たちなりの育児ライフを楽しむファミリーを紹介する。

千差万別の夫婦の形
「こうあるべき」を捨てる

家事や育児は、女性がすべき仕事でも男性がすべき仕事でもない。「誰がしてもいい」仕事だ。例えばイギリスの家族の子育て事情にはそれが表れる。専業主夫の数は年々増えており、常識にとらわれず柔軟な生き方を選択する人は多い。

チャンドラー夫妻の働き方は、そんな現代のイギリスを体現する。イラストレーターの夫リッチーさんとイベントプロデューサーの妻ティバーさん。共にフリーランスで働く2人は、その利点を育児に存分に反映させている。

息子のエミール君が生まれた時は、2人ともまだ会社勤めで、お互いに育児休業を取るなどしていた。ただ子育てはずっと続くが、育児休暇は期間が決まっている。育休後の仕事と育児の両立に、疲れてしまう夫婦は多い。

チャンドラー夫妻の場合、仕事上それぞれが結果的に独立することになったため、フリーランスのメリットを、仕事だけでなく育児にも適応できた。夫婦の仕事場も家の中にあり、仕事と家庭の距離が近い。そしてお互い自分の長所で相手の短所をカバーすることで、無理せず長く続けられる独自の役割分担を、家庭内で構築、日々実践しているのだ。

互いに助け合うことで
1日の時間を柔軟に使う

フリーランスのメリットは、まずそのスケジュール。会社勤めのように9時から17時までの時間を、固定的に仕事へ割く必要がないため、時間に融通がきく。と言ってもイベントプロデューサーのティバーさんは、クライアントへの対応上、通常の会社員と同じ時間帯で働かねばならない。そこをカバーするのがリッチーさんだ。しかし週末や昼夜関係ないリッチーさんは、休日返上で作品を仕上げねばならないこともある。その際は週末が休みのティバーさんが、リッチーさんを支えてくれる。

例えば朝、エミール君を学校へ連れていくのはリッチーさんの仕事。家に戻ってからは洗濯物などの家事を担当する。一方で午前、ティバーさんも仕事が立て込む時間帯は、自身の仕事に集中する。夕方、仕事が落ち着く時間帯になれば、ティバーさんはエミール君を迎えに行き、今度はリッチーさんが仕事部屋で作業を進める。

良いことばかりのように思えるフリーランスだが、当然デメリットもある。会社員のような安定はないし、職場も自分1人。常に孤独と戦わねばならない。努めて外出しなければ人と会う頻度も極端に減り、仕事だけでなく育児の悩みを同じ境遇の同僚とシェアする機会も少ない。

ただ就業形態がどうであれ、「夫婦とはイコールの関係」と語るリッチーさんにとって、家事や育児は家族全体で補完すべき仕事という認識に変わりはない。フリーランス同士、仕事にプライベートに補い尊重しつつ、すべてをチームでこなしていける最高のバランスが、チャンドラー家には築かれているのだ。

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リッチーさんのアトリエ。
休みの日にはエミール君とのお絵かき教室に早変わり。
オフィスが家の中にあることで、
家庭内の突発的な出来事にも対応できるのだ。

 

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洗濯物はリッチーさんの日課。

 

無料の相談窓口で
家族のWLBをアドバイス

ワーキングファミリーズは、ワークシェアリングのガイドライン作成や、母親の職場復帰について考えるための集まりを母体として発展してきた。時代を経るにつれ、母親に限らずWLB全体を促進する団体として、いくつかの団体と合併し現在に至る。

開設される無料の相談窓口には、「一定期間を越える勤務日数の被雇用者には、子供を持つ親でなくとも勤務時間を柔軟に変えられる権利があるが、今の会社では認められない。どのように主張すればいいのか?」「イングランドにおいて、3〜4歳の子供には年間570時間の無料教育・保育が与えられる。また2歳児でも場合によってそれを受けられるが、その条件は何か?」といったような、仕事と育児を両立する上での様々な制度上の悩みが寄せられる。

「ワーキングファミリーズ」とは?

イギリスでWLB(ワークライフバランス)を推進する慈善団体。子供を持つ労働者、雇用する組織、政府という3者に対し、よりよい社会を目指すよう働きかけを行う。複雑に思われがちな、労働者が持つ法律上の権利についても相談に乗ってくれる。
HP:working families

「ワーキングファミリーズ」の
3つの働き方サポート

●政府へ
柔軟な働き方、父母の権利、育児休暇の促進など、親や子育てに関する政策をどのように展開していくか、政府と協働する。WLBの現状や今後の達成目標、政策の成果・影響をまとめたレポートなども発行する。

●雇用主へ
いかに社員の家族に優しく柔軟な職場を作れるか、雇用者へ助言を行う。企業や公的機関をメンバーとするネットワークが組織されており、快適な職場環境への目標設定や、それらを実現した企業・機関に対して表彰を行う。

●親へ
仕事と子育て、今後のキャリアといった問題を、労働者が法律上保証されている権利と照らし合わせて無料でアドバイスする。子供税額控除、育児休暇、子供の障害、養子縁組など相談窓口で扱う項目は多岐に渡る。

Text »YUKINOBU KATO

※FQ JAPAN VOL.41(2016-17年冬号)より転載

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